ここ数ヶ月の間に触れたバイパーの量に関しては、おそらく日本一じゃないかと自負している今日この頃である。SRT10に始まり、09年型のACR、そして初期のRT/10に今回の最終型ACR。
ただ情けないことに、これだけのバイパーに乗ったとしても、あくまで触れただけに等しく、そのパフォーマンスの限りを体感したわけではないことが実に悲しいのだが、それでも各モデルとの違いは明白であり、それを文章(稚拙な…)に落とし込むことは可能である。
前回試乗したACRは、09年型であり、ボディのカラーリングが違うことからもわかるように、今回とは別物である。
基本性能自体はほとんど変わらないのだが、各部に若干のモディファイが加えられており、特に大きな違いがミッションの変更だろう。2010年モデルにおいてはショートストローク化されたシフトが採用され、リアウイングの設計見直しがなされたことで、最終モデルとして完成度を高めているのである。
また車体にナンバーリングが施されており、合計33台のACRが出荷された証として「1:33」のステッカーが貼られている。ちなみにこの車輌は33台中の17号車。
前回のACRとはボディカラーが異なり、この最終モデルはブラックベース。そしてセンターに赤いストライプが描かれ、それに伴いリアウイングやホイールが赤くペイントされるなど、抜群のセンスでコーディネートされている(購入時にある程度のコーディネートがセレクト可能であり、これらの配色はすべて純正)。
ストック同様の8.4リッターV10 OHVエンジンを搭載するACR。スペックもストックモデルと同じく600hp、最大トルク560lb-ftを発生させる。
すなわちACRとは、エンジンポテンシャル的なアップデートがほとんどない変わりに、エクステリアでのカーボン製フロントデュフューザー、カナード、GTウイング等でACRと分かるルックスを形成しており、さらに抜群のセンスのボディカラー(ツートンカラー)を採用することでノーマルモデルとの差別化を図っているのである。
2010年モデルにおいては、前述した通りミッションがショートストローク化されており、リアウイングが一部、空力対応による変更がもたらされているが、それ以外のベースは09年型までと同じである。
一方で、インテリアにもボディ同様にナンバーリングプレートが配置され、またメーター周りがホワイト&レッドで、さらに各パーツのステッチにも赤が配色されるなど、意外にもファッショナブルなコーディネートが加えられているのである(最終モデルだからこそ、だろうか)。
相変わらずだが、乗る前にはある種の覚悟が必要である。決して飛ばすつもりはないので自ら事故を起こすなんてことはほぼないつもりだが、バイパーに乗る時だけは、なぜだから分からないが覚悟する。そのくらいの迫力が常に備わっている。
今回のブラックACRのオーラも凄く、前回の赤いACRよりも毒気が強い気がするし、全体の雰囲気も突出している。さらにACRに装備されているミシュランのSタイヤにKWのサスペンションの組み合わせが一段と緊張感を高めてくれるし。
ただ、そのオーラとエンジン始動時の爆音の割には、ACRはかなり乗りやすいマシンである。ミッションは格段に操作しやすくなり、初期のバイパーにあったクセみたいなものがなく、クラッチやブレーキなどのペダル操作もいたって普通だし。そういう意味では、旧型にあったバイパーを乗りこなすための慣れ、を必要とせずに、普通免許を所有している者なら、誰でも即座に運転可能である(はず)。
とはいえ、ACRはニュルブルクリンク市販車最速の称号を取得した市販車であるからノーマルモデルを遥かに凌駕するその実力はいかなるものか? は、多少の知識があればお分かりいただけるだろう。
だからこそ、ドライバーがACRのパフォーマンス発揮に集中できるためにも、最高に使いやすいコックピットやABCベダルが採用されているのだ。
ちなみに10年モデルで採用されているショートストローク化されたシフトの操作感はこれまでの中でも随一であり、ストロークが短いだけでなく、センターへ戻ろうとする反力が適切で、2速から3速へ、3速から4速へのシフトチェンジが最高に気持ちいい。というか、これだけのMTができるなら、なぜもっとMT車を増やさないのだろう? と不思議に思うくらい、スポーティかつ気持ちいいMTである。
ACRはこの10年型を最後に生産中止となったわけだが、バイパーに関していえば明らかに年々良くなっており、ポルシェじゃないが、最新こそ、最良のバイパーと言っても過言ではないだろうと思う(だからこそ、新型SRTバイパーにも興味がわく)。
ACRの総論に関しては、正直街中程度の走行では、前回試乗した09年型との違いは明確には分からず、個人的に2回目の試乗ということで意外にも気持ちよく走らせることができたという感想がほとんどを占める。これならコンビニにも普通に行けるし、足でも使えるほど操作性はいい、なんて。そのくらいの気持ちになれるほど、性能の割に乗りやすい!
こちらの購入者はイタリア製「F」の所有者ということであり、ACRがセカンドカーになるのであろうか?
個人的な感想としては、十分に足になり得るし、その乗りやすさと相反するパフォーマンスの高さに驚愕するはずである。
唯一心配なのはV10エンジンが奏でるサウンドが、イタリア製V8高周波サウンドに叶うか否か、だけであり(迫力では圧倒できる!)、それ以外においては、その出で立ちを含め、「F」以上に刺激的なマシンと思ってくれるに違いない。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES