キャデラック中心の品揃えによりキャデラックフリーク達から熱視線を送られるブルート。流行りのエスカレードのみならず、旧年式のキャデラック、いわゆる往年のキャデラックをも積極的に集め、適切な整備のもと再び世に送り出している。
そんなブルートに魅力的な90年代キャデラックが入庫した。1995年型キャデラック フリートウッドブロアムである。
全長5.7m、ホイールベース3m以上という巨大なボディのフリートウッド。当時はクリントン大統領の専用リムジンにも使われていたほどで、高級車としてのイメージが最も定着しているモデルだった。
スタイリングは古き良きアメリカ車の印象が色濃く出ている。そういう意味では、近年でもっともキャデラックらしいキャデラックと言えるのではないだろうか。
大げさに言ってしまえば、50年代のテールフィンの流れを汲むイメージである。その迫力はコンコースやドゥビルといったモデルよりも強く感じられる。
そんなブロアムだが、93年に17年振りの大幅なモデルチェンジが施されている。ボディサイズが大きくなった。また搭載される5.7リッターV8OHVエンジンはコルベットと同様のLT-1だが、260hp、最大トルク330lb-ftに進化している。
外観上の特徴は、伸びやかなフォルムとリアタイヤが半分近く隠れているデザイン。オールドスクールなこのホイールアーチが他のクルマとの絶対的な差別化となる。
インテリアはまさに当時の高級車で、スイッチ類にはメッキが多く使われる。シートはフワフワのソファーのようで、フロントベンチシートの6人乗り。
こうした高級感はどちらかというと90年代よりも80年代を引きずっているのかもしれない。
内装スイッチ類の感触などは、現代のアメ車でも感じられない硬質さ。
全体的にはシンプルなのだが、ウッド、プラスチック、メッキなどが巧みの組み合わされた一世代以上昔のアメリカの雰囲気をそのまま醸し出す。
この車両は、9500キロにも満たない実走行車で、22年の歳月を経ているが、そのまま現状維持できている。だから、インテリアには新車時のタッチや雰囲気がまだまだ色濃く残り、シートも、たとえば助手席側の後席などはまったく使われた形跡がない。
聞けば「新車並行車であるから、日本仕様のディーラー車とはウインカーの位置が異なっていたり、とにかく本国仕様のままであるという。しかもフルノーマルだから、そして実走行ものだから、消耗品を交換してやるだけで、9500キロ走行の新車に近い状態に簡単に戻すことが可能という」と代表の市村氏は言う。
実際に触れても、いわゆる中古車としてのヤレがまったくない。昔馴染みの重たく大きなドアであるが、ドア下がりは当然ないし、内装のベタベタぐだぐたの感じもまったくない。ちょっと大げさだが、こんなキャデラックに触れられることに本気で感謝したくなる個体である。
ちなみに、この車両はオリジナルの外装ペイントのままでありバイナルトップの状態は良好であり、経年変化を手直しして得られた良好状態ではない。本気のそのままだから、雰囲気というかオーラというか、そういったものがまったく違うわけである。
くわえて、この年代のアメ車を動かすときに常に思うが、シートやステアリング、コラムシフトの位置決めがほぼジャストで決まるし、OHVエンジン搭載ゆえにボンネット位置が低く、着座位置からの窓越しの車幅のサイズ感もつかみやすく、とにかくすべてにおいてドライバーに優しい。本気で最高のセダンだと今も思う。
乗れば、おおらかな気分で目的地を目指せるクルマである。ステアリングの反応などはゆったりしていながらも正確であり、これだけの大きなボディにもかかわらず、ステアリングの切れ角が凄いから動かすことにおいて不自由さをあまり感じさせないのも素晴らしい。
これらすべてがいわゆるアメ車独特の世界観ということになるのだろうが、最新のアメ車を知っている人間が乗っても嫌にならないがポイントである。個性的ではあるが、今の時代には感じることができないアメ車の味だけに、楽しさの方がすべてにおいて上回ってしまうから不思議である。
年式的な経過を考えればヒストリックカーと言っても過言ではないが、距離だけを見れば、まだまだ新車に毛が生えた状態だし、時間経過による消耗品だけの交換で十二分にキャデラックワールドを堪能することができるだろう。
再び市村曰く「最新のキャデラックには旧年式の質感と90年代のLT-1エンジンを搭載しているという点に、今なら余計に価値を感じますね。整備性も悪くないですし、実走距離からも、この先何十年も所有できる個体でしょう」
大きな高級車と言われた「あの時代」のアメ車に一度でも乗ってみたいと思うなら、絶好の機会かもしれないし、エスカレードももちろんいいが、ちょっと古めのキャデラックはもっといいかも。キャデラックの神髄を味わってみるのに最高の個体であると思う。
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