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特集 SPECIAL ARTICLES シボレーアストロ&GMCサファリ 考察 その1アストロ&サファリは何故姿を消したのか?

シボレーアストロ&GMCサファリ 考察 その1

大量に輸入されたアストロ&サファリは何処に行ったのか?

「シボレーアストロ&GMCサファリ大全」という特集は、アストロ&サファリに関する様々な記事を掲載していき、最終的には「辞典」の様なコーナーにしたいと思って創設した。最初かきちんと体系立ててやろうとすると、大変だし途中で挫折しそうなので、とりあえず思いつくままに色々な角度からアストロ&サファリという名車を検証していきたいと考えている。ということで、第一回目は「アストロ&サファリが減少した理由」を考察してみたいと思う。

更新日:2017.10.27文/田中 享(Tanaka Susumu) 写真/田中 享(Tanaka Susumu)

取材協力

CHEVY STREAM(シェビーストリーム)

アストロ&サファリほど爆発的にヒットしたアメ車はない?

 1990年代後半から2000年代初頭にかけてのシボレーアストロ&GMCサファリのブームは凄かった。

 日本でもそれなりに売れたアメ車は何種類もあるが、アストロ&サファリの売れ方はそれまでのアメ車とは桁違いという言葉がぴったり。20世紀後半から21世紀初頭にかけて、シボレーアストロ&GMCサファリの全盛期には、東京、名古屋、大阪などの大都市を走っていてアストロかサファリを見ない日はなかったほどだった。後にも先にも、日本国内でアストロ&サファリほど爆発的なヒットを記録したアメ車は存在しないと言っても過言ではないだろう。

 アストロ&サファリの全盛期には、筆者は毎月何台ものアストロ&サファリを取材していた。また、自分自身も1994年型GMCサファリ エクスプローラー ハイルーフに乗っていた時期もあるので、筆者にとってもアストロ&サファリというのは非常に思い出深いアメ車のひとつだ。
 しかし、そんなアストロ&サファリも昨今はめっきり姿を見かけなくなってしまった。年に1、2度、シェビーストリームなどのオーナーズクラブのイベントに行けば、一箇所で40~50台のアストロ&サファリを見る事ができるが、街中で複数のアストロ&サファリを目にする日は年にそう何日もないのが現状だ。
現在でもオーナーズクラブのイベントに行けば40〜50台のアストロ&サファリを見ることが出来るが、最盛期には100台以上のオーナー車両が集まることもあった。
アストロ&サファリが爆発的にヒットしたのは、ファミリーカーとして使えた事が大きいと思う。
並行輸入車全盛の頃によくみかけた仕様。ホワイトのローライダー。手前はゼノンエアロにスパイクグリル。奥はカリフォルニアカスタムのミレニアムバンパーにキャッツアイグリル。いずれも一斉を風靡したスタイルだ。

アストロ&サファリは絶版車であり、初期モデルは既に旧車

 現役で日本で稼働しているアストロ&サファリが減少した原因はいくつか考えられる。

 ひとつは年式というか、単純にモデルとしての古さの問題だ。

 アストロは2005年まで生産されていたが、日本に輸入された車両の大半は90年代の車両であり、特に多かったのが95~97年くらいの車両である。つまり、当時輸入された車両の大半は既に20年落ち。1年に1万km程度を走るドライバーが乗り続けていれば、それらの車両の走行距離は20万kmを超える計算となる。愛車の寿命の目安を「10年または10万km」みたいに考えるユーザーが多い日本では、アストロ&サファリはとっくに過去のクルマなのである。

 アメ車の中でも実用性が高く、使い勝手の良いアストロ&サファリは、趣味というだけでなく実用性も考慮して選ばれる事も多いクルマであったが、そういった実用性も重視するユーザーであれば、とっくに他のクルマに乗り換えていて不思議はないだろう。

状態の悪い中古並行輸入車が数多く販売された結果

 次に考えられるのが並行輸入車の問題だ。

 アストロ&サファリはロールーフ、ハイルーフともに正規輸入車も販売されていたが、圧倒的に多かったのは並行輸入車であり、それも中古並行輸入車の比率が多かった。そして、中古並行輸入されたアストロ&サファリには、酷い車両も数多く含まれていた。酷い車両とは何か? メーターを不正に巻き戻し、ろくな整備もしないままに売られたクルマのことである。

 アストロ&サファリは商用車として使われる事も多いミニバンなので、クルマとしての基本構造はシンプルだし頑丈に出来ている。オイルや冷却水などの消耗品を定期的に交換しさえすれば滅多な事では壊れない。普通に使用するのであれば10万kmや20万kmは大きなトラブルもなく平気で走る。しかし、それはあくまでも「きちんとメンテナンスしていれば」の話だ。

 90年代後半から2000年代前半にかけては、レンタカーなどで使われて10万マイルも20万マイルも酷使された車両をアメリカ全土から仕入れ、「内装クリーニングしてオールペンしてローダウンして16インチのアルミを履かせて最後の仕上げにメーターを10万km以上巻き戻してハイ完成です」みたいな車両が、ろくな整備もされないままに「アメ車はこんなもんですよ」と言って数多く販売されたのである。しかも、アメリカ(主に西海岸)よりも高温多湿で渋滞が多く、アメ車にとっては過酷とも言える日本で。
 そういった車両がトラブルに見舞われるのは当然。というか、壊れないと考える方がおかしい。

 不幸にも酷い中古並行輸入車を手にしたオーナーの中には、故障やトラブルに見舞われる度に頑張って修理しながら乗り続けた人もいるだろうが、ほとんどのオーナーは途中で手に負えなくなって、あるいは嫌気がさして手放すことになる。
 そんな車両もブーム全盛の頃にはまた中古車店に並んで次の被害者の手に渡ってを繰り返したのだろうが、ブームが去った後には屑鉄と化した。で、そんな車両が次々に消えていった結果、全体的な台数も大きく減った。というのが考えられる二つ目の理由。
アストロ&サファリには、正規輸入車もあれば並行輸入車もあり、旧型もあれば新型もあり、ロールーフ(標準ルーフ)もあればハイルーフもありと、様々なスタイルがあったのも人気の理由だったと思う。
フルエアロ、フロントマスク交換、リアロールパン、ローダウン、大径ホイール、エアサス、スムージング、オールペン、内装張替え、オーディオ、セキュリティ、オールステンレスマフラーなど、車全体に一通り手を入れた仕様がローライダーのひとつの完成形だった。
内装にウッドパネルやボード、ソファタイプのレザーシート、イルミネーション、テレビなどを装備したバンなど、当時の日本には存在しなかった。一応、日本にもバニングと呼ばれるカスタムカーは存在したが、あれはちょっと特殊というか、世界が違ったので(笑)。
アストロ&サファリの全盛期にはノーマル車よりもカスタム車の方が多かったのだが、中にはサードシート部分&ラゲッジを全てスピーカーにしたものや、セカンドシート&サードシートを全て外してフローリングにした車両なども存在した。

アストロが日本で認知され始めた頃の国産ミニバンはダサかった

 そして最後に考えられるのが、日本におけるミニバンのブームだ。

 アストロ&サファリが日本で注目され始めた頃の日本には、魅力的な国産のミニバンは存在しなかった。というか、「ミニバン」という名称すらあまり知られていなかった。
 当時の日本で「バン」と言えば、ハイエースとかキャラバンとかボンゴとか、所謂商用バンが主流だった。「天才タマゴ」のキャッチフレーズでトヨタのエスティマがデビューしたのは1990年であり、それ以外にも90年代には日産のセレナとかラルゴとか、真四角ではなくてノーズのあるミニバンもあるにはあった。しかし、一般的な日本人の間では、まだまだミニバンというカテゴリーの車はファミリーカーとしては認知されてはいなかった。
 つまり、当時の日本には、アストロやサファリのように「格好良い(=商用車っぽくない)」国産のミニバンというのは存在しなかったのである。

 しかし、1997年にニッサンからエルグランドがデビュー。2002年にトヨタからアルファードがデビューした頃から世情というか、日本人のミニバンに対するイメージが大きく変わっていった。便利で使い勝手が良く、さらにはそれなりに威張りも効くミニバンが続々と登場し人気を得るようになったからだ。
 そうなってくると、悪徳店が販売した中古並行輸入車のお陰でネガティブなイメージもあったアストロ&サファリよりも「安くて壊れない」日本のミニバンの方を選ぶ人が増えるのは当然だし、中には「国産車でもいいか?」と考えてアストロ&サファリを降りたオーナーがいても不思議ではないだろう。

 余談だが、筆者的には日本におけるミニバンのブームには間違いなくアストロ&サファリの影響があったと思っている。

 他にもいくつか細かい理由は考えられるが、基本的には上記の3つが日本におけるアストロ&サファリの台数を大きく減らした主要原因ではないか?と考えている。

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