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今もダントツ人気のアメリカンSUV vol.3

旧キャデラック エスカレード (CADILLAC ESCALADE)

今や200万円代から購入可能という現実

現行エスカレードや先代ナビゲーターに次ぐ人気を誇るSUVが、旧エスカレードである。いわゆる人気御三家SUVと言われている。旧エスカレードの豊富なラインナップと今や200万円台からある物件に、多くのアメ車ファンが群がっているのである。

更新日:2013.01.21

文/石山英次 写真/古閑章郎

2代目はプレミアムSUVの先駆けモデル

 「エスカレードと言えば現行型」というのは間違いないし、現行型の素晴らしさはもはやアメ車随一といえる領域にまで到達したと言っても過言ではなく、さらに現行型においては、中古車物件においても動きが多数あり、いわゆるダントツ1位の人気SUVであることは以前のエントリーで述べた通りである。

 だがその現行型の中古車は、中古車でありながらもいまだ400万円台後半から500万台を占める物件が多く、やはりおいそれと手を出せる金額のものではない(それでも人気が高いのだからさらにスゴイ!)。

 というようなことからも、旧型エスカレードがまだまだ市場を賑わせているのは事実である。今や200万円台から物件が豊富に存在していることが如実に物語っている。

 旧エスカレードは2002年に登場。2007年に登場した現行モデルと切り替わるまでの5年間生産された。この時代のエスカレードは、いわゆるブルガリデザインのアナログ時計という、アメ車好きなら誰もが「あ〜アレね」と分かるアイコンを保持していたのが特徴である。

 初代エスカレードから大幅刷新された2代目は、押し出しの強いマスクに専用チューニングを受けた6リッターV8エンジンを搭載した、いわゆるプレミアムSUVの先駆けである。さらにロングボディのESVやベッドを備えたEXTもラインナップに追加され、キャデラックワールドの一時代を築いた名車でもある。

2004年に登場したESVモデル。いわゆるロングモデルである。ベースとなるのはサバーバン。一説にはXLデナリベースとも言われている。下記のEXTと合わせてエスカレードフルラインナップの完成である。

アメリカ人はどうしてもトラックが好きらしい。キャデラックSUVでも作ってしまうほどだから。このEXT誕生の背景にはリンカーンナビゲーター顔のトラック・ブラックウッドに対抗するために作られたと言われている。ベースとなるのはアバランチである。

搭載されるエンジンは6リッターV8OHV。初期型は345ps、後期型は350psを発生させる。最大トルクは52.3kg-m/4000rpmだ。

ライバル・ナビゲーターとは何もかもが違う

 これまた前エントリーで述べた同年代のリンカーンナビゲーターと比較すると、何から何まで違うのが非常に面白い。

 例えばインテリア。クールビューティといわれるほど洗練されたナビゲーターと比較してエスカレードのインテリアはかなりバタ臭い。ブルガリ時計が存在感を発揮しているかもしれないが、旧アメリカ的印象は拭えない。

 例えばエンジン。ナビゲーターに搭載されるエンジンは5.4リッターV8ツインカム。ヘッドもアルミ製である。このエンジンは、いわゆるトラック的なところがまったくなく、スムーズさが身上。排気音は別として、エンジンサウンドもそれほど特徴的ではない。ある意味良くも悪くもフォードテイストに仕上がっている。

 ちなみにナビゲーターには、パッセンジャーカーに使われるようなラック&ピニオンのステアリングや4輪独立懸架のサスペンションシステムが与えられる。これはまさに乗用車的で、ハンドルを切った感覚や乗り心地がとてもしなやかで親しみやすい。走行中の段差のこなしも滑らかで、見た目ほど大きなクルマに乗っている気がしない。この手のクルマに初めて乗る人もすぐに馴染むだろう。

 一方エスカレードは、それに比べると前時代的なパワートレーンを有する。6リッターOHVエンジンだ。このエンジンは低速からトルクが豊富なアメリカンV8を代表するエンジンであり、ガツンとアクセルを踏んだときのパワーフィールは迫力満点。ドーンとボンネットを持ち上げて加速する姿は、 大排気量のトラックに近い。さすがにこの時ばかりは、2.5tの車重も軽く感じられるほどである。
 
 またナビゲーターにはエアサスが装着されるリアサスは、エスカレードにはリジッドが装備。ただ、エスカレードも侮れず、03年モデルからセビルやドゥビルで知られるスタビリトラックが採用され、クルマを制御するコンピューター系に手が加えられている。ナビゲーターにも同様のアドバンスドトラックというシステムが搭載されるが、精度の高さはエスカレードが上かもしれない。

 というように、当時のライバルと目されるナビゲーターとは似ても似つかぬ装備一式であり、その違いは明白である。
 だからこそ、両者を求めるオーナー像にも多分に違いがあり、たとえば、現代的な性能を有するベンツとかBMWとかに慣れた(憧れた)人ならナビゲーターの方が入りやすいだろうし、長年アメ車に共感してきた人なら、断然エスカレードが好き、ということになるのだろう(現在の市場人気は圧倒的にナビゲーターではある)。

当時キャデラックがパートナーとして選んだのがブルガリだった。キャデラックといえば、それまではどちらかというとオヤジの乗る高級セダンという印象が強かったが、そのイメージをガラリと変えるために若い世代にもアピールできて、なおかつステータス性、クオリティともに信頼のおけるラグジュアリーブランドと手を組むことが新戦略の要になると考えたからである。

シートはもちろん本革で、キャデラックらしい高級感のあるもの。革の色は明るいアイボリーで、センターコンソールやドアトリム、ステアリングホイールなどにウッドパネルが配され、キャデラックらしい配色になっている。

シートレイアウトは3列で、スタンダードは2/3/3の8人乗りだが、2列目がセパレートになった7人乗りモデルも選べた。セカンドシートは折り畳み式、サードシートは脱着式になっている。

個体のコンディション重視で快適エスカレードライフを

 この年代(第二世代)のエスカレードは、ディーラー車だったこともあり、D車系中古車を手に入れるのであれば、かなり優良物件が多い。一方で、並行ものだから良くないということはまったくなく、やはり個体のコンディション次第ということになるのだろう(ESVやEXTは並行のみ)。
 というもの、カスタムベースになっていた個体が数多く、そうした個体のコンディション把握は難しいだけに、それさえ抑えればかなり楽しいエスカレードライフが送れるに違いない。

 というのも、この世代のエスカレードのベースはタホであり、ESVがサバーバンであり、EXTがアバランチということになるから、そういった点でのトラブルらしき難点はまったくないからである。
 強いてあげれば、ミッションくらいか。ミッションが弱いということではなく、6リッターV8、350psということを鑑みて、年式や距離に応じたミッションチェックは必要だと思う。

 リーフ&クレストが誇らしげな押し出し感の強いフロントマスク、そして何より現行モデルほど洗練されていない、いい意味での緩やかさが魅力の旧エスカレード。いまだ色褪せない存在感とバリュー、そして選択肢の豊富なアフターパーツなど、中古市場における2代目エスカレードの優位性はまだまだ想像以上に高いのである。

エスカレードは全長5100mm、全幅2040mm、全高1950mmという堂々たるフルサイズボディのSUVで、日本の狭い道では少々大きすぎるといったきらいはあるが、スクエアなボディデザインを持っていることもあり、実際に運転してみると車両感覚はつかみやすく、思ったよりも運転は楽である。

サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアが5リンク式リジッドだが、そこに電子制御サスペンション、アンチスピンデバイスのスタビリトラックが搭載されている。さらにAWDはフルタイム方式で、フロントに38%、リアに62%というFRよりの駆動力配分になっている。

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