TEST RIDE

[試乗記]

時代を築いた初期ものアメリカンスタイル

シボレーアストロ (CHEVROLET ASTRO)

果たして今の時代に乗れるのか?

アストロの中でも人気が高かった初期型モデル。すなわち、旧型アストロ。このクルマこそが、日本におけるアメ車の一大ブームを巻き起こした、立役者(車)だったと言っても過言ではないのである。そんなクルマを今見たらどう思うか? ちょっと枯れ気味のアストロに試乗です。

更新日:2016.03.14

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

すでに約31年前のアメ車となる

 アストロと言えばだれもが知っている代表的なアメ車だが、その生産が開始されたのは意外と古く、今から31年前の1985年に遡る。

 この頃は1983年に発売されたクライスラー製のFF駆動のミニバン・ボイジャーが人気を博していたが、GMが発表したミニバンは、ボイジャーとは根本的に異なる、フルサイズバンをひと回りコンパクトにしたFR駆動のミニバンだった。

 クライスラーは初代ボイジャーを新世代のファミリーカーとして開発し、乗用車用のシャシーをベースに製作していたが、アストロはフルサイズバンと同じように、ピックアップトラックのシャシーをベースに製作されたのである。ちなみにクライスラー、GMを追いかけたフォードも、当初のモデルはトラックベースのシャシーを採用していたのである。

 結果的に(歴史的事実を見れば分かるが)、一大ブームを築いたのはアストロだったが、息の長いモデルはボイジャーであり、ミニバンとしては「どっちもアリだった」ということになるのだろう。

 1985年、アストロは後輪駆動のミニバンとしてデビューした。当時直4エンジンとV6エンジンという2種類のエンジンラインナップを持ち、またカーゴバンとパッセンジャーバンという2種類の車体グレードを持ち合わせていたのである。

 直4エンジンとカーゴバンという組み合わせは主に商用的な使われ方をしていたため、日本市場で見る事はほとんどなかったが、主力のV6は圧倒的だった。その当時の国産バンが軒並み70psを切る中でアストロに搭載されていたいV6は倍以上の150hpというパワーを誇ったのである。すなわち、当時(まだ見ぬミニバンブーム)の中では最高にパワフルな1台だったわけである。

 ちなみに、いわゆる旧マスクと言われるこの初期の年代では、コードZといわれるV6の他にコードBとコードWというV6まで存在していた。これらは、単なるコードネームだけではなく、同じV6でも製造期間の違いによるチューンの中身が異なっており、馬力数値も異なった。旧マスクの中では92年から登場するコードWと言われるV6が200hpを誇る最強エンジンだったのである。

 さらに余談だが、主力機はコードWであり、このWエンジンは95年からボルテックエンジンに進化し、その後のモデルにも継続搭載されたのである。

なんてことない顔だが、アストロの歴史の中では、このスラントしたマスクこそ「アメリカン」と、多くの方が憧れた存在だった。当時は、フロントマスクを換装してしまうカスタムも流行したから、この顔が今残っていること自体、奇跡に等しい。

いわゆるショートボディと言われるモデルだが、実際にはこれがレギュラーモデルとなり、その他はエクステンドボディと称される。すなわち、レギュラーボディよりも25センチ長いボディが主流となった。というのも、基本アメリカからの並行モデルのみという状況にあり、本国でのレギュラーボディ自体が少なかったから、日本へもエクステンドが大多数を占めたのである。

フロント235-60/15、リア255-60/15インチのサークルレーシングを履く。当時ボイドが主流だったが、こういったレーサー系のホイールもよく似合った。

デビュー後10年存在した旧型マスク

 この旧型マスクにおけるエンジン以外の進化は、車体バリエーションとボディの長さ、それと装備の違いに尽きるだろう。

 車体バリエーションとしては90年にAWD(四輪駆動)が追加された。これはアメリカ製ミニバンとしては初の四駆モデルとなり、この年から毎年トラクションの改良が行なわれ、99年にはトルクスプリット方式を採用するまでに進化したのである。

 ボディの長さについては、レギュラーボディとエクステンドボディの2タイプが存在し、両者の違いはボディ全長が約25センチ違うことだけであるが、日本で乗るにはその25センチが大切だった。エクステンドモデルは90年に登場し(レギュラーボディは発売当初から)、94年までレギュラーボディと並売されたのである。ちなみにアストロは95年からエクステンドボディに統一される。

 と同時にインテリアの造形もモダンなものに変更され、デジタルとアナログ、2タイプのインパネが存在していたが、デジタルタイプで現存している個体は、もうないかもしれないが…。

 登場から10年目となった1995年には大幅なモデルチェンジを実行する。スラントノーズだったフロントマスクを逆スラントのデザインに変更し、同時にエクステンドボディだけのラインナップに統一。インテリアはまだそのままだったが、翌1996年には全体的なフルモデルチェンジを行い、旧マスクと言われる時代が終わったわけである。すなわち、われわれ世代のアメ車ブームの火付け役・シボレーアストロの一時代が終わったと言えるのである。

搭載されるエンジンは4.3リッターV6。160hpを発生させた。このエンジンは、タイフーンに使われたりと、GM系の主流エンジンだったからこそ、今でも消耗品パーツに困らないという。それに耐久性も抜群であり、質実剛健とはまさにこの時代のアメ車のことを言うのだろう。

懐かしい旧ナビゲーションが装備装着されている等はあるが、アストロ時代の雰囲気を壊さないインテリアの基本は抑えてある。懐かしいエアバッグなしのステアリングもいいし、各種装備品が作動すればまったく問題ないだろう。

実数のメーター距離数に各種メーター針が確実に動く。これまで大きなトラブルもなく、淡々と走ってきたというだけあって、距離は刻んでいるが、今乗っても「あ〜アストロね」という感じで普通に走る。

当時は、「なぜ単なるバンがこれほど人気なのか?」と理解に苦しんだが、今となっては「アメ車だな」と妙に波長が合うから不思議だ。

セマショーに逆輸入されたほどのブーム

 筆者は、このアストロが現役時代だった頃を知っている。実際に雑誌編集の職にあたっていた時は、すでに後期モデルが全盛の時代だったが、その当時から旧マスクの人気は高く、どこのアメ車屋さんに行っても必ずや「1台は置いてある」そんな状況だった(しかも高かった)。今思えば「凄い」の一言だが、アストロだけで商売が成り立つ時代だったのだ(笑)。

 あの頃はアメマガやデイトナにキャルマガジンに…、アメ車が載っている雑誌を開けば、必ずやアストロが紹介されていたし、終いには日本製のカスタムカーがセマショーに逆輸入されて、アメリカンを驚かせたなんてこともあったほどだ。

 振り返れば、もともと一番最初に目についたのが、スタークラフト製の旧型アストロ。「超ゴージャスな内装だけど、バンに600万かよ」そんな第一印象だったが、そのアストロが後々ミニバンブームの火付け役となり、日本製の真似車が多数出現(笑)。今じゃファミリーカーの代名詞がミニバン、なんて時代になってしまったのは周知の事実。

 しかし、そんな旧型アストロも今では見かける機会がほとんどないくらいに激減。絶滅危惧種と言っても過言ではない状況にある。あれだけ大量に輸入されたアストロたちは一体ドコに行っちゃったんでしょう? 解体屋か?

 けど、たまに見つけるアストロは、それほど高くはないし、安いの探してアシにするのも悪くはないとも思うが、それなら断然旧型マスクだろう。シンプルなショートボディの観音開きのリアドアの2WDで、ホイール変えたりローダウンしたりもせずに、多少ペイントが枯れてるくらいのノーマルをダラっと乗るのが脱力感満点でいいかもと思う。しかも旧型マスクなら、今見てもアメリカンだし、ショートボディなら小さいながらも可愛らしいし。

ノーマルのシートが装着している事自体奇跡的でもあるが、この時代のモケットシートは非常に座り心地が良く、ふかふかのソファーのような、旧アメ車的シートなのである。若干の破れがあるが、補修してクリーニングして使いたい。

レギュラーボディということで、サードシートを立たせると荷室はほとんどないと言っても過言ではないが、スタイルとしてはレギュラーボディが格段にいいし、今となってはかなり貴重な存在だ。

現存する最後の1台か?

 と思っていたら見つけた。枯れ気味かなと思っていたら、結構まともに走るので、二度ビックリ。

 ショートボディだし、観音開きだし、当時リアにスペアタイヤを積んでいたステーが邪魔だが、そんなの取ればいいし。

 年代から言ってもちろん枯れ気味ではあるが、まだまだペイントは生きてて逆にいい味出してるくらいの塩梅だし、何よりメーター針が全部動くし、エアバッグのない4本スポークのステアリングが懐かしい!

 とりあえず、余計なもん取っ払うだけでも、十分かもしれない。まったく普通に走るし、で、クリーニングさえ自分でやってしまえば、このままでも乗れる。かなりいいかも! というか、こんな旧型マスクがあるなんて…、現存する最後の1台かもしれない…。

ハンドリングという言葉は似合わないが、今でも十分なパワーというか、トルクフルなエンジンを操って、街中をダラっと走れば気分は脱力感満載のアメリカン!

このままのホイールでもいいし、中古のちょっと枯れたメッキホイールに履き替えるのも悪くはないかも。旧マスクは、それ以降のアストロとはちょっと違うアメリカンな雰囲気で乗りたいもんです。

当時はアストロにV8エンジンを搭載したりしたカスタムカーも多数あったが、それらはいずこへ。

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