更新日:2015.08.04
文/椙内洋輔 写真/フォード、FCA、ゼネラル・モーターズ
最新マッスルカーの過激なパワー競争とは、相手よりも先んじることを目的としたある種のゲーム。昔もそうだったし、今も変わらず同じ流れを汲んでいる。
ちなみに余談だがコルベットやバイパーはスポーツカーであって、マッスルではない。マッスルの醍醐味とは、箱型ボディがスポーツカーをも凌駕する動力性能を持っていることに尽きる。
最初に狼煙を上げたのは、フォードシェルビーGT500だった。2007年に500hpで登場し、2011年には540hpのV8スーパーチャージャーエンジンを搭載したモンスターマシンに。翌年には550hpにパワーアップ。この時点でもはや敵なしの勢いだったが、じつはカマロは虎視眈々と狙っていた。ZL1のデビュー時期を。
6.2リッターV8スーパーチャージャーエンジン搭載で580hpのハイアウトプット。しかも当時のマスタングよりもシャシー性能が格段に優れていただけに踏める580hpを標榜するつもりだった。だが…。
フォードは裏で、カマロの出方を伺っていた。しかもその時点ですでにZL1用の対策を行っており、次なるモデルがちゃんと用意されていたのである。
2012年にデビューしたカマロZL1。しかし翌年満を持して登場したシェルビーGT500は、5.8リッターV8スーパーチャージドエンジンで662hpを発生させた。一気に600hpの壁越え、しかも当時のコルベットZR1やバイパーをも越えて世代ナンバーワンの座に再び君臨したのである。
2013~2014年のチャンピオンだったシェルビーGT500がモデルチェンジにより消滅。で、2015年にチャレンジャーヘルキャットの登場である。
6.2リッターV8スーパーチャージャーにより700hp越えのナンバーワンの座に君臨。というか、有史以来の歴代ナンバーワンマシン。他を圧倒する狂気のパワーは2016年もラインナップに名を連ねるというからまだまだ入手可能なだけに絶対に手に入れるべき。
ということで、ヘルキャットの凄みを肌で感じるとともに、707hpを越えるマシンが再び誕生する可能性があるということに期待せずにはいられない。
またまた余談だが、2014年まで存在したフォードシェルビーGT500の後継モデルは、2016シェルビーGT350と言われているが、V8NAエンジン搭載で500hp超のアウトプットに制限されている。これはひょっとしてパワーウォーズから先に抜け出した、とも受け取れるが、果たしてどうか? 一部ではこの後に「800hpのシェルビーGT500が登場するのでは?」とも囁かれているのだが…。
これまで時代の先端を突っ走ってきたフォードだけに、ヘルキャットの存在を黙って見過ごすわけには行かないような気もするが。一方でエコブーストを筆頭にダウンサイジング化を先駆けて行っているフォードでもあって、無謀な競争から足を洗ったのかもしれないし…。
ところで、こういった競争で常に損な役割を演じるのがカマロである(笑)。いつも後出しじゃんけん。しかも圧倒的な爆発力がないだけに、地味な状態で終わってしまう。モノは格段に良いのに常にマスタングの動向を見て動くためにインパクトに欠ける。しかも搭載されるエンジンが常にコルベットのディチューン版。そういう意味でもマスタングやチャレンジャーに見劣りしてしまうのは本場アメリカンだけはなく、日本人も同じである。
ということで、最新マッスルのパワー競争とは、ヘルキャットを越えるマシンがいつ出るのか? ということに尽きる。その筆頭はマスタングになると予想されるが、どうだろう? あと2年も経てばハッキリするはずである。なお、ヘルキャット繋がりで言えば、707hpエンジンを搭載したグラチェロSRTとラムSRTトラックがデビューすると言われている。もしそれがホントなら、FCAの暴挙(笑)に拍手を送りたい!
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