冷静に考えれば、VWポロやプジョー207などには乗ったことがないので、仮にソニックの重要なライバルだとしても、それらと比較することはできない。唯一できるとするならば、親族が所有しているスズキスイフトあたりか。けれどこのスイフト、すでに5年落ち。はなから勝負にはならんだろう。なら、なんだ? 最新の国産車か? となれば燃費競争か?
これまた冷静に考えて、恐らくだが、燃費スペック的にソニックがいきなりチャンピオン! なんてことはあり得ないはず。このご時世、当然のことながら気を遣っているのは間違いないんだろうけど、そんな優れたものが一代で築けるはずがないと思うのは、これまでのアメリカ製品所有およびシボレー車に乗った経験値によるもの。といっても極端に悪いわけではなく、日本車にはまだ勝てていないというレベルだろうが、恐らく。
というわけで当初、他車と比較しようか…、なんて考えていたインプレだが、そもそも比較対象に乗った経験がないので、却下だな。あ〜、どうするか? とりあえず乗るか…。
……、こんなようなことを考えてのご対面。先日見たキャプティバの顔面はかなりのインパクトで、「なかなかやるな〜」と思っていたから、ソニックもその系譜をもちろん辿ってはいるが、インパクトはそんなに強くなかった。あくまでキャプティバ比として。ただ目ヂカラは凄い。
そしてドアを開け乗り込み、キーを回してエンジン始動。若干の時間をいただき、シートやステアリングの高さを合わせ、シフトを確認していざ出発。駐車場から出口まで、およそ50メートルくらいか。もうその時点で「かなり良くねぇ?」。正直、自分でも予想外の印象だった。
シボレー小型ハッチバックと聞くと、その昔借りた「シボレークルーズ」(2001〜2008年)をどうしても思い出す。いまだから言うが、「なぜこんなもんをシボレーブランドで売るんだろ?」とその当時は本気で思っていたし、乗ってもシボレー色なんて、リアのコルベット風テールランプ以外にまったくなかった。もうホントに嫌いで嫌いで、トラウマにまでなったくらい。余談だが。なので、どうしてもネガティブな印象が気になっていただけに、出足50メートルでの好印象に、我ながら驚いた。
その良さの理由・その1が、室内空間の心地良さ。目に入る樹脂やプラスチックの質感が思いのほか高く、メーター周りの造形が凝っており、またその素材感がぜんぜん安っぽくない。その2が、シート。表皮自体はそれほど質感の高いものではないのだが、全体のホールド性が高く、それが座面の両サイドにも及んでいるため、一瞬窮屈にも思えるが、スポーティなハッチバック車とすれば正解! と思う。またそのタイトな感覚が、インテリア全体に及んでいて、ひとつひとつの造りとつじつまが合うから、余計に満足する。というか、「スポーティ」を名乗る以上、こういった部分は当たり前だと筆者は考えるが、意外になっていないクルマが多い。
そしてその3が、ステアリングやボディの剛性の高さ。ステアリングの径が大きく、握りが太く、そして若干重いがかなりシッカリしている(スポーティカーならちょうどいい塩梅)。中立付近がデッドなアメ車を過去に経験している方ならお分かりいただけるだろうが、アメリカ製は案外軽くて曖昧なものが多かった。最近のアメ車では、この部分はほとんど改善されているが、ソニックの場合は、体感で二回りほどガッチリした印象。そして意外にクイック。この部分に関して言えば、燃費競争に明け暮れている最新の日本車でも叶わないと思う。
その4がエンジンとミッションの組み合わせ。ソニックに搭載されているエンジンは、エコテックと呼ばれる1.6リッターの直列4気筒で、最高出力115ps/6000rpm、最大トルク15.8kg-m/4000rpmを発生させる。それに6速ATが組み合わされ、走ると低速から中速までの勢いがかなりあることが分かる。同じ4気筒エンジンを積んでいたPTクルーザーなどに乗った経験からすれば段違い。出足から時速80キロ程度までなら、圧倒的な差が出ると感じるほど速い。
試乗の時間と場所が限られていたために、高速走行は行っていないが、あのボディとハンドリングがベースなら、それほど破綻することはないだろうと想像するし、常識的なペースで走る限りにおいては、パワー不足を露呈することもないだろうと思う。特にあのステアリングの硬質さは、かなりのスポーティさと安心感を与えてくれるだろう。総じて一般道における走行性能は、非常に高く、気持ちいい。
ただ一点、ATとエンジンの制御の問題なのか? 信号待ち等で止まっている状態から動きだしの状態時にギクシャク感を何度か体感した。それはキャプティバでも感じたことなので、個体差ということはなかったと思うが、何かしらの機能によるものなのだろうか? 後に確認したいと思っている。
たとえば国産車オーナーや欧州小型車オーナーおよび予備軍の方などは、あ〜だこ〜だ、それこそ目をつりあげてソニックのあらさがしをするのだろうけど、われわれアメ車好きのような、感覚的、直感的な選択をするような人々にとっては(そんな人ばかりではないと思いますが)、ソニックは結構面白いクルマだと感じるはず。
そもそも、今や法定速度内で破綻をきたすクルマなんてあるわけないし(それを言っちゃあ身も蓋もないが…)、燃費の善し悪しを極めるのは重要だが、重箱の隅をつつくようなアラ探しをしても仕方ないと思う。それよりも人の五感に訴える「何か」を持っているクルマなら、仮に至らない部分があっても許せるような気がする。ソニックは、スタイリングに、走りに、質感に、そしてブランド性において、十分人々を惹き付ける魅力を持っていると感じたし、よくよく見ると日欧コンパクトカーにはない大胆な造形がかなり面白いと思う。
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