このK5ブレイザーにはリフトアップが施されている。足回りで約6インチ、タイヤの外径アップ分を合わせれば、全体で約7.5インチ(19cm弱)ほど車高が高くなっている。当然ながら見た目も乗り味もノーマルとは明らかに異なるので、一瞬『カスタムカー・ショーカー』の方で紹介すべきかな?とも思った。でもやっぱり、こちらのオールドカーの方に入れることにした。何故か? それはこのクルマのセールスポイントが足回りではなく、『K5ブレイザー』という車種そのものにあると考えたからだ。重要なのはあくまでベース車両。名車・K5ブレイザーそのものであり、リフトアップはあくまでオマケ。そういう判断をさせていただいた。
ま、そもそも現在の日本で実動しているK5ブレイザーの大半は大なり小なりカスタムまたはドレスアップされている。とくにこの第2世代に関しては、現役時代は4~6インチのリフトアップが定番だったし、現在の日本でフルノーマルの個体を探す方が難しいだろう。ということで、とりあえずはこの個体を元にK5ブレイザーそのものの魅力をお伝えし、後半の試乗部分で足回りなどのカスタムについても言及してみたいと思う。
車輌の詳細を説明してくれています。
シボレー・ブレイザーは現在に続く『SUV』というカテゴリーの元祖とも言える存在であり、その歴史は古い。初代モデルがデビューしたのは1969年。先行するフォード・ブロンコに対抗するモデルとして登場した。
『先に市場に投入された同形のライバルに対抗して』という経緯や登場した年代を考えると、フォード・マスタングとシボレー・カマロの関係を連想するが、マスタングとカマロの場合と大きく違うのは開発段階でのアプローチ。専用設計のブロンコに対して、ブレイザーはピックアップトラックのC/K5シリーズのプラットフォームを流用して制作されたのである。要するに初代ブレイザーは、ピックアップトラックの荷台部分にシェルを被せてワゴンに仕立て上げたお手軽仕様だったわけだ。
しかし、この開発期間の縮小&コストダウンが目的であったであろう手法は、結果的には正解だった。というのも、ピックアップトラック人気が高い北米では、スタイル的にC/Kシリーズと大差ないブレイザーは瞬く間に市場に受け入れられることになり、ライバルであるブロンコを上回る販売を記録することになったからだ。ちなみに、このブレイザーの成功を見たフォードは、2代目ブロンコではシャシーの専用設計を止め、Fシリーズピックアップをベースにしている。
ところでフルサイズのブレイザーを語る時、頭に『K5』と付けるのは、ベース車両にちなんでのこと。しかし何故ただのブレイザーと呼ばずに頭にわざわざK5と付けるのか? これはフルサイズのブレイザー以外にコンパクトなS-10ブレイザーが存在するから。ただし、S-10ブレイザーの登場は1983年なので、おそらくそれ以前は普通にブレイザーと呼ばれていたのではないかと思う。
また、C/Kシリーズをベースにしているにも関らず、C5ブレイザーと呼ばないのは何故か? これはおそらく先にデビューしたのがK5ベースの4WD車の方で、1970年になって遅れてデビューしたC5ベースの2WD(後輪駆動)よりも圧倒的に販売台数が多かったからではないかと思う。
K5ブレイザーはベースであるC/Kシリーズのモデルチェンジに合わせて1973年に2代目が登場。この2代目は、なんと19年間も生産された超ロングセラーとなった。ちなみにベースであるC/Kピックアップシリーズの方は1988年に新モデルへと移行しているが、人気が高かったブレイザーの方は、旧型のプラットフォームのまま継続生産が続けられた。
3代目のK5ブレイザーが登場したのは1992年。先にC/Kシリーズに採用されていたGMT400プラットホームを基に開発されたが、この3代目ブレイザーが生産されたのは1994年までで、わずか3年という短命に終った。しかし、これは何も人気が出なかったからではない。1995年からロングホイールベースの4枚ドアを加え、新たに『タホ』という名称に変更されたからだ。タホに改名されてから暫くは『タホ・スポーツ』という名で2ドアも販売されていたが、後に2ドアは廃止され、現在のモデルに続くタホの歴史が形成されていったのである。
ところで、初代と2代目の解説では一切触れなかったが、K5ブレイザーにはジミーという兄弟車が存在する。ジミーはGMCディビジョンで販売されていたモデルで、エンブレムなどの外見的な小異を除けば、メカニズム的にはブレイザーと同じクルマである。このジミーの方は一足早く、1992年の時点で『ユーコン』という名前に改名されたので、フルサイズのジミーに3代目は存在しない。
初代のユーコンは3代目K5ブレイザー同様、当初は2ドアモデルのみが生産されていたが、ブレイザーがタホに改名された1995年に4枚ドアが追加された。その後のモデル変遷に関しては、シボレー・タホとGMC・ユーコンは足並みを揃えている。
余談であるが、ブレイザーやジミーの兄貴分とも言えるサバーバンに関しては、長らくシボレー版もGMC版も同じサバーバンという名称で統一されていた(2000年以降、GMC版はユーコン・デナリLXに改名)。同じC/Kシリーズをベースに開発されたSUVであるにも関らず、一方は同一の名称で、もう一方は別の名称で生産&販売していた経緯は不明。もしご存知の方がいらっしゃったら編集部までご一報いただきたい。
話が随分と逸れたが、改めて整理すると、初代ブレイザーは1969年に誕生。第二世代にモデルチェンジしたのが1973年。この第二世代は1991年まで生産された長寿モデルとなるのだが、今回取材したK5ブレイザーは、1990年型。第二世代末期の角目モデルである。
現在の日本の中古車試乗では比較的珍しいディーラーということで、エクステリアのコンディションも良く、エンジンも絶好調という1台。リフトアップされた足回りは、妙なばたつきや不安定さは微塵も感じさせず、上から見下ろす優越感に浸りながら、ゆったりと走ることが可能である。
時代を感じさせるレトロな雰囲気のインパネを眺めながら、アメリカンV8らしい350エンジンをコントロールする歓びは、この時代ならではのものだ。ガチっとしたボディのフィーリングも素晴らしい。
いまだにパーツ入手に苦労することなく、専門ショップが存在しているK5ブレイザーは、シンプルゆえに飽きがこない、永遠の定番モデルといえるだろう。
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