更新日:2016.04.18
文/編集部 写真/古閑章郎
その昔、われわれが東名を走る最大の理由が富士のアメフェス取材だった。それ以外では名古屋大阪遠征に出る以外、ほとんど走ることはなかったのである。
だが、あるときから毎週のように東名を走って目指した道がありました。そう、箱根の有料道路。カーグラフィックTVに影響されてじゃないが、アメ車を借り出してターンパイクに向かう。「アメ車で箱根? アホか」みたいなことは結構言われましたがね。
「アメ車は直線をのんびり走る」みたいな風潮というか、定説みたいなものがあって、曲がりくねった道を走ることを嫌うというか、「意味なし」と断罪していた方々が多くいたのです。
ところが。こちらはアメ車素人(もう15年以上も前の話ですが…)。どちらかというと欧州小型車が大好物で、曲がりくねった道を走らないとクルマの良さ悪さが分からない、なんて素人評論家になりきってましたから、アメ車専門誌に配属されて一番最初に借りた広報車・イエローのマスタングコブラでも行きました、箱根へ。
それまでの個人的なアメ車評価といえば、「ATでダラダラ走る」という上記の誰かさんと同じようなもの。実際には評論家気取りで自己満足のために箱根に行っただけであって、クルマ自体の性能には本当は何ら興味がなかったのだが…。
意外とビックリしたのがMTでした。そうマニュアルミッション。コブラには5速MTが標準で、シフトノブがカクっとドライバー方向に曲がっている(雰囲気がカッコいい)。
クラッチは多少重いけど、国産GTカーに乗っていれば全然問題なく、シフトフィールは大味だけど、ゲートが明確で非常に楽しい。
正直、「こんなにいいのに、なんでいつも評価が低いのか?」って驚いたほど良かった。それまでに体験した、いろいろなアメ車のぼやけたATとは異なり、エンジンサウンドと自分の右手が一体となって、アメリカンV8が非常にレーシーに感じられて面白かった(当時は出版社の経費でガソリン代払ってましたからガンガン踏み込んで。笑)。
何よりMTは、スピードを問わず楽しい。そしてこれこそが新しいアメ車の楽しみ方って感じがして、MTの良さをもっとアピールしたいと思ったことがまだ鮮明な記憶として残っている。
個人的には、所有したクルマすべてがMT車だっただけに、MTアレルギーがまったくないということもあったのでしょうが。
だからこそ、スポーティなアメ車をみるといつも思うのがMTの存在。
5代目カマロのMTを取材した際、編集部の評価が見事に割れました。「これならATで十分」と「それでもMTのが面白い」と。
たしかにパワーやトルクの最大量がもはやスーパースポーツの領域に迫るカマロやコルベットなら、アクセルひと踏みで、ATであってもかなりの俊足ぶりを発揮するでしょうし、仮にエスカレードやリンカーンナビゲーターだって、ガソリン気にせずアクセルバンバン踏めば、それこそ大排気量+抜群の低速トルクの恩恵で格段に速い。
その点MTは、アクセルとクラッチとシフトを同時に操作するために、ダラダラ運転をしたい方には面倒かもしれない…。
だがあえて提案したい、MTはもっと面白いと。だからかどうかは不明だが、アメリカンマッスルカーの取材車両は未だに多くがMTモデルである。アメ車を売る側の方々も分かっているのだろうか。ちなみにアメ車のMTは、だらだら運転も得意です!
シェルビーGT500にSMSチャレンジャー570にコルベットZR1。どれも抜群に速いのは間違いないが、ゆっくり走っても楽しく、それは右手で操るその特別な感覚がまさしくレーシングカーのそれであり、エンジンサウンドを自らの意思でコントロールする面白さが、フェラーリV8を操る面白さと、少なくとも同類のものであるからかもしれない。それくらい自己満足できるのだ(バイパーはまんまレーシングカーだったし)。
それに近々に取材したMTのカマロ1LEは、めちゃめちゃ乗りやすいだけでなく、速さもさることながら、平日の一般道を通ってのろのろ走りながら車両返却に行ったが、それをもぜんぜん苦にならなかったほど熟成されていたし。
最終的には個人の志向によるのだろうが、アメ車+MTという組み合わせを、とくに現代的な車両を購入するならあえてオススメしたいと真剣に考えている。
AT全盛であり、世界中の各メーカーからMTモデルがなくなっている今、スピードを問わず悦に浸れるMTの感覚は、いまやアメ車の専売特許なのである。
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