TEST RIDE

[試乗記]

フォード好きなら何としても味わいたい現代の名車

2017 フォード シェルビー GT350

慣らし運転から始められる新車のようなレア個体

あのシェルビーGT350のまるで新車のような中古車個体を取材した。

更新日:2023.12.18

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ABE CARS Tama Garage TEL 042-311-0041 [ホームページ] [詳細情報]

専用設計マシンだからこそ希少価値が高い

 どうやら自動車業界は、というよりもむしろ、アメリカ自動車業界は、クルマに求める感覚性能を捨てEV時代へと本気で舵を切った模様である。

 もともとこの流れは欧州が先陣を切ったはずだったが、今やアメリカの方が積極的に動いており(そう見える)、GMやステランティスは「2030年」をキーワードに一気呵成に攻めているから、2025年以降は一段とその流れが加速しそうである。

 くわえてチャレンジャーのみならず、カマロも2023年いっぱいで生産終了だから、ガソリンエンジン搭載車に未来はなく、ちょっと大げさに言えば、現行型新車といま世に出ている中古車からしか選べない時代が確実にやって来る。 

▲先代型の前期モデルのマスクをベースに開口部のデカいグリルや各部インテーク類のエア導入口が特徴のGT350。

▲リアフェンダーから4本出しエキゾーストにかけての迫力が圧倒的。

 となれば、シェルビーGT350のようなガソリンエンジン搭載のスペシャルマシンの希少価値はより一段と高くなり(現状でもかなりの高額ではあるが)、数年後には今の1.5倍、もしくは2倍に価格が跳ね上がることも予想される。

 というか、そんな下世話な話以前に、アメ車好きなら、フォード好きなら、マスタング系のアメリカンハイパフォーマンスたるシェルビーGT500とGT350は何としても味わいたい!

 個人的にはラプターを含めた計3台のフォードスペシャルマシンに乗れたならアメ車オーナー冥利に尽きると思う!

 中でもGT350は4年間限定モデルであったということで生産台数が少ないこと、個体があったとしてもハイパフォーマンスモデルだけに状態が気になること、さらに購入後のメンテナンスを含めたアフターを考えると、かなりシビアな選択眼が求められる。

 ということで、アベカーズ多摩ガレージに入庫した2017年型シェルビーGT350である。

▲搭載されるフォード謹製5.2リッターV8NAエンジンは、526hp、最大トルク429lb-ftを発生させる。レブリミットが8250rpmとアメ車としては超高回転型パワーユニット。

▲ゆえにエンジンに使用されるオイル粘度は5w-50と超ワイドレンジ用となる。

▲エンジンを組み上げた担当者のネームが刻まれたプレートが貼られている。

▲フロントセクションの一部にカーボンパーツを使用し軽量化と高剛性を実現。だがノーマルマスタングとは別構造になっているから、マイナーチェンジ後にもフロントマスクの変更ができないという事実があった。

 シェルビーGT350は、2016年に登場した近年では稀に見る高性能モデルであり、ハードな作り込み(専用設計)により非常に手間のかかる存在だった。

 たとえば、フロントセクションの一部にカーボンパーツを使用し、ノーマルマスタングとは別構造になっている。だが、これにより高剛性と軽量化を実現している。

 たとえば、エンジン。搭載されるエンジンは5.2リッターV8NAエンジンで526hp、最大トルク429lb-ftを発生させるが、ポイントはレブリミット。なんと8250rpmと、アメ車としては超高回転型ユニットであった。

 この高回転を実現するためにフラットプレーンのクランクシャフトを採用し、しかも手組みである。

 すなわち、シェルビーGT350がたった4年で生産終了になったのはこうした専用設計が仇となってしまったと言っても過言ではなく、だが逆にこうした専用設計のマシンだからこそ希少価値が高く、当然乗ってもスペシャルな感覚で満たされる。

 そもそも8000rpm以上回るV8エンジン自体が稀なのだから。

▲ステアリングの持ち手部分がスエードになるなど変化が加えられハード&レーシーな雰囲気のコックピット。

▲ミッションは、ストロークが短いスポーティなもの。低速走行時はクラッチの上下動のみで動かすことが可能なほどコントローラブル。

▲クラッチは想像するほど重くはなく、非常に扱いやすい。

 プラスして筆者がこのクルマが好きな理由は、とにかく唯一無二の雰囲気を発していること。そして締め上げられた箱型マシンのアメリカンマッスルカーであるということ。

 ビッグパワーで圧倒するヘビーなマッスルカーとは一味違う俊敏なマッスルカーでレーシーな雰囲気が伝わってくるし、この感覚は例えばマツダロードスターとも違うし、ダッジチャレンジャーヘルキャットとも違う。

 エンジンの息吹も含め、本当に唯一無二の存在だけにめちゃくちゃ刺激的であり、そこに物凄く惹かれるのだ。

▲8000rpmを超えるV8エンジン自体が珍しい。しかも走行距離290キロ弱と奇跡的な個体。

▲センターコンソールには油圧、油温メーターが配置されている。

▲激しいコーナリングGにも耐えうるようなマシンに必須のレカロ製バケットシート。GT350にはレカロのバケットシートが特によく似合う。

 さて、そんなGT350の2017年型は走行290キロ! アメリカ的に言えばほぼほぼ新車とも言えそうな超極上個体。各部に、まだまだ新車としての動きの渋さが感じ伝わって来るくらいだし、正直、驚きのレベル。

 今現在、日本国内にも一万キロ以上走行した個体は数台あるが、ここまで走行距離の少ない、まるで新車のような個体は超レアである。

 何よりこのスペシャルのマシンを慣らし運転から始められるというのだから、超がつくほど羨ましい。

 くわえて販売しているのが、フォード車スペシャルショップである(フォード認定サービス工場)アベカーズ多摩ガレージであるというのが、何とも運命的である。

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