TEST RIDE

[試乗記]

「扱いやすく、速い」これこそがH1の真実

ハマー H1

HUMMER H1

ハマーH1についての真実…、それは地球上で唯一ファン・トゥ・ドライブを本気で楽しむことができるSUVである。

更新日:2010.04.19

文/編集部 写真/編集部

取材協力/ハマージャパン TEL 03-5783-5507 [ホームページ]

躊躇する気持ちも良くわかる…

 この日本においてハマーH1ほど世間に「誤解」されているクルマはそうないだろう。私はH1の本当の実力をあまりにも知らな過ぎた…。そんなことを実感させられる衝撃的な一日だった。自動車系編集者となって3年。これまで色んな試乗会に参加させていただき、様々な驚きや発見があったが、今回の取材ほど驚愕と興奮を味わったことはなかった。H1がこれほどまでに運転しやすく、小回りが効き、そしてスポーツカーのように俊敏な動きを魅せるクルマだったとは! 
 「H1は凄い!」「別格だ!」といった話は多くの関係者から何度も聞かされてきた。軍用車両をそのまま民間人向けに仕立てたという成り立ちや、スペック、車両価格を見ればH1がタダ者ではない存在であることは明らかだし、アメリカ生まれのクルマとして、いや世界でも最高峰のクルマのひとつとして敬意を抱いていたのは事実だ。しかし、2.2メートルに届こうかという全幅と、3.7トン近い重量の数値、そして圧倒的な存在感を放つ外観から受けるイメージが過った先入観を世間に植え付けていることもまた事実だろう。
 H1のことを考えるたびに、胸は高鳴り脳内にアドレナリンが吹き出す快感を覚えはするが、最後には絶望的な諦めモードに陥ってしまう…。「H1には憧れるが、狭い日本じゃ持て余すに違いない。仮に購入資金を調達できても所有するのは無理だろう…」。そんな人はきっと多いと思うが、私はこの場を借りて断言したい。「H1は乗りやすいクルマである」と。

大幅にパワーアップされたエンジンに伴い、キノコ型のエアインテークは角形デザインに変更され空気の吸入量を増加。ホイールには一部ブラック塗装が施された。ランフラット・タイヤの空気圧は走行中にも変更可能で、06年型からパイプは見えない位置に移動されている。

従来型と比較すればかなり乗用車的となったインテリア。ミッションは4ATから5ATに変更。シフトレバーとトランスファーレバーの位置が入れ替わり、操作性を向上させている。

取り回しの良さも想像以上

 東京都品川区にあるハマージャパン本社にはH1のデモカーが仁王立ちするように置かれている。同時にそこは地下の駐車場への出入り口でもあり、H1一台がかろうじて通れるスペースがなんとか確保されているのだが、車両の入れ替え作業の一部始終を目の当たりにし、まずはそのスムーズさに驚かされたのがはじまりだった。いかに扱い慣れたクルマだといえ、H1の巨体をごく普通の乗用車の車庫入れをするがごとく運転する姿に唖然としたのだが、おそらく誰が見ても「巨体のわりには小回りが効きそうだ」という印象を受けるに違いない場面だった。H1のような大柄のクルマを扱うには決して広いとは言えない洞くつのような通路にピタリと車体を納めることができるのは、ボディの四隅の感覚を掴みやすい見切りの良さと、微妙な修正を思いのままに可能とするコントロール性の高さがあってこそである。時には狭く荒れ果てた市街地、そして時には深いジャングルでの運転も日常的な戦場では、耐久性や耐候性の高さと共に、取り回し性についても並外れて高いレベルが求められるのである。

助手席側に物置きスペースが付いたり、スイッチ類が使いやすいように配置されるようになった。遮音材が増えて室内の静粛性は高まっている。

荷室もフルトリム化され、実用性の向上も図っている。

06年モデルからいすゞ製6.6リッターエンジンに

 ハマーH1は路上でミズスマシのように軽快な動きを魅せた! などと書いたところで「そんなバカな」と思われるかも知れないが、しかしそれでも断言させていただく。H1は地球上で唯一ファン・トゥ・ドライブを本気で楽しむことができるSUVである。まずは怒濤の質量感を伴った加速力。これはH1でしか絶対に味わえない世界だ。V8ディーゼルターボエンジンは06年モデルからGM製の6.5リッターではなくなり、いすゞ製の6.6リッターにチェンジしたが、それにより従来型に比べて1.5倍ものパワーアップ(約300馬力)を果たした。加速中はまるでマシンガンをブチ放っているかのような独特のバイブレーションが屈強なる車体全体から伝わってくる。この感覚はクルマ好きなら絶対に病みつきになる類いのもので、ワイルドの極みで実に爽快だ。パーシャルスロットル領域ではディーゼルエンジンであることをさほど意識させなずに粛々と回る二面性を持ち合わせていることも報告しておく。
 ハマージャパンの担当者は「06年型は完全に別モノと化した」というが、従来型のエンジンを積んだモデルでも怒濤の迫力を伴った地響きのような加速感は十二分に味わうことができた。たしかに比較すれば06年モデルの凄まじさが圧倒するものの、それは貯金を2億円持つ人が1億円を少なく感じるようなもので、正直どちらも十分以上ですよという感じであった。

前輪の切れ角が大きいため、その巨体からは信じられないほどの取り回し性を持つH1。「これは絶対に曲がり切れない!」と思えるような都内の狭い路地や交差点でも難なく曲がってしまう。ヘタな小型車よりも小回りが効く!

コーナリングはオン・ザ・レール!

 コーナリングも圧巻だった。3.7トンもの物体がそれなりの速度を維持したまま、ややキツ目のコーナーに突入していく!などと文字にするだけで冷や汗が滴り落ちてくるが、H1は過度なロールを許すこともなく、そして一車線分の枠から寸分たりともハミ出すこともなく文字通りオン・ザ・レールでラインをトレースしてくれた。その瞬間、ドライバーは2.2mという全幅のことなどすっかり忘れ、「このまま峠に行きたい!」という願望を抱かずにはいられないだろう。
 トドメの圧巻はブレーキ。これまで何度となく「アメリカの交通事情に合わせてセッティングされた」フルサイズSUVでヒヤリとさせられてきた身からすれば、H1のブレーキは革命的なまでによく効いて涙が出る思いだ。ドライブシャフトとデフの結合部に設置されたインボード・ブレーキには、凄まじい動力性能と途方もない重量を締め殺して余りあるポテンシャルを感じさせる。もちろんメンテナンスには気を使うだろうが、このブレーキがあれば自身を持って攻。
 百聞は一見にしかず。H1が気になるが一抹の不安が、という人は絶対に試乗するべきである。「男はみんなH1に乗りたいはず」という言葉の意味が深く理解できた一日だった。

エンジンがGM製からいすゞ製に変わったことでエンジンルーム内のスペースを向上させる必要が生じたため、2インチのボディリフトアップが施されている。

06年モデルから大場なマイナーチェンジを受けたが、外観上の目立つ識別点はすくない。ラジエターグリルが格子状から」ダイヤモンド型に変更されている。

水深30インチまで渡航を可能とするため、排気管の取り回しは工夫されている。今回のマイナーチェンジでは出口付近の形状に若干変更されている。

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