TEST RIDE

[試乗記]

ひときわ異彩を放つホンダ「らしさ」の集大成

ホンダ リッジライン

HONDA RIDGELINE

V8を持たないホンダが考えた、ホンダらしさ全開のピックアップトラック、それがリッジラインである。

更新日:2010.11.07

文/編集部 写真/編集部

取材協力/フェアライン TEL 0568-77-7389 [ホームページ]

SUTはホンダらしさの具現化

 2004年1月デトロイトショーでSUTコンセプトが発表され、翌2005年1月に同ショーでリッジラインとして発表された。それまでトラックを持たなかったホンダが満を持して登場させた逸品、それがリッジラインだ。走りにスタイルに、ホンダらしさが詰まったSUTである。アメリカでピックアップトラックは、乗用として日常生活にかかせない存在になっていた。一種のレジャービークルとして、その荷台の大きさは一般家庭で重宝されるようになった。もちろん、そうした家庭には、シビックやアコードなど『普通のクルマ』をセカンドカーで確保していた。当時売り上げ面でも、シボレー・シルバラード、フォードFシリーズは年間100万台近いという超巨大市場だった。トヨタもニッサンもピックアップトラックがあり、さらにV8のフルサイズ化への流れが加速していった。
 ここでホンダは、難しい選択を迫られた。「仮に作るとしても、ホンダにとってのトラックとは何か」、「ウチにはV8はない…」。悩みに悩んで出た結論。それが、SUTだった。SUVとピックアップトラックのクロスオーバー的発想である。シボレーアバランチ、キャデラックエスカレードEXT、さらにスバル・バハ(アウトバックの変形)など、SUTの事例はあった。がそれでもホンダは、最後の最後まで『ホンダしか出来ない、ホンダらしさ』を追い求めていった。

3.5リッターV6エンジンは247馬力、トルク33.9kg-mを発生させる。飛ばした時の爽快感は、スポーツ・ホンダに通じるモノがあるという。

スピードメーターを中央に配置し、独自のデザインを構築しているインテリアには好感が持てる。かなりスポーティな印象だ。

普通のピックアップとはふた味違う走り

 まずは見た目。街中で、とにかく目立つ。直線基調のデザイン風貌は『特殊なメカ』を想像させる。またリアゲート形状の影響から、背が高くデッカイクルマ、に見える。そのリアゲートを開くとベット(荷台)へ。その床がなんと開く。自動車業界初の『イン・ベット・トランク』が出現するのだ。
 リッジライン、そのプラットフォームは、パイロット、アキュラMDX、北米オデッセイで使用されているユニボディを応用している。だが、独特のリアセクションを持つこと等から、シャシー、ボディ各部の重要見直しが行われた。エンジンは255馬力・SOHC3.5リッターV6を搭載、ミッションは5AT。これらパイロットのファミリーから、パワーアップした応用版だ。4輪駆動方式は、パートタイム方式のVTM-4を採用した。また、最大牽引重要は2268kg。ダートでの最大アプローチ角は25度を確保した。
 実際に運転席に着くと、ドアノブも、ACのスイッチも、ドライバーは車内で触れる何もかもがデッカイことに気付く。しかもそれは、クルマ好きの心をくすぐるアルミ素材調のデザインだ。コラムシフトをDレンジにして走行開始。「あー、やっぱりトラックだな」とポツリ。音、振動、視界、その組み合わせがかなりトラックっぽいのだ。ところが、走行速度が50km/hを超えるあたりから、雰囲気が変わってきた。ガッシリとしているが、動きの機敏さ、動きの密度感が上がってきたのだ。コーナリング時も、リアセクションの剛性感とリアサスの動きは、『普通のピックアップトラック』とはふた味は違う手ごたえがある。かなり走れる印象だ。そういう意味では、めちゃめちゃ大きくなく、V8エンジンでもないが、何となくインテリジェンスを感じさせるトラックという印象だ。なるほどホンダ、実にホンダらしいフルサイズピックアップトラックを完成させたものだと唸った。 
 今年9月、もてぎで行われたインディレースの取材にいったのだが、当日ペースカーとしてオレンジのリッジラインがスタートラインに陣取っていた。同日イベントに訪れていたオーナーの中には、このリッジラインを所有し荷台にソファーを置いてイベントを楽しんでいる方々もいたのだ。いま流行の逆輸入車だから、というわけではないが、オンリーワンな1台としてかなりオススメのトラックである。

米国製トラックと比較すると、俄然質感の高さを感じるインテリア。

荷台に、さらにトランクがあるという業界初の試みだった。

直線的な全体のラインと、SUT独自のスタイリングが醸し出す特別感が、このクルマの持ち味だ。ボディサイズは5258×1946×1786mm。

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