TEST RIDE

[試乗記]

これが最後のC6インプレッション?

シボレーコルベット C6 (CHEVROLET CORVETTE)

この先10年楽しめる最後の存在かも

たぶんこれが最後のコルベットC6インプレッションになるだろうか? C7コルベット発売前にして乗ったC6は、初期型だったがコンディション最良で、いまとなっては大人びた洗練性を感じさせるほどシブい1台だった。

更新日:2014.01.15

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/NUTS MOTOR COMPANY TEL 082-840-3012 [ホームページ] [詳細情報]

ひと回り小さなスポーツカーに感じられる

 ガレージにたたずむ赤いC6コルベット。年式は2006年の本国US仕様で、走行は2万マイル弱。2006年仕様ということは、搭載されるエンジンが6リッターV8 LS2となり、そいつは404hp、最大トルク55.6kg-mを発生させる。ちなみにこのLS2エンジンは2008年からLS3へと進化し6.2リッターV8で430hpを発生させる。

 若干の暖気後、ゆっくりとガレージを出て街中を走る。フルノーマルであるこの個体は6MTを備えているが、クラッチはそれほど重くなく、激太低速トルクのおかげもあって、当たり前だがまったく問題なく走れる。

 シフトも、C5の時のような大味なフィールではなく、シフトノブが短くゲートが明確で、小気味良く操作できるのが特徴である。
 
 話が前後するが、C6コルベットのボディは見た目にも小さく見えるが、実際に乗っても小さく感じることができる。

 見た目に関して言えば、先代となるC5よりも全長で100ミリ、全幅で10ミリ絞り込まれ(ホイールベースは逆に30ミリ伸びている)、ボディ前後のオーバーハングが一段と短くなっていること。さらに象徴的だったリトラクタブルヘッドライトを廃したことでフロント周りがシャープになり、ギュっと切れ上がったリアスタイルとあいまって、筋肉質なシャープなボディを演出している。

 実際に運転しても、両フェンダーの盛り上がりがボディの四隅を把握する助けとなり、大きさをあまり感じさせない。さらに、各部の剛性が上がり、ステアリングや足周りの精度があがったこと等も起因して、すべての感覚がひと回り小さいスポーツカーを運転しているような軽快なフィーリングを与えてくれる(ユーノスロードスターと言えば嘘になるが、その感覚に近い印象はある)。

 運転すると、見た目以上にダブついた印象を与えるクルマは数多くあるが、こうしたタイトなフィーリングを与えてくれるクルマは数少ないし、走り系のクルマならなおさら嬉しい。

搭載されるエンジンは6リッターLS2 V8エンジン。これはC5に搭載されていたLS1からの進化系となり、404hp、最大トルク55.6kg-mを発生させる。2008年からは6.2リッターLS3 V8に進化し430hp、最大トルク58.6kg-mにパワーアップしている。だが、中古車を選ぶ場合は、ここにこだわることなく程度重視が望ましい。LS2でも十分にスポーティであるからである。

フロント245/40zr-18、リア285/35zr-19インチホイールとタイヤを装備する。ノーマルだがこれで十分な性能である。購入後はタイヤの消耗だけは気にしたい。

このリアからの眺めが一番素敵なポイント。丸形テールライトもコルベットらしさの象徴である。C5の楕円テールは威圧感がないのが残念だったが、C6でまた復活している。

純正至上主義では決してないが、今風のトレンドである「主張し過ぎない個性」を重んじれば、ノーマルでも十分個性的ではないかと思う。これに10年乗ってシブいオヤジになりたい。

C6こそワールドワイドなスポーツカー

 そのまま高速に乗りフル加速。右足に軽く力を入れただけで、背中がシートに押し付けられるほど強烈なトルク感。臆せずさらに踏み込めば、ドロドロと唸っていたV8が高周波を伴った特徴的な鼓動を響かせながら圧倒的なスピードで走り抜けて行く。6MTの効果もあって、その加速感は一段とリニアになり、操る実感も高い。「今のアメ車はATで十分だよ」と誰かが言っていたが、こういう感触を味わってしまうと、「それこそ古い考え方だな」と思わずにはいられない。

 一方で、周りの流れに乗り、流れる景色に目を向けながらゆっくり走っている時は、マグネティックライドコントロールを「TOUR」モードにすることで、快適なドライブも可能である。とはいえ、格段に高まった各部の剛性や前後重量配分の良さのおかげもあって、スポーツカーらしいキビキビ感は常に健在であるから、スポーツ度は常に高い。

 あくまで個人的な印象だが、歴代コルベットには何かひとつ抜けている印象が常にあった。「コルベット=スポーツカー」という言葉に、常に疑問符を感じざるを得なかった。スポーツカーと言えばタイトなドライブフィールを想像してしまう自分にはなおさらだった。

 原体験のないC1やC2には、もはやまともな個体を試乗することは叶わないだろうから、想像をかき立てることしかできないのだが(できたとしてももの凄い高価なビンテージカーとなり非現実だろう)、過去に体験したC3はめちゃめちゃ大味だったし(機械的な信頼性も…)、C4はかなりシャープなスポーツカーになったが、運動性能はイマイチ(あくまでアメリカ国内でのスポーツ)。C5に関しては、スポーツカーにはなったが、あの間延びしたスタイルはスポーツカーであってもコルベットではない…。だからこそ、「コルベット=アメリカンスポーツ=世界のスポーツカーに匹敵」という図式が認識できるようになったのは、C6が登場してからだった。

 というわけで、自分にとっての「スポーツカー=コルベット」という身近な存在はあくまでもC6である。今回の試乗車は初期型ではあるが、フルノーマルであり6MTであり、ボディカラーも白や黒じゃないのが嬉しいし。

若干華やかさに欠けるという印象もあるようだが、スポーツカーとして割り切ったシンプルな形状が、筆者的には逆に好みである。派手な内装が好みというなら、軟弱なマセラッティでもアストンマーチンでも買えばいい。

クラッチは重たいこともなく、MTが運転できるなら女性でも特に問題なく走らせることは可能だろう。ただ足サイズ27センチでもヒール&トゥができない(技量が足りない?)ペダルレイアウトは後々対応する必要があるかもしれない。

搭載されているマグネティックライドサスペンションは「TOUR」と「SPORT」の二種類のモードを備える。「TOUR」ならまるでファミリーセダンのような快適ドライブが可能であり、一方「SPORT」にすれば硬質に引き締まったシャシーが驚くほど俊敏なコーナリングスピードを実現する。

今こそ「男は黙ってスポーツカー」

 最後に。先日C7の日本仕様の価格が発表されたが、もし買えるなら間違いなく新車のC7を買うのが正しい選択である。まだ走らせたわけではないが、ボディは一段と小さくシャープになり、フロントからリアにかけての見た目の印象も悪くない(C6も悪くはないのだが、マスクの印象が好き嫌いの分かれるところか)。性能は言うに及ばずだし、基本能力がさらに高まったからこの先出てくるであろうバリエーションモデルに関しても、一段とスゴいのが出て来るはずである。難があるとすれば、その派手過ぎるエクステリアくらいだろう。

 だから最新トレンドをいち早く手に入れたければ(もちろに手にするだけの財力&余裕があるならば)、C7こそ今買うべき最高のモデルとなるのは間違いない。

 ただ、今回試乗してみて再確認したが、流行廃りに惑わされずに我が道を行くならば、またC7の新車ほどの金額は出せないのだが、ということになれば、C6は断然お勧めのクルマとなる。

 性能だって十分だし、一瞬の速さで言えば、それこそまだまだ十分に現役だろう(6リッターV8でも十分)。しかも今回の試乗車のようにUS仕様のままフルノーマルとなれば、個体の状態も掴みやすく購入してから自分流にアレンジしていく楽しみも残されている。しかもMT! Z06やZR1ももちろん素敵だが、日常的にも使うならクーぺで十分だし、肩肘張らない、がんばり過ぎてない感じが逆にカッコいい。

 C6の価格帯としては、300万円台後半から400万円台にかけてがボリュームゾーンとなるだろうが、十分なんとかなりそうな額ではないだろうか?

 四十も過ぎると、なにかと軟弱になり「中古の国産セダンでも買うかな」とか、「ファミリーカーに国産ワンボックス買わないと」とか、いろいろな縛りが出てくることも事実だろう。でも筆者は、フルノーマルなコイツに乗って(MTであることを自慢して)、オヤジ臭を漂わせないジジイになりたいと、本気で思ったのだった。間違ってもハチロクに乗って「オレはスポーツカーに乗ってるんだ」なんて、自己満足するようなオヤジにはなりたくはない。

試乗車は、US仕様のままフルノーマルであったが、内外装の程度はかなり良く、個体の状態が掴みやすかった。中古車を手にする場合は、あくまでも程度重視である。

大排気量V8、しかもOHVをフロントに積んで後輪を駆動するスポーツカーは世界中を探してもコルベットしかあり得ない。しかも、後輪の直前に座って長い鼻先と盛り上がった両フェンダーを眼前に見て、巨大なトルクを操る真のスポーツカーはC6コルベットだけである。C5もそれに近い構成にはなっているが、前後オーバーハングが長く、ふくよかなボディスタイルが、コルベットらしさとはかけ離れた印象をもたらす。

大人の選択肢として、このまま10年乗り続けたい。オイル交換とタイヤ交換のみで。

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