リンカーンMKXとは、ブランド初のミドルサイズクロスオーバーとして2006年にリリースされた。取材したモデルは2011年に登場したその2代目にあたる。
ちなみにクロスオーバーとはCUV、「Crossover Utility Vehicle(クロスオーバーユーティリティビークル)」の略であり、オンロード性能や軽快性を重視したSUV、もしくは背を高くして室内空間とオフロード性能を高めた乗用車風の乗り物という意味である。リンカーンMKXはどちらかというと後者にあたる。
このMKX、デビュー時期が重なる当時のフォードエクスプローラーと同コンポーネンツを使用ていることもあり、ズバリ、完成度がめちゃくちゃ高い。かつてのアメリカンな雰囲気と現代的な走りや装備がうまく折り重なって魅力度の高い存在として非常に有名であった。
で、今回取材したのが2012年型のディーラー車。走行8万キロ弱走行。日本人的思考であれば、8万キロという走行距離数に反応するだろう。
ただし、実車を見て非常に驚いたのだが、びっくりするほどキレイだった。ボディの色艶やメッキパーツ類のツヤ感、さらには全体が醸し出す風情に、およそ古さというかヤレ感というか使い込まれた感がまったくない。
ということで、めちゃくちゃ気になるその状態を早速チェック。
まず、MKXの固有の存在感というかデザインに、いまだ心躍らせられるリンカーンならではのきらびやかな感じがたまらなく素敵である。
昔のアメ車のような豪華絢爛でクルーザーのような乗り心地をイメージしているような方々には、このきらびやかさの中にも美意識を感じさせるモダンなスタイリングに共感するはずである。というか、今どきデザインだけでこれだけ人々を惹き付けるMKX自体が稀有な存在なのかもしれない。
日本で言うところのサイズ感的な比較対象車と言えば当時のキャデラックSRXやトヨタハリアー(レクサス含む)、アウディQ5となるのだろうが、MKXはデザイン面で突出している。
MKXの何にも似ていない独特のデザインやムードは特筆ものであり、往年のアメ車の力量を残している最後の存在であると思う。
クロスオーバー車ということで、乗背の高い乗用車的とも言えるが、SUVほどの車高の高さがないから乗降性は良く、運転感覚も4WDと相まって安定したものとなり、大きさ的にも大人5人が乗れるにもかかわらず、街中で扱いやすいという、まさに万能車である。
正直、現在のリンカーンの各々の車両にはあまり魅力を感じないだけに、やはりこの、フォードジャパンが存在していた時代までのリンカーンには一目置かざるを得ないのかもしれない。
このMKXに搭載されるエンジンは、Ti‐VCT搭載の3.7リッターV6DOHC。309ps、最大トルク38.7kg−mを発生させるこのエンジンは、6速ATと組み合わされることによって想像以上に良く走る。
このV6、元をたどれば現行マスタングに搭載されるV6だけあって、低速トルクが十分にあり、ピックアップにも優れているおかげで、街中のストップアンドゴーはかなり得意である。一方で、その気になればリミットの6500rpmまで小気味良く回り、しかも快音を発するのが嬉しい。
いや、この車両の場合、快音云々というよりは、低速域から中速にかけての静かな空間作りが非常に素晴らしい。
後述するが、ウッドとメタルのインテリアがこれまた素晴らしく、さらにこの個体の前オーナーさんが余程大切にされていたのか、空間自体が非常にクリーンであり、新車時からほとんど傷んでいないような状態が気分を高めてくれるし、その状態のインテリアを眺めながらの、静寂なドライビングがこれまた予想以上に心地良い。
搭載されるエンジンは、3.7リッターV6DOHC。309ps、最大トルク38.7kg−mを発生させる。あまり速さにこだわらない車両だけに、力は十分すぎるほどある。
優雅さを重視した左右対称のインパネ。インテリアカラーはプレミアムブラック一色で、本木目のパネルとサテンブロンズのセンターコンソールとの組み合わせにより、落ち着いた雰囲気を与えてくれる。
6速ATは、セレクトシフト・トランスミッションを採用する。シフトレバーをMレンジへ入れ、シフト横の+/‐ボタンでシフト操作が可能になる。慣れれば、マスタング譲りのV6を唱わせてスポーティな走りも可能になる。
MKXの骨太さとオブラートに包まれたように路面をいなす乗り心地の良さに驚きを感じる。なおMKXのといえばスプリット・ウイング・グリルだが、それは1941年型コンチネンタルのグリルに採用された「ウォーター・スプリット」デザインに着想を得たもの。
このデザインにこの内装に合う音楽は、クラシックがいいのではないか。そんなことを思わせるほど、静かな高級感あふれるドライブである。
また、足回りも洗練された印象をもたらし、ブレーキ等の機能的な部分においても不安や不満はまったくない。逆に驚いたのが、今どき珍しいほど鷹揚とした乗り心地であり、現代の引き締めがちな足回りを想像していると、いい意味の特徴として驚くほど当たりが柔らかい。すなわち、真のアメ車好きを唸らせる足さばきと言っても過言ではないのである。
とはいえ、SUVほどの車高の高さはないから、目線の高さゆえに不安定になることがないのも嬉しい。さらにAWDだけに、いざという時の安心感にも満足するはずである。走ってみても、距離数に感じられるヤレ感がまったく感じない。
最初にスペックを聞かなければ、この車両が8万キロ走っているとはまったく思わないはず。そのくらいコンディションが図抜けている。
一方、インテリアのクオリティがまた素晴らしい。黒で統一された内装色に、ウォールナットの加飾パネル、サテンブロンズのコンソールの組み合わせが驚くほどモダンであり、四角張った初代のデザインとは隔世の感がある。
もちろんシートのステッチやウッドパネルの角の処理など、仕立ての良さも折り紙つきであり、かつ装備も充実。二分割のサンルーフやパワーテールゲート、インフォティメントシステム「マイ・リンカーン・タッチ」なども装備される。
今や当たり前となったデジタルメーター。この辺はエクスプローラーと同様のメーターとなる。MKXには一昔前のアナログが似合うとも思うが、実物はそれほど違和感を感じさせない。
室内のコンディションもよく、ウッドのカラーリングや質感にもまったく不満は起きない。
フロアマットもこのまま使用できるほどクリーンな状態。
この「マイ・リンカーン・タッチ」とは、エクスプローラーに搭載されるものと同種であり、センターコンソールのタッチスクリーンで、エアコンやオーディオなどの機能をコントロールするというもの。機能ごとに画面を切り替えることで、モニターひとつで複数の装備を使いこなすことができるのである。
またブラインド操作についても考慮されており、ステアリングスイッチや音声認証機能も装備する、世界的に見ても、もっとも意欲的なインターフェイスのひとつと言えるだろう。
全長×全幅×全高=4740×1930×1685ミリのボディがもたらす室内空間は、十分に広くかつクリーンな状態であった。大人5人が乗ってもそれこそ十分な広さと快適性を有している。
ドライバーは、目線やステアリング位置&シフトレバー位置&センターコンソールといった人間工学的な部分においても当時の最先端の配慮が加えられたモデルであるからこそ運転しやすく(言ってしまえばエクスプローラーと同様以上のモノが味わえる)、またドアミラーから死角となりやすい部分にはブラインド・スポット・ミラーが組み込まれており、リバースに入れればリアビューカメラが作動、ソナーによる障害物警報などもあるから、こういった至れり尽くせりの装備に慣れれば、スマートドライビングが可能である。
MKXはCUVということで、ナビゲーターほどの重量感なく軽快に、それでいて街中から高速までを大人5人乗せて移動するには適切な装備を備えており、かつ人々が憧れる理由が分かるほどハイセンスな雰囲気に満たされている。
さらにこの個体は、驚くほどクリーンであり、走行距離数に惑わされずに各部のチェックをするならば、「下手な中古車よりも圧倒的にマシな個体である」と断言していいだろう。
18インチのポリッシュドアルミにFマクファーソンストラット/Rマルチリンクという足回りの組み合わせ。乗れば鷹揚としたアメ車らしい乗り味に感動するに違いない。
シート表皮には全車ブラックのプレミアムレザーが採用される。快適装備も万全なシートだ。
後席の足下の広さは特筆ものであり、大人3人が乗っても十分なスペースを誇る。
くわえて、この車両を販売するガレージダイバンは、マスタング等のアメリカンスポーツカーで有名なプロショップ。購入後のアフターメンテナンスにおいても自社工場にて適切に対応してくれるだろう。
この年代のフォードといえば、電子デバイスによるCPU診断が必要になるが、ダイバンには当然ながらそういった診断機器があり、それを適切に扱うスタッフも在住している。
これほどの距離を走ったとは思えないボディやインテリアのクリーンさ、さらには実際に走ってみてのエンジンやミッションの状態維持を鑑みれば、逆に「これほどマシなMKXが存在するのか」、と逆に問いたくなるどほどの車両だったのである。
この車両を販売するガレージダイバンの鈴木さんいわく「丁寧に乗られていたオーナーさんの車両ですから、安心してお乗りいただけます」という。同時にマスタング等のフォード車を多数扱うダイバンだけに、その後のアフターフォローも任せられるだろう。
183,250円
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