キャデラックといえば、いまだに1992年から99年までの「エルドラド」が個人的に一番の魅力的車種であり、中古車サイトを時折調べまくって興奮している今日このごろであるのだが、それ以外にも同年代の「フリートウッドブロアム」や「セビル」が次点候補としてあがっており、そういうわけだからして、筆者的なキャデラックはいまだこうした90年代のフルサイズモデルたちが主役だったりするのである。
一方で、キャデラックエスカレードを認める自分もいたりする。ただし40代独身の筆者にはそんな巨大なSUVは必要ないので愛車候補としては決してあがらないのだが、でもやっぱり、なんとなくだが90年代路線に通じる、ちょっと古めのアメリカを感じさせる趣向がエスカレードにはあり、そこが好きだったりするのである。
ということで、現代の最新キャデラックに関して言えば、こうした旧路線から外れ、走りの部分における超高性能化の実現によってドイツ勢とタメをはれるだけの性能が手に入ったわけだが、逆に上記のような路線を完全に捨てきったことにより、ブランド認知として新たなキャデラックファンを再構築しなければならなくなった。
ATSにCTS、そしてXTS…etc。モノは確実にいい。ベンツあたりと比べても走りや性能は互角以上で、かつ安価である。そこに惹かれる新規ユーザーは多数いるだろう。ただし、旧キャデラック好きをも取り込まないと日本での拡充が見込めないのではないか。
か、どうかは定かではないが、やはりキャデラックとして後輪駆動のフルサイズボディを出さなければ、守旧派ユーザーを納得させることはできないのではないか。ということで、遂にCT6の登場である。新たにデビューしたキャデラックのフラッグシップとなる後輪駆動ベースのフルサイズセダンである。
キャデラックCT6は、新開発されたFRベースのオメガプラットフォームを採用した初のモデルであり、全長5190ミリ×全幅1885ミリと、満を持して登場するフルサイズボディのAWD車である。ちなみに現CTSと比べると、全長220ミリ、全幅45ミリ拡大している。ホイールベースは3メートルを越えており、縦置きエンジンレイアウトやロングノーズのボディは、まさしく最上級モデルに相応しい迫力である。
<ボディサイズ:全長×全幅×全高ミリ>
CT6:5190×1885×1495ミリ ホイールベース:3110ミリ
CTS:4970×1840×1465ミリ ホイールベース:2910ミリ
比較的大人しい印象を与えるかもしれないCT6のデザインだが、現行ATSやCTSといったキャデラックデザイン言語を上手く採用しつつも、直線基調なラインと抑揚を見事融合させ、大人びたキャデラック像を生み出している。それもこれもやはり、幅広&ロングボディというサイズ感が醸し出す印象だろうか。
実際に見るCT6は、前後タテヨコ比のバランスが非常に良く、伸びやかで美しいフォルムを実現している。優美でありながらも他を圧倒する存在感。最新のCT6によって、近年のキャデラック「アート&サイエンス」の完成型ともいえるデザインが登場したわけである。また、リアからの眺めもグラマラスであり、カタログ写真じゃわからない大胆さと洗練されたエレガントなスタイルが特徴である。
しかもこのデザイン、驚きはスタイルだけでなく、その車重である。CT6のボディ骨格には、高圧鋳造アルミニウムや高強度鋼など11種類の素材を用いた新開発の「フュージョンフレーム」が採用され、全長5.2mのフルサイズボディでありながらも、車両重量を1920kgに抑えているのである。
車重だけでいえば、BMW5シリーズや6シリーズよりも軽く、アウディA6よりも軽くて強いわけである。
新たに搭載されるエンジンは、3.6リッターV6。気筒休止システムのアクティブフューエルマネジメント、アイドリングストップ技術のオートスタート/ストップ、直噴システムや可変バルブタイミングなどの先進技術が加えられ、340ps、最大トルク39.4kg-mを発生させる。そして、素早くスムーズなギアチェンジを可能にするパドルシフト付の8速オートマチックトランスミッションが組み合わされている。
実際に走らせると、さらに驚きが待っている。標準で20インチタイヤを装備するその足回りは、かなりガッチリした印象であり、アクセルペダルの動きに即応して車体がグッと前に出る。車体は軽いが、ボディは岩のように硬くシッカリした印象であり、シャシー全体の重厚さとAWDによる安定感の高さに、ラグジュアリーサルーンというよりもスポーツセダンとしての走りに質に驚かされる。
ハンドリングはかなり正確であり、フルサイズボディと聞いて想像するような不要かつあいまいな動きは微塵もない。まるでCTS-Vの印象すら感じさせる硬質な走りである。
TEST RIDE
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