1980年代当時ジープブランドを所有していたのはAMC(アメリカン・モーターズ・カンパニー)で、彼らはこれからはコンパクトなSUVが売れると考えた。というのも、1979年に起きた第二次オイルショックで、燃費の悪いフルサイズに対し、世間の風当たりが強くなったからだ。ちなみに、ジープはそれ以前もチェロキーというモデルをラインナップしていた。ワゴニアのバリエーションとなるビッグチェロキーがソレだ。1974年に生まれたこいつは、XJの誕生でその幕を下ろした。
デビュー直後からXJチェロキーはよく売れた。コンパクトなサイズが受け入れられたのだ。それに本国では2WDもあり、安いプライスで手に入れることができた。当初2ドアと4ドアのあったボディは、その後4ドアのみとなり、高級化路線へと進む。リミテッドというグレードが追加される。ただ、90年まではそのトップエンドに通称スモールワゴニアと呼ばれるワゴニアが存在した。同じXJボディながら、4灯ライトとウッドパネルを貼ったこいつが、もっとも高級なチェロキーだったのだ。
80年代から90年代にかけてのチェロキーは、見かけこそほとんど変わっていないが、細部は年々変化している。特に90年代初頭はハード面での過渡期ということもあり、毎年の違いを垣間見られる。たとえばセンサー類ひとつとっても、ABSを筆頭に、排気センサーや速度センサーなどが進化する。要するにメモリーの少なかったコンピューターがどんどん進化するのだ。この辺はボンネットを開ければ一目瞭然。エンジンではなく、補器類が時代の変化を感じさせる。
そんなXJが、1997年にはじめてビッグマイナーチェンジを受ける。ハードウエアこそ継承するものの、ボディから細部まで見直された。これにより若干サイズも変わっているので要チェックだ。ただ、エンジン自体は一貫して変わらない。AMC時代から続くそれは当初4.2リッターだったが、80年代後半から4リッターとなる。が、これも年式によりパワーの出方が違うのでひとくくりにはできない。特にマイチェン後はスムーズな吹け上がりとなったことを記憶している。まぁ、それでも同クラスのSUVと比べて燃費のいいものではないが…。
XJは2001年を最終型とするが、その人気はいまも高い。日本でもそうだし、アメリカでもいまだにユーザーは多い。そして、それに気付いたメーカーも新型コマンダーを作ってXJのデザインを甦らせたのだ。それほどXJは偉大なクルマといえるのだ。XJのコンパクトなボディは乗り手を選ばず、街中の細い路地から林道までをこなす。ハンドリングは、今となってはダルな感じのするひと昔前のアメ車感覚。アクセルペダルも微妙な開閉には応答しない、ひと昔前のアバウトさ。そして荒々しいエンジンの息吹。パワフルだが、粗さもあり、イマドキの電子制御の味気ないエンジンに比べれば、楽しいとも言えるが、雑とも言える? けど、これがジープの直列6気筒だ、味わいだ、と思うと案外受け入れられる。
個人的には、このクルマに静粛性などの品の良さは求めない。ただ嗜好品として、この四角四面のデザインに惹かれ、ジープのエンジンに惹かれ、そしてそれこそがこのクルマの最大の魅力だと思っている。だから、たまに見かけるXJを見るたびに、いまだに「いいなぁ〜」なんて思ってしまうのだ。
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