更新日:2014.10.27
文/石山英次 写真/古閑章郎
アメリカのクルマが変わってきている。というか正確にはフォード主導の新しい流れが出来つつある。それは排気量を落とし、燃費を良くするという方法論なのだが、だからといって全てが小さくまとまっていないのがうれしい。ボディサイズはそのままに、排気量を下げるがターボを駆使してパワーを補う手法である。エクスプローラーは、そういったダウンサイジングな流れを作るための急先鋒として、我々を十分に驚かせてくれた(本国ではF150にアルミボディを駆使し車重を一段と軽くすることにも徹している)。
世の中には、いろいろな呼び名の環境エンジンが存在するが、フォードが追い求めているコンセプトは、「欧州で主流となっているクリーンディーゼルのトルキーな乗り味と低燃費を、ガソリンエンジンで実現すること」。すなわちターボチャージャー、直噴、可変バルブタイミング機構の3つの技術を統合的にコントロールする、時代に即した「ガソリン直噴+ターボ」のエンジンテクノロジーである。
エコブーストエンジンとは、まさにフォードの技術力を集結した環境エンジンなのだが、高度なエンジン制御技術とターボチャージャーの改良によって、トルクの立ち上がりが遅れるターボラグや過給不足といったこれまでの問題点を解消し、燃費性能の向上と共に出力やフィーリングを制御することに成功したのである。
加えて吸気排気の双方に連続可変バルブタイミング機構(Ti-VCT)を備えることで、幅広い回転域でシリンダーへのガスの吸排気をスムーズに行うことにより、エンジンの効率とパフォーマンスを向上させ、中低回転域でのトルクの向上にもつなげている。
一方で、コモンレール方式の燃料噴射の採用によって、より高圧で微粒化した燃料を直接シリンダー内に噴射することで燃焼効率を向上させている。さらに、直接噴射された燃料の気化潜熱により筒内温度を下げて、排ガスをよりクリーンにすると共にノッキングも低減しているのである。結果、燃焼温度を低めることはパフォーマンスの向上にもつながるという仕組みである。
こうした技術の集大成として生まれた直列4気筒エコブーストエンジンは、2リッターの排気量でボア×ストロークが87.5×83.1ミリ。それにターボの力を加えて、243ps/5500rpmの最高出力と37.3kg-m/3000rpmの最大トルクを発生させる。
単純比較で言えば、旧モデルの4リッターV6をパワー&トルクともに上回り(213ps、35.1kg-m)、現行の3.5リッターV6と比較してもトルクが太く(294ps、35.2kg-m)、しかも1000回転低い3000回転から最大トルクを生み出すという、いかにもターボらしい特性をもつエンジンに仕上がった。
だがそのターボは、誰もがイメージする爆発的なターボバーンというよりは、実際にはNAエンジンのごとく自然なエンジンフィールもたらし、低燃費化にも貢献するのである。
新たなパワーユニットと共に現行エクスプローラーにおける大きな変化は、そのボディにある。それまでのシャシーを個別に備えたフレームボディから、それらを一体化させたモノコックボディへと変わったことで、独立したシャシーを持たない分車高を低くすることができるため、重心高が下がるというメリットをもたらした。同時に軽量化にも繋がった。だからこそ当然燃費も良くなるという理詰めの設計である。
さらにエコブーストモデルは、横置きエンジン+FFシャシーということで、AWDよりは車重が軽く済み(AWD比110kgの軽量化)、意外に大柄なボディを持つも(全長×全幅が5m×2mを超す)、身にまとったモダンなデザインにより、間延びした印象を与えない。加えて余裕あるそのサイズを最大に生かしたことでサードシートを持つことが可能となり、乗車定員7人を実現したことも見逃せない。
すなわち、モノコックボディとすることで車重を軽くし重心を下げて安定感を増し、そこにターボ+ガソリン直噴技術を駆使した最新のテクニカルエンジンを当て込み、さらにAWDを持たずに一段と車重を軽くすることで、ターボパワーを最大限生かすとともに燃費効率を上げたという、まさに志高きSUVこそが、現行エクスプローラー エコブーストモデルとなるのである。
そしてそれは、常に時代の最先端を行く『フォード』だからこそなし得た技術&経緯であり、全米一売れているSUVに搭載したことで本気の度合いを見せつけ、ダウンサイジングを一気に浸透させたのである。
しかしそうはいっても、乗ってつまらなければ意味がない。単なる燃費マシンとしてだけならあえてフォードを選ぶ理由はないし、もっと道具感の強い日本車でもいいわけである。だが。
なるほど、ダウンサイジングはかなりのメリットだった。加速時や高速走行時の走りの質感は想像以上に高く、走り出した瞬間から手放しで喜べる。アメ車と言えば「どうしてもV8、もしくはV6で」という認識があるかもしれないが、乗ればきっちりアメ車しているし、全体の雰囲気や鷹揚な乗り味は「まさにアメリカン」と言えるだろう。だがそれでいて直4ターボで「燃費にもいい」というのだから、まさに精進料理のようなヘルシーさをも備えている。
たしかに濃い味ではない。旧アメ車に感じた重厚感というフィールはまったくない。その逆に軽快さこそが命、みたいなクルマである。だが新たな乗り物、または新感覚なアメリカンSUVと考えれば十分に受け入れられるし、逆に古いアメリカ的思想に固執することの方がバカらしく思えてくるから不思議である(エクスプローラーこそリアルタイムのアメリカを象徴しているわけだし)。
とはいえエクスプローラーは、単なるダウンサイジングSUVに陥っていることはなく、ボディ、サイズ、走り、乗り心地、そのすべてにアメリカンSUVのDNAを感じさせるからこそ、直4エンジンと言えどもあえて乗る価値を見出すのである。
すなわち、エコブーストに乗るということは、アメリカ自動車史に燦然と輝く歴史的名車(革命的存在)に触れる、という機会でもあるのである。
デビューから3年ちょいが経ち、エコブーストエンジンは、本国においてはリンカーンナビゲーターにも搭載されている。そして今まさにマスタングにも搭載される新たなスポーツユニットをもって、第二章が始まるのである。
まさに甲子園球場の目と鼻の先にありと言えるフォード西宮店。高速の出入り口も近く、アクセスも非常に良い。そんな関西きってのフォードディーラーにてエクスプローラーの中古車の動向について聞いてみた。
エクスプローラーに関して言えば、中古車として実際にお買い得なのはV6モデル。しかも価格の高いリミテッドの方だという。つまり、中古車となることで新車からの値落ち率が大きいからこそ、お買い得感も高くなるという理屈である。で、もう一方のXLTのV6になると直4エコブーストとの競合になることが多く、直4への興味が湧き、エコブーストに流れる方が非常に多いという。
「実際にはまだ直4エコブーストのタマ数があまり多くないということもあり、あれば必ず競合するという程度ですが、ですがエコブーストの認知はかなり広まりましたね。直4エコブーストモデルは、この半年間くらいの間に徐々に数が増えてきているのですが、やはり動きがかなり早いです。ただ、正直まだ価格的には高値安定状況でありますから、お買い得感で言えばV6の方が高いかもしれないですね」
直4に関して言えば、ライバル車はじつは新車の直4エコブーストであるというから驚きである。「そのくらいの価格差なら、ちょっと無理して新車を買うのもアリかな」と考えるユーザーが非常に多いということである。
デビュー当初から変更点が少ないのも現行エクスプローラーの特徴であり、逆に言えば新車時から優れているとも言えるわけで、そう言う意味でもエクスプローラーの認定中古車は非常にオススメであり、どの年式のモデルを手に入れても年式ごとの差別化が少ない分満足感も高いのである。
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