愛車に手を入れる(チューニングする)際の目的はオーナーごとに違えど、現代のクルマの場合、性能を向上させるためのひとつの手段としてECU(=エンジンコントロールユニット)のリプログラミングが重要になるという。
これは完全にストック状態のノーマル車でも、すでにパーツ交換などのチューニングが施された車両でも同じであり、吸排気系を中心にライトチューンを施した車両でも、さらにはエンジン本体にまで手を加えた本格的なチューニングカーでも、ECUのプログラムを同時に変更してやらなければ、そのクルマが本来有しているポテンシャルをしっかりと引き出すことが困難になる。
だがECUのプログラムを、そのチューンに合わせた内容にリプログラミングしてやれば、単純に効果を発揮させるだけでなく、目的に応じて壊れずに楽しめるクルマに仕上げてくれるというのだから素晴らしい。
チューニングといえば、一般的にはエアクリーナー、ヘダース、マフラー、プラグ、プラグコードといった吸排気系や点火系のパーツを交換するライトチューンや、ターボ、スーパーチャージャーといった過給器系のチューニングが考えられるが、前者のライトチューンに関して言えば、直接的なパワーアップはなくともフィーリングの劇的変化が体感できるし、後者の過給器系チューンであれば当然パワーアップが見込める。
だが、こういった硬軟あるさまざまなチューンを施すことで一定の効果は当然期待できるのだが、変更したパーツとECUのデータのマッチングが悪ければ、パワーアップどころかノーマルよりもパワーダウンしてしまうことも少なくない。特に現代の電子制御化された車両ならなおさらである。
理由はいくつかあるが、交換したパーツの効果によってECUが通常とは異なる状況を察知し、異常と判断。そしてそれを解消しようと間違った方向に動いてしまうから。
簡単に言ってしまうと、手を加えたパーツによって、適切な混合気や適正な点火時期が得られなくなるとノーマルECUが誤作動的行動をとることで逆に性能低下が導かれる場合があるのである。
ということで、そうしたマネージメントを行っているECUを必要に応じて変更してやらなければならず、それをコンピューターチューンというわけである。
どんなクルマでもECUには余裕を持たせたセッティングになっている。ギリギリの耐久性で走るレーシングカーとは異なり、世界中のさまざな状況下でも難なく走れるよう、あえて幅を持たせ耐久性や信頼性を上げている。現代のクルマでは環境問題等もあり、あえて意図的なセッティングになっていることが多々ある。
ここでいうECUチューンとは、その余幅部分を削るなどしてリプログラムすることで、チューンに合わせた内容に仕上げるということである。
くわえて、各種装着したチューニングパーツとのセッティングを出すためにECUを変更することもあるが、ノーマル車両の状態のまま、ECUの幅の部分を削りパワーアップを試みるECUチューンという方法もある。
ということで、今回はノーマルC7コルベットのECUセッティングを取材した。具体的にナインレコードが行っているコンピューターのリプログラミングは以下のとおりである。
1/依頼車両の点検およびオーナーとのディスカッション
2/ダイノレース(4輪ローラーシャシーダイナモメーター)による1回目のパワーチェック
3/デバイス(DIABLOSPORTやSCTの市販品)にプリインストールされているチューンデータをインストール
4/2回目のパワーチェック
5/車両に合わせたECUのリプログラミングと確認
6/3回目のパワーチェック
5と6を繰り返して最適なプログラミングを構築して完成
上記のメニューは基本的な流れをごく簡単にまとめただけで、場合によっては1と2の間でエンジンオイルやプラグの交換を行ったり、オーナーの要望があればECUのリプログラミングと並行してマフラーやエアクリーナーを社外パーツに交換したりする場合もあるという(今回はしていない)。
また、5と6の部分では、燃料噴射制御を変更して燃料を濃くしたり薄くしたり、点火時期制御を変更して点火時期を早くしたり遅くしたり、電子制御スロットルのマップを変更したりetc。
ログデータをもとにして色々な部分のデータを変更&パワーチェックを繰り返してセッティングを詰めていき、最終的にベストなプログラムを完成させるのである。
ちなみに余談だが、上記の3で使用しているデバイスと同じものを使用している他のショップは複数あるが、ナインレコードのようにパワーチェックと確認を複数こなすショップは数少なく、デバイスのデーターインストールのみで終えているショップもあると聞くので、よく確認したほうがいいだろう。
以下が結果である。まずはノーマル状態でのパワーチェック。376.9psとの結果。カタログスペックは455psだが、シャシーダイのロスにより、カタログ値の約80%の数値(あくまでもシャシーダイ上での結果なのでこの数値がパワーの実数ということではないので誤解しないように)。
次にもともとデバイス内に用意されている「DIABLOSPORT」のデータをインストールしてパワーチェックする。結果は379.8psとなり、差分は約3ps。数値的にはそれほど大きくは上回らなかったが、グラフを見みればわかるが全域でノーマルECUを上回っている。
そしてここからが現車セッティング。ナインレコードの腕の見せどころ。結果から先に記すと17.3psのアップ。もちろん部品は何も交換せず、データのみを詰めていっての結果である。
聞けば、「NA車両だとなかなか簡単にパワーが上がらないので、何度もデータを変更しては確認作業を繰り返すのです」という。くわえて「コルベットは、他のアメ車と異なり、ノーマルの状態からかなり余幅の少ない詰めたセッティングになっています。それでも、点火時期や燃料が濃い目でパワーやレスポンスアップをする余地がありますね」とのこと。
各種バランスとセッティングと確認作業を何度も繰り返し、結果的にノーマル時から17.3psアップ、トルクも2.2kg-mアップを実現している。これまたグラフを見ると、中間域に関しては、一番大きいところで20psほど差が出ているというから素晴らしい。
「もちろんピークパワーも追求しますが、中間域のパワーの出方も確認し、可変バルタイの数値も変更しながらベストな状態になるよう考慮してセッティングしました」
直接パワーアップには関係ないが、点火時期を変更したことによって、排気音が少し甲高くなっている。実際、C7のオーナーさんが即座に変化を感じ、しかも直接パワーアップを確認し「凄い」というから、ECUチューンはかなりの効果を発揮するわけである。
ノーマル状態のままチューンするもよし、他のチューニングパーツと組み合わせるもよし。電子制御化れた現代のアメ車には、じつは一番効果的なチューニングがECUなのかもしれない。
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