末冨康二さん65歳。彼には60歳まで三菱自動車に勤務していた経歴がある。だからそれまでの所有車は家族車両を含め20台以上、全てが三菱車だった。だが、同社中国支社に駐在している頃、現地で見たフォード車やフォルクスワーゲン車に影響され興味を持つようになる。
だから、「駐在を終え日本に帰る時にはマスタングもいいな」と思ったことがあるという。ちなみに末冨さんは、自動車メーカーに勤務していただけあって、自動車に詳しく、製造製作にも詳しく、パーツ情報にも詳しい。
そして5年前。ちょうど日本では正規ディーラーでマスタング50イヤーズエディションの販売が開始されていた頃、日本に帰ることが決まった。早速日本での「足」探しである。その当時、三菱車ならランサーエボ10、それ以外ならマスタングと決め、まずはマスタングにアタックした。
「中国から自宅のある京都のフォードディーラーにメールしたんです。でも、一週間経っても返事がなかった」
なのでもう一度メールしてみる。すると、「本当に買うんですか?」と返信があったという。後でわかったことだが、メールアドレスが中国からだったから、当時のディーラー担当者が不審に思い対応しなかったとのこと(笑)
だがその後「本当に買います。予約金も入れます」という返信を再度入れたことで、車両を押さえることができたという。
しかし、その時点では、日本でもバカ売れ状態だった50イヤーズエディションだけに、車体の色も選べない状態だった。が、なんとか押さえた一台ということで、それがたまたま偶然の赤いマスタングであった。
▲2015年マスタング直4エコブースト50イヤーズエディション。購入後6年で4.6万キロ走行。
▲リアのエンブレムが「50イヤーズエディション」になっているのが末冨さんの自慢。
▲直輸入のマスタングも日本の道を走っているが、このディーラープレートが装着された個体は数が少なく価値も高い。
そして末冨さんが中国からメールを入れたディーラーがフォード日光社。なんと創業100年超にも及ぶ老舗フォードディーラーである。
「かつて三菱自動車で1980年代のフォードブロンコのミッションを製造していたことがあるんです。その製造製作に関わってまして、その当時日光社にはブロンコが展示されていたんですよ。私、それを眺めに日光社に来ていたんですよね」と末冨さん。
そう、末冨さんは今から約35年以上も前に日光社を訪れ展示されていたフォード車を眺めていたのである。
実は日光社は、1918年から京都駅前で自動車の輸入販売業務を開始している。ざっと計算して103年前である。
だからT型フォードに触れていたり、はたまた日中戦争や第二次世界対戦を経験していたりで、もっと聞けば、2016年にフォードが日本市場から撤退していたが、実はその前にも二回ほど撤退しており、日光社は100年超の歴史の中でなんと合計3度のフォード日本市場撤退を経験していたのである。
「60歳まで三菱自動車に勤務していまして、ほぼ三菱のクルマで過ごしてきた人生ですが、所どころでフォード車との関わりがあった人生でもあったのです」
▲京都駅前大通りの中心地に大きな自社ビルがあり、その1階にショールームを構える。
▲ショールームの裏地に車両用のエレベーターがあり(写真右側)、それにて地下の工場に車両を運ぶ。
▲ストアマネージャーの森圭一郎氏。T型フォード時代の話から現在に至るフォード車の扱いや整備情報に関する話をしてくれた。
末冨さんは、小さい頃からモーターファン誌等でマスタングを見てきており、当時セリカやGTOの見本ともなったクルマであったマスタングにどこかで憧れを持っていたのだろう。そしてそうした原体験を実現したのが「人生最後のクルマ」と称する2015年型のマスタング直4エコブーストなのだが、購入後半年でフォード日本市場撤退のニュースを知ることになる。
ところが、さすが末冨さん。元自動車メーカー勤務だけあって、受け止め方が非常に冷静だった。
「メーカー自体がなくなってしまうわけではないから、パーツだって手に入るだろうし、メーカー自体にもパーツを供給する義務もあるだろうから、すぐにどうこうなる可能性は低い」と分析。
さらに、購入したフォードディーラーの日光社がそのまま残るということでひと安心。というより、もともと日光社に対する信頼性というものが多分にあり、「そこが存在する限り大丈夫だろう」というフォード社というよりも日光社に対する信頼性が非常に高かったのである。
▲末冨さんは、年に数回このマスタングでサーキット走行をしているという。場所は鈴鹿サーキット。とはいえ、全力で攻めると言うよりは、普段使えない領域を試したりして楽しんでいるレベル。これまで直線加速のマックスは200.6キロだった。またブレーキもパフォーマンスパッケージ付きだから「力強く効く」という。
▲末冨さんは、生産技術出身の購買担当として中国ではパーツ製造する際の材料購入を手がけたり、製造を手掛けたりしていた。昔はミッション製造にも関わっていたということで、クルマにもクルマ事情にも詳しい。だから、「撤退」を聞いても非常に冷静だったと振り返ってくれた。
そんな日光社であるが、現在も京都の駅前通りの非常良い立地にあり、大きな自社ビルの一階にショールームが見える。中にはフォードエクスプローラーとF150が展示されている。
これら車両は、2016年以降、新車の販売がなくなってしまった後に、自社で輸入した直輸入車両となるが、上記した通り100年にも及ぶフォード車との関係もあり、自社にて整備、特にエーミング(電子デバイスを使用した整備)に力を入れ、直輸入車への対応を積極的に行っている。
近くに琵琶湖があることもあり、特にSUVやピックアップの需要が多いということでF150等も扱っているが、これまでにはマスタングも積極的に直輸入してきているという。
ただし現在は、コロナ禍だったこともあり直輸入の車両が減っているというが、自社輸入は続けていくということだから最新のフォード車に興味ある方は問い合わせて欲しい。
さらにショールームの真下、すなわち地下には広大な整備工場スペースがあり、ここにはかつて販売した正規ディーラー車を含むフォード車の整備が随時行われている。
▲ショールームの地下には広大なスペースの工場が設置されている。また車検の検査ラインも持つ。
▲フィエスタやフォーカス、クーガーといった小型の欧州フォード車が数多く整備を受けていた。
▲こちらは30年以上前のフェスティバ。こうした年代物の車両の整備も行われているのは、歴史の長さゆえである。
▲工場の写真には映らない場所には整備待ち車両の置き場がある。フォーカス、エコスポーツといったフォード車が今も京都の街を走っている証左である。
エコスポーツ、フィエスタ、フォーカス、クーガーetc。奥に見えるフェスティバは30年以上前の車両ということでパーツ対応が難しくなっているというが、そうした年代物の車両の取り扱いも豊富である。
「つい先日は60年代のマスタングがやって来ました」というし、90年代のリンカーンや2000年代のエクスプローラー等、まるで博物館級の来場車が訪れるのも、日光社の歴史の長さゆえである。
「京都の街だからこその小さくキビキビ走るフォード車が集まるのかもしれません。ですが、F150オーナーさんもいらっしゃいますし、とにかく『撤退後』以降から整備でのフォード車の扱いは増えております」とマネージャーの森さんは言う。
続けて「それもこれもピーシーアイさんが純正パーツを入れてくれるからこその現在の対応が可能なので非常に助かっております。
ただ、最近ではメーカー自体で生産終了してしまったパーツもあるらしく(例えばFR時代のエクスプローラーにも徐々にだがそうしたパーツがあるという)、そうした車両への対応課題も含め、今後もフォード車の整備に関しましては自信を持って行っていきます」ということだ。
ちなみに、上記のようなフォード車オーナーが乗り換える際に、再度フォード車を依頼した場合には、中古車にて対応しているということだから、これから新規でフォード車の中古車を探す場合には(京都近隣でフォード車に乗りたければ)、日光社はかなりオススメのディーラーだ。
▲パーツ倉庫内にはピーシーアイによって搬入された純正パーツが山のようにあった。
▲取材当日は末冨さんのマスタングの整備も同時に実施。オイル交換やタイヤ交換等である。その打ち合わせが行われているカット。
▲冬の京都を走るために冬用タイヤへの交換も行われた。日光社では、冬用&夏用タイヤの預かりサービスも行われている。
そんなフォード日光社に絶大なる信頼を置いている末冨さん。購入されたマスタング自体への信頼も厚く、購入後5年で4.6万キロ走行しているがいまだ満足度はかなり高いという。
「購入当時新車で460万円。例えば、今の時代に販売することになっていれば、余裕で650万円はするでしょうから、まさにバーゲンセールですよ。今、昔の関係から三菱アウトランダーに乗り換えてくれと営業がよく来るんですが、550万円もするそうですから。
しかも、トラブルもなく壊れそうな予兆もないですから、不安要素は限りなく少ないです。まさに年金受給者にはもってこいのスポーティカーですね(笑)」
歴史ある日光社。そして京都の街を走るフォード車たち。その礎は日光社によって築かれたと言っても過言ではない。
末冨さんは、「あと10年30万キロは走る。生涯最後のクルマ」と語っていたが、日光社がある限りは、それも現実のものとなるに違いない。
フォード日光社
■住所:京都市南区東九条下殿田町43
■電話:075-681-0111
■営業時間:9:30〜19:00
■サービス受付:9:30〜18:00
■定休日:月曜日 第1第3木曜日
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