更新日:2010.12.10
文/編集部 写真/編集部
セカンドカーなんて身分じゃないが、理想のアメ車ライフを考えたときに、どうしても複数所有という夢を抱いてしまう。そんなとき、必ずといっていいほど頭に浮かぶ1台、それがPTクルーザーである。身の丈感覚でアメリカン・カルチャーを味わえる希有な存在であり、クルマ自体も優れた小型車として非常に評価が高いのだ。
今年3月末にファイナルエディションが限定発売されて、ついに生産終了となったPTクルーザー。全世界に100万人を越えるオーナーが存在し、日本でも累計1万台を突破するクリーンヒットになった、現代の名車である(勝手に認定している)。そのポイントは見ての通り、ユニークなデザインにある。レトロはレトロでもニュービートルやニューミニとは違い、なにか特定の原型があるわけではなく「あの時代って、こうだったよね」的な記憶を直撃したところが凄い。よほど歴史的なデザインの本質を知り抜いていなければできない仕事だ。それも全長わずか4.3mで横置き4気筒のFFと、アメリカ以外でも広く通用しそうなサイズに抑えたところが鋭い。そしてこのPTクルーザーGTは、読んで字のごとくスポーティ版で、ノーマルの2.4リッター(143ps)にターボで喝を入れた223psが肝。それに応じて足回りも少し固め、ノーマル(15〜16インチ)より大きい205/50R17タイヤで武装する。インテリアも専用で、特に目立つのはバックレストの両サイドを逞しく盛り上げ、サポートを向上させたスポーツシートだ。
そんなスペックより、乗れば正体がすぐわかる。まず音が違う。エンジンをかけた瞬間、ボボッと野太い排気音が周囲を蹴散らす。さりとて喧しくもない、ちょうどいい元気の表現でもある。もちろん走りだしても違いは明白で、グ〜ッと強引に前に持って行く感覚が嬉しい。一気に床まで踏んで発進すると、トラクションコントロールが介入するまで2秒ほど、キュキュキュッと前輪を空転させる芸もある(このエンジンはダッジSRT-4にも搭載された)。こう書くと、いかにも男のクルマ的なイメージに思えるかもしれないが、総合的な身のこなしは安定しまくりで、誰でもイージーに操れて失敗もない。つまりシャシーが余裕たっぷりにパワーを消化できている。
基本的に着座位置が高く、しかも立った姿勢なので、さすがにスポーツセダンほど本気で攻める気にはなりにくいが、外観から想像するよりはるかに俊敏なフットワークを誇る。かなり乱暴にコーナーに放り込んでも、切った瞬間からしっかり前輪のグリップ感が手に伝わってくるあたり、アメリカよりヨーロッパの水準に非常に近い。これほどトルクがありながら、コーナリング中にアクセルを踏んだり放したりしても(それも乱暴に)、よろよろ軌跡がふらつくこともない。基本的にかなり安全な性格付けの仕上がりと言える。
また、このGTに限らず、PTクルーザーの実用性はきわめて高い。後席は軽くダブルフォールドするから、大きなハッチバックの中は立派にワゴンどころかミニバン的に使える荷室になる。さらにこの後席は取り外すこともできる(その状態で持ち運ぶのに便利なように小さなキャスターまで付いている)。今どき珍しくないレトロ調のクルマの中では、最も現実の役に立つ存在と言えるだろう。初期モデルから生産を重ねるにつれて細かい部分にも修正が加えられ、全般的に作りが向上したのも事実。こういうデザインだけに、細かい部分がきっちり作られると、いかにも立派に見えるものだ。このぶんでは、メカニズムに関してもかなり改善が進んだと考えられる。過去にはブレーキに難ありの兆候も見られたが、ずっと重量とパワーを増したGTで長い下り坂をこなした程度では、ペダルの踏み応えにも実際の効きにもまったく不安の兆候は見えなかった。
クライスラーPTクルーザーGTは、気分としては愉快な遊びグルマでありながら、同時に実用車としても十分なポテンシャルを発揮できる、希有な存在だ。特に日本では国土事情に合うサイズだけに、身の丈感覚でアメリカン・カルチャーを満喫できるという旨味も見逃せない。大きなアメ車を愛するファンにとっても、日常的な雑用をこなすための小型車は便利に違いないから、セカンドカーとして活用するには一番の候補になるはずだ。と言うより、ちょっと出かけるのに、こちらのキーに手を伸ばしている自分に気付いて苦笑したりしているのかもしれない。
過去に何度もPTクルーザーには乗っているが、その度に何度も「良い良い」と書きまくり、終いには周りの友人知人たちに勧めまくり、とりあえず1台買わせることに成功した経緯を持つ。すでに絶版の仲間入りを果たし、それこそ絶版名車として今後も人気を博すに違いない。すでに手に入れた方は、それこそ後世に残すためにも大事してもらいたいし、これから購入を考える方は、いろいろなバリエーションがあっただけに、いっぱい悩んで最高の1台を手に入れて欲しいと思う。
アメ車如何にかかわらず、クルマとしてホントに楽しい。だから積極的にオススメしたい。室内空間がやたら広く、GTはターボパワーで活発になり、でもシャシーに余裕があるので不安定なところがまったくない。かなり優秀な小型ターボ車である。
余談だが、実はカブリオレも絶品である。基本的な性能はノーマルボディベースなので走り云々は語れないが、何よりスタイリングが素晴らしい。幌をかぶせたままのシルエットが何より美しい。そして幌を降ろすとピラーが残り、そのときのスタイリングがまたかわいらしい。実用小型車と割り切るなら屋根ありだが、逆に趣味車としてならカブリオレが抜群にオススメである。
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