TEST RIDE

[試乗記]

トップモデルに相応しい風格と質感と固有の魅力

2022 ジープグランドチェロキーL リミテッド

ジープブランドのさらなる上昇の起爆剤

フルモデルチェンジを経て初めて見るグランドチェロキー。その変化は圧倒的で満足度もかなり高かった。

更新日:2022.03.23

文/石山英次 写真/小関一尚

取材協力/ジープ西東京 TEL 042-460-6633 [ホームページ]

本来はラグジュアリー満載のSUV

 個人的なグランドチェロキー体験は90年代で、チェロキーとは異なるラグジュアリー感が特徴的なSUVであった。グランドチェロキーは、その後アメ車業界におけるラグジュアリーSUVの祖とまで言われるようになり実に個性的な存在であったのだ。

 だが、2000年代になりSRT−8がデビュー。それ以来、「V8搭載の武闘派」というイメージが強くなったが(逆に個性的で個人的には大絶賛していたが)、実際にはそれらはグランドチェロキーの本来の姿ではなかったのだろう。

 また、それら時代の裏でラングラーには4ドアモデル、またレネゲードやコンパスといったミッドサイズ以下のモデルたちが充実し、ジープブランドの流れが一気にそちらに傾いたというのもあり、チェロキー&グランドチェロキーたちの影がだんだんと薄く感じていたのは筆者だけではないだろう。

 だが、そんなグランドチェロキーがグランドチェロキーLとして日本に上陸。早速取材した。

 フルモデルチェンジされたグランドチェロキーLを見て、思わず「デカっ」と思ったが、それと同時に「カッコイイ」「良いね!」との声も上がっていた。

 そう、今度のグラチェロLはボディサイズでいえばフルサイズ的であり、旧モデルよりも全長で30センチ超大きくなっている。それは主にボディ後半部分のサイズアップであり、3列目シートが遂に搭載されたのである。

▲全長5200ミリのグランドチェロキーL。取材車はリミテッド。洗練された固有のフロントマスクが多くの人々を惹きつける。

▲かつてのワゴニアを連想させるボディデザイン。

▲旧モデルに対し約30センチ全長が長くなることで生み出されるスペースを有効に活用している。

かつてワゴニアからのデザインインスピレーション

 今回日本に導入されたグレードは二種類。「Limited(リミテッド)と「Summit Reserve(サミットリザーブ)」で前者が788万円、後者が999万円となる(ともに税込)。

 この両者の違いは主に装備面であり、まずはリミテッドが7名、サミットリザーブは6名乗車で、リミテッドが2列目ベンチ、サミットリザーブが2列目キャプテンシート。またサミットリザーブには足回りにエアサスが付いたり、インテリアが豪華であったり、そう言った付随装備の充実の違いが主なもの。

 よってパワートレインの違いはないから、そういった装備の違いで211万円差をどう考えるか。

 ちなみに、搭載されるエンジンは3.6リッターV6で286ps、最大トルク344Nmを発揮させ、8速ATと組み合わされる。というかこのエンジン、ちょっと前までラングラーに搭載されていたエンジンと同機。

 余談だが、2022年からラングラーにはこの3.6リッターV6エンジンモデルがなくなり、2リッター直4ターボエンジンのみとなっているから、グランドチェロキーLとの差別化のための処置でもあったのだろう(あくまで個人的見解)。

 さて、グランドチェロキーLだが、めちゃくちゃカッコイイ。ボクシーなデザインは旧ワゴニアからインスピレーションを受けているとのことだが、そういった旧車のイメージとジープ固有のボックス型イメージがうまくデザインされており、特にシャープなマスクがイイ。押しの強さと品格が混ざり合った固有の顔つきがとにかく素敵である。

▲搭載されるエンジンは3.6リッターV6で286ps、最大トルク344Nmを発揮させ、8速ATと組み合わされる。フルサイズボディを過不足なく走らせる。

▲切れ長のヘッドライトにセブンスロットグリル等、かつてのワゴニアにインスピレーションを得つつモダンに仕上げられているフロントマスク。

▲ホイールはリミテッドが18インチ。サミット リザーブが21インチとなる。

ジープのトップモデルに相応しい洗練度

 プラスして室内の驚くべき変化を遂げたインテリアも魅力。上質であり、洗練されており、とにかくお洒落であるから、取材車の「リミテッド」を超える「サミットリザーブ」にも断然興味が湧く。

 とにかく全体的にスタイリッシュであり、メーター類のデザインも洗練され、ジープのトップモデルに相応しい質感であるとともにこれまで感じたことのない上質感が備わっているから、購入者の満足感はかなり高いはず。

 くわえてセンターコンソールには10.1インチの大型タッチディスプレイが配置され、ナビゲーションは最新のアイシン製。

 またApple CarPlay、Android Autoにももちろん対応しているし、その下部にはジープ初のダイヤル式ロータリーシフトが配置され、ATシフトの操作性の向上がもたらされている等変化が多い。ちなみに、この操作、ギアが切り替わったことが指先に伝わるフィードバック機能が備わっているから分かりやすい。

 というか、こういった各部の装備に触れるだけでも新型グラチェロLの進化の凄さと質感が伝わってくる。

▲上質かつ洗練されたインテリア。全体的にオシャレであるから所有感が満たされる。

▲センターコンソールには10.1インチの大型タッチディスプレイが配置されナビゲーションも装備されている。

▲ジープ初となるロータリーシフトの採用によって直感的な操作を可能としている。

▲多機能な10.25インチの液晶メーターを備えるインパネにも好感。

ライバルはメルセデスベンツGLE、ボルボのxc90、アウディQ7

 さて、新型グラチェロLの肝とも言える室内空間であるが、サイズ感に伴う広さとともに考え抜かれた空間設計がなされており、2列目、3列目ともにかなり充実している。2列目は6対4の分割ベンチシートであり、前後スライド、リクライニングが可能であるから絶妙なポジションが取れるし、3列目は想像以上に広いから使える。

 しかも2列目、3列目と下がるごとに乗車位置が高くなるから視界も悪くなく、「大人が座っても案外いける」と本気で思えるほどだった。

 ちなみに余談だが、全長5020ミリのフォードエクスプローラーにも3列目シートが装備されていたが、それよりも全然使える3列目である(グラチェロLの全長は5200ミリ)。

 ということで、近隣を少々試乗してみる。当初、V6エンジンであるということに若干の心残りを感じていたが、走り出してしまえば極めてスムーズであり、V6エンジンであるということに不満を感じることは全くない。

 ステアリングの感覚やブレーキの踏み応え等にも上質感が伝わってくるから、見た目やインテリア同様の満足感が得られるだろう。

 ジープ西東京の加賀美氏曰く「ライバルはメルセデスベンツGLE、ボルボのxc90、アウディQ7です」ということであり、当初聞いた時は「そこまでか」と正直思ったものだが、実際に見て、触れ、乗ってみて「エンジンパワーのみ劣るかもしれないが、それ以外は十分に勝負できるし、逆にグラチェロLの方が個性的であるから勝機ありではないか」と思うまでに心変わりしていたのであった。

 続けて加賀美氏は「7人乗りということでリミテッドの受注が多く、やはりグランドチェロキーのデザインを気に入り購入されている方が多いです」という。

 グランドチェロキーLに関しては、日本上陸前から反響が大きく、特に3列目シート追加が決定的であり、リミテッドの788万円という価格帯はすんなり受け入れられているということだから、今回のグランドチェロキーLの出来の良さが、多くの方々に伝わっている証左だろう。

 個人的にも、ブランドのトップモデルに相応しい風格と質感が備わっており、かつてのグランドチェロキーを思い起こさせるラグジュアリーぶりに、ジープブランドのさらなる上昇を感じたのである。

▲大型のシートがアメリカ車らしい。質感も申し分なし。

▲「リミテッド」はベンチシートになり7人乗車。前後スライド&リクライニング可能。

▲想像以上に使える3列目シートは膝あたりのスペースが広く大人の乗車も可能。

<2022 ジープ グランドチェロキーL リミテッド>
・車両販売価格:¥7,880,000
・ボディカラー:ヴェルヴェットレッド P/C
・インテリアカラー:ウィッカーベージュ/ブラック
・ハンドル位置:右
・全長:5,200mm
・全幅:1,980mm
・全高:1,815mm
・ホイールベース:3,090mm
・車両重量:2,550kg
・乗車定員:7名
・エンジン:V型6気筒 DOHC
・排気量:3,604cc
・最高出力:210kW(286PS)/6,400rpm
・最大トルク:344N・m(35.1kg・m)/4,000rpm
・駆動方式:4輪駆動(オンデマンド方式)
・トランスミッション:電子制御式8速AT
・フロントサスペンション:マルチリンク式
・リアサスペンション:マルチリンク式
・ブレーキ(前後):ベンチレーテッドディスク式
・タイヤサイズ:265/60R18(110H)

▲3列目シートを使用した際にもこれだけの荷室スペースがあるから十分に使えるはず。

▲3列目シートを倒せば一段と広いスペースが現れる。シートの可倒は「リミテッド」はレバー操作。「サミットリザーブ」は電動となる。


動画斑の試乗リポートをご覧ください。

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