一般のアメ車ユーザーは、「コンピューター診断」とか「メーカー純正テスター」といったフレーズについて、何となく「整備や修理に必要なんだろう」とは認識していても「どうして必要なのか?」は、ほとんど理解していない。
そこで今回は、昨年登場したばかりのFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の純正テスター(専用スキャンツール)「wiTECH2.0」を、関西圏で最も早く導入したUGアーバンガレージで、現代のアメリカ車の整備&修理に欠かせないと言われる純正テスターについて取材してきた。取材に対応して下さったのは、同店の整備士・吉田博行氏だ。
編集:まず最初に「純正テスターとは何をする道具なのか?」を簡単にご説明願えますが。
吉田:一般に純正テスターと呼ばれる機械は、自動車メーカー純正の『専用スキャンツール』のことを指します。
日本語では『外部診断器』と呼ばれるツールで、その名の通り車両の診断をする機械なのですが、現代の外部診断器は単にエラーコードを読み取ったり消したりするだけでなく、専用サイトと連動してリコール情報やアップデート情報を読み込んだり、サービスマニュアルやパーツ情報を閲覧したりと多様な使い方をします。
われわれはこの純正テスターを阿部商会から購入しております。
ちなみに『純正」ではない『汎用』のテスターも存在しており、こちらは自動車メーカーではなくツールメーカーが制作&販売しているもので、汎用テスターもパソコン、タブレットが主流となります。
編集:アメ車や逆輸入車の修理や整備を行う際に、純正テスターがなければ支障が出るのでしょうか?
コンピューター制御が多用されている現代の車両の整備に診断器が必要なのは何となく理解出来るのですが、例えば専用の機械で診断しなくても、メカニックの経験や技術でカバーが出来たりはしないのでしょうか?
吉田:車種や年式によります。車両の制御にコンピューターが使われていないキャブの時代の旧車であればスキャンツールは必要ありません。また、90年代の過渡期の車両に関しても、熟練のメカニックであればスキャンツールがなくてもある程度の整備や修理は可能です。
しかし、現代の車両の場合には、何らかのスキャンツールは整備や修理には必要不可欠と言っていいと思います。
少なくとも、何のテスターもない状況で診断&整備しろと言われたら自分は困ります。それは何故か。現代の車両は悪くなった部品を新品に交換するだけでは作業が完了しない場合があるからです。
例えばチェックランプが点灯して、故障と診断された箇所の部品を交換したとしても、スキャンツールを使って『部品を交換しました』という信号を送ってやらないと作業が完了しない場合があります。
また、車両の各所に設置されたECU(電子制御装置)の情報をアップデートする際にもスキャンツールを使います。汎用の高機能スキャンツールがあれば、ある程度の故障診断や学習機能のリセットは可能なので、必ずしもメーカー純正の専用スキャンツールがなければダメというわけではないのですが、オンラインによるプログラミングが必要な場合には、専用スキャンツールとオンライン契約があった方がベターです。
編集:なるほど。メーカーの専用スキャンツールが現代のアメ車の修理や整備に必要ななことは分かりましたが、専用スキャンツールがあればメカニックの知識や経験、技術は問われないのでしょうか?
吉田:そんなことはありません。例えば、スキャンツールで『6番にミスファイヤが出ている』というエラーコードを読み取ったとしても、それは6番が死んでいるという意味ではありません。
あくまでも『ミスファイヤが出ている』というだけで、プラグが悪いのか? 圧縮が悪いのか? といった原因を特定しなくてはならないし、さらには原因特定後の作業には当然ながら昔ながらの機械的な作業があります。また、全ての不具合がエラーコードとして表示されるわけではありません。足回りなどでは、センサーの感知しない機械的なトラブルだってありますし、整備士としての基本スキルが高いに越したことはありません。
編集:なるほど。現代の最新車両を整備するにはテスターが必要であるということに疑う余地は全くないが、同時にメカニックとしての能力の高さも求められるということである。
最後に。最新のメカニック事情を語ってもらった中で、ひとつだけ言い忘れたことがある。上記のやりとりの中で出てくる純正テスター&スキャンツールはすべて英語表記である。くわえて整備書も英語。すなわち純正テスターを持っていても英語で整備書が読めなければ、完全な整備を行うことは不可能となるのである。
ということで、現代のメカニックには「スキャンツールを英語で読む」+「整備書を英語で理解する」+「トラブルを判別する」+「修理作業する」+「確認する」という技能がすべて必要になるということも覚えておく必要があるだろう。
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