ブレイザーは1973年に第二世代に突入する。その後91年まで生産された長寿モデルだが、同じ第二世代でも、79年モデルまでの丸目は80年モデルからの角目に比べるとクラシック感が強い。
丸目時代のK5ブレイザーと言えば、今ではコレクターズアイテム的なモデルで、日本にもファンが多く、フルレストアされたり、奇跡的に走行距離が少ないコンクールコンディションの個体をたまに見かけるが、この1977年型シボレーK5ブレイザーは、程度良好な普通の中古車。でも逆にそれが凄いというか、とくにレストアしているわけでもないのに、37年も前のモデルが普通に乗れるというのは、頑健なアメリカンSUVならではだ。
社外のサイドステップ(CARRサイドステップ)とタイヤ&ホイールを交換している以外、見た目はほぼオリジナルに近い状態。インテリアもカロッツェリアのヘッドユニットが装着されている以外はオリジナル状態を保っている。塗装やインテリアの各部に年式なりのヤレは確かに見られるが、全体的には綺麗な状態を保っていると言っていいだろう。
日本でよく見られるK5ブレイザーは350ci=5.7リッターのV8が多いが、この車両に搭載されているのは400ci=6.6リッターV8。つまりビッグブロック。数値的なパワーは大したことはないが、非常にトルクフルで、いかにもシボレーのV8らしい味がある。
見た目は古いが、ハーツラジングの手で十分に整備されているので(キャブレターはエーデルブロックに交換されている)、セル一発でエンジンはかかるし、実際に試乗しても調子が良いのがよく分かる。『ドッドッドッド』というアイドリング時の鼓動は、これぞアメリカンV8といった感じのフィーリングだ。
アクセルに軽く足を乗せてるだけで軽やかに加速する感覚は大排気量V8ならではで、三角窓を開けて右手を軽く細身のステアリングの添え、左腕を窓枠にかけて流せば、気分は完全にアメリカ西海岸といった感じ(笑)。
チャーミングな丸目ヘッドライトと角張ったボディ、それにオシャレな色使いのツートンのボディカラーが絶妙にマッチし、クラシカルな雰囲気の中にも洗練されたデザイン性を感じさせる。ボディ自体は直線で描いたようなシンプルさが魅力。それと各部の細かなキズは、このクルマのこれまでの歴史を物語り、いい味になっていると思う。
洗練とはかけ離れた生々しいV8サウンドがウリの6.6リッターV8。この時代のエンジンに触れてしまうと、現代のV8エンジンになんら魅力を感じなくなってしまう恐れがある(笑)。それほど魅力的。まるで生き物のようだ。
細身のステアリングや6連のメーターパネルなど、往年の雰囲気を残すも、全体的にはシンプルなインテリア。こういった時代のものに共通の「温かみ」みたいな雰囲気が充満している。
K5ブレイザーは、乗用車指向が強くなった現代のタホやサバーバンとは、乗り味やキャラクターがまったく違う。ピックアップトラックベースなので当然と言えば当然かもしれないが、足回りは意外に硬めだ。古いアメ車とはいっても、同年式のセダンのようなフワフワとした乗り心地ではない。
決してスピードを出して走るようなキャラクターのクルマじゃないけど、その気になればグングンと加速することもできるので、高速道路などでもストレスは一切感じないだろう。このエンジンに組み合わされる3速ATだが、街中を走る程度ではまったく気にならず、高速道路でも100キロ/hレベルまでは意外にも気にならないし問題ない。
ただし、そこは35年も前の、ある意味クラシックカーに属するクルマなので、動力性能云々に関係なく、急加速や急減速など、乱暴な運転はしない方が良い。古いからといって必要以上に気を使う必要もないが、頭の隅に常に「旧車に乗っている」と意識することがこういった古いモデルと末永く付合うコツだ。
ちなみにこの時代のK5ブレイザーは、ハードシェルを外すことが出来る(75年モデルまでは、フロントまでフルオープンにすることも可能で、それゆえに『オープン・ユーティリティ』などとも呼ばれた)が、外すのも装着するのも大変なので、余程のことがない限りシェルは外さない方が良いと思う。
往年のアメ車がもたらすまるでソファーのようなかけ心地のモケットシート。
こういった機能も当時のまま使用することが可能である。ウッドとモケットに包まれた古き良き時代のアメリカを体感できる。
副変速機のトランスファースイッチはフロアレバーになっている。細身の華奢なレバーが昔のアメ車ならでは。
真横から見ると分かるが、リア部分のキャノピーを取り外すことが可能である。つまり、トラックとしての荷台部分を露出することができるのだ。といってもリアシートなどがあるから、リアだけオープントラックみたいな感じになるのだが。
まずは価格である。普通に調子の良いK5ブレイザーが228万円。これは正直安いと思う。また、1ナンバー取得済みで、しかも5人乗りのままで登録されているというのも好印象。6.6リッターV8を普通に3ナンバーで乗ると、税金は11万1,000円。さらに「自動車税制のグリーン化」という悪法のおかげで、新車新規登録から13年を超えた車両は自動車税10%増しとなる。
しかし、これが1ナンバー(トラック登録)になると、1万6,000円(最大積載量2トン超3トン以下)でOKに。1ナンバーにすることで、車検が1年ごとになってしまったり、ETC割引が不利になったりするデメリットはもちろんあるのだが、ランニングコストをトータルで比較すれば、3ナンバーよりも1が絶対にお得。というか、こういった旧車は1年ごとにプロショップに見てもらう方が安心だし、車検ごとにきちんとプロにチェックしてもらっていれば、あとはエンジンオイル交換くらいであまり気を遣う必要もなくなる。
手軽に古き善きアメリカを味わえる存在で、しかも普通のクラシックカーと違って、気兼ねなく日常の道具としても使える。それでいて車両本体価格は国産の2リッターミニバンと同程度。さらに1ナンバーで維持費も安いとなれば、めちゃめちゃお得だと思う。
噂では、フォードはブロンコを復活させるというし、この先GMもブレイザー復活、なんてこともあるかもしれない。だからこそ、こういったクラシカルな本物は、シッカリと受け継がれて行かなければならないのである。
リアのウインドーはハッチにあるレギュレーターで開閉が可能になっている。
こちらがそのレギュレーター。ロック機能もついている。
リアハッチを開ければ広大な荷室が現れる。5人乗りなので、リアにスペースを作ることが可能なのだ。
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>> K5ブレイザーとは? を見る
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES