更新日:2014.05.02
文/石山英次 写真/古閑章郎
取材車輌は、2009年型の「THE BLACK」という限定モデル。走行距離は3万9000キロ弱のコンバーチブルである。この「THE BLACK」は、マスタング生誕45周年を記念して当時発売された限定モデルであり、内外装オールブラックで統一され、フードスクープやサイドスクープの他、専用アルミが装備される等、オリジナルでは手に入らない迫力の外観が演出されている。
この2009年型というのは、2006年にデビューした初期型の最終年式にあたり、2010年にモデルチェンジを行い生まれ変わってしまう直前のモデルということで、個人的にはイチオシの年式。すなわち、旧車テイストを持ったマスタングが欲しければ、2006年から2009年の初期モデルがオススメである。
説明しよう。2006年に登場した初期型マスタングは、原点回帰というキャッチフレーズとともに上陸し、われわれを驚かせた。当時搭載されていたエンジンは2種類あり、4リッターV6SOHCと4.6リッターV8SOHC。これに組み合わされるミッションは5速ATである。
・4.0リッターV6SOHC:213ps/5300rpm、33.1kg-m/3500rpm
・4.6リッターV8SOHC:304ps/5750rpm、44.2kg-m/4500rpm
全長×全幅×全高=4765×1880×1385ミリ、ホイールベース=2720ミリのサイズのボディに、逆スラントノーズやC字型サイドスクープ、3連リアコンビネーションランプといった60年代の意匠をこともなげに再現しており、インテリアも3本スポークステアリングホイールや左右対称のインパネでクラシカルな雰囲気を盛り上げる。極めつけのT型のATセレクターも初代を受け継ぐデザインだ。
これらデザインとともに、驚くべきはその運転感覚である。
搭載されるエンジンは、4.6リッターV8。304ps、最大トルク44.2kg-mを発生させるから、現代の交通事情においてもパワフルな性能を味わうことが可能である。極めつけはV8サウンドであり、サウンドチューニングが行われただけあってか、濃密なオールドテイストなサウンドが響き渡る。コンバーチブルだったため、なおのこと刺激的だった。
インテリアは、3本スポークステアリングホイールや左右対称のインパネ、さらにT字型のATセレクターでクラシカルな雰囲気を盛り上げる。作りの精度はそれほど高くはないが、アメ車を知っている方にとっては、非常に懐かしい雰囲気を醸し出していると気づくはずである。
メーター周りの意匠にも凝っており、古典的なメーターのレタリングが採用されている。またクラシカルな6連メーターは、125色のライティングが可能であり(マイカラーイルミネーションという)、気分に応じたコクピットの演出ができる。
コンバーチブルは真横からのシルエットが非常に美しく、実際に乗っても風とエンジンサウンドを感じながらのドライブは格別である。
現行初期のマスタングに乗るとほんとに「上手いな~」って思う。2006年以降のクルマに乗っているにもかかわらず、まるで古い時代の旧車に乗っているような感覚に襲われる。それって恐らく往年のマスタング(1964年にデビューした初代型)に似せたスタイルと相まって、あえてそう設えているのだろうけど、その上手さにひたすら感動してしまう。
この型のマスタングは、デザインだけではなく、走りのテイストも濃厚に、あの頃のマスタングの雰囲気を再現しているのだ。外観や内装のイメージを往年のモデルに近づけるのは簡単だ、と言ってはデザイナーに失礼かもしれないが、それでも何となく上手く出来そうな感じではある。だが、エンジンや走りの雰囲気も同じように近づけるのは、情熱以上のセンスあっての仕事だろうと思う。
細身で大径の3本スポークステアリングや古典的なメーターのレタリングといったディテールには、他では味わえない魅力があふれている。エンジンの適度に重く、でも心地良い吹け上がりの感じといい、濃厚&濃密なサウンドといい、またステアリングの軽く、繊細な手応えといい…、これらが一体となって、あの時代の “マスタング” そのものを連想させるのである。
正直、ここに、欧州高性能車に敵う余地はないかもしれない。人によっては「時代遅れで古くさい」というかもしれない。だが、われわれアメ車好きは、この雰囲気がたまらなく好きなのだ。
コンバーチブルは電動式の幌を採用している。開閉は、頭上の開閉レバーを外し、センターコンソール頭上にあるスイッチを押し続けることで行う。
「THE BLACK」というその名の通りブラックのコンバーチブル・トップとブラック基調の内装でコーディネートされている。シートは、本革スポーツバケットシートが装備されており、良好な雰囲気とともに、高いホールド性がもたらされている。
エンジンカバーやクロームエグゾーストパイプフィニッシャーの他に専用アルミホイールが特別装備される。このホイール、ブラックのボディカラーに良くマッチし、コンバーチブルだと一層似合っている。
流れに応じた速度で街中を走っているだけで気持ちいい。そんなクルマである。だからこそ、高速道路で140キロとかを出すようなドライビングは似合わないし、実際に走っても楽しくはないだろう(当然走れなくはないが)。
アクセルペダルに軽く足をのせ、親指の付け根にちょっと力を入れるだけで4.6リッターV8は、世田谷の街の流れをリードする。しかもアイドリング回転付近からすでにトルクはブ厚いから、発進加速を繰り返しても苦にならない。ただ、ボディは過減速に対して前後にふんわり揺れるから(笑)、まさしくちょっと古いクルマに乗っているようで、自然に笑みがこぼれてしまう。
このクルマがデビューした当時、キャデラックはひたすらニュルを走りラップタイムの速さをアピールしていた。クライスラーは300Cで、ユーロアメリカン的な硬質な走りのキャラを全面的にアピールしていた時代である。そんな時代にあえて “60年代” の走りの雰囲気までをも演出してしまうマスタングがたまらなく好きである。
この世界観は、いまの時代にあっては逆に個性的だし新鮮だと思う。やわらかい乗り心地、ワイルドなエンジン音など、このクルマでしか味わえない濃い “キャラ” で満たされている。V8エンジンを搭載しているからといって “プレミアム” とは言えないかもしれない。だが、間違いなく “ファン” である。
ちなみに、2010年以降のマスタングは、こうした往年の旧車キャラを立派に卒業し、年々進化を重ねながら2014年まで生産され続けている。とはいえ、その身にまとうアメ車濃度は、この2009年までのモノよりは劣るものの、他車と比較すれば十分に濃く、アメ車としての責務をかなり忠実にまっとうしてくれるので心配はいらない。
ただ、運転感覚も含め、オールドテイストに憧れを抱く者であれば、2009年までの初期型がきっとオススメであると思う。
フロントフード上のスクープと相まってリアウイングの存在は、ボディ全体のバランスを良く見せる上でも重要なアイテムとして、役割を果たしている。
サイドスクープも同様に前後バランスを重視した上で、バランス良く収められている。全体的に程よい特別感が、限定車としての魅力を高めている。
このクルマの一番楽しい走りは、速度80キロ以内くらいの速度で軽〜く流しているシチュエーション。左腕はお決まりのポーズで、右手一本での片手運転。ふんわりした独特の乗り味と濃厚なエンジンの存在感を感じながら走っていると、気持ちよ良すぎて時を忘れてしまう。ファーストカーでもありだし、セカンドカーとしてならなお嬉しい。
都内世田谷区に位置するフォード成城は、世田谷通り沿いの交通の流れの多い場所に立地され、世田谷区、目黒区、渋谷区、さらに川崎市等の横浜の一部を網羅する。土地柄か、クルマ好きが多く、さらに趣味としてのクルマ選びやセカンドカーとしてのクルマ選びをする方も多数いるということで、マスタングの販売率はかなり高いという。
「世田谷という地域的なものもあるのかもしれませんが、アメリカ車の象徴ということで、マスタングを選ぶ方が多いですね。そういった方は決まってV8モデルを選びます」とは兼田マネージャー。
往年のマスタングに憧れを持っており、そうした夢の実現ではないが、思い入れを果たす方は積極的にV8モデルを選び楽しんでいるという。しかも2006年からのマスタングは、もちろん経年変化は出るものの、まったく手がかからないと言っていいから、誰もが十二分に楽しむことが可能である。
「認定中古車での需要も多いですね、マスタングは。正直、右から左へって状況で売れて行きますね(笑)」
2015年型がすでに発表されており、新たなデザインのもとデビューすることが決まっている。現行型を手に入れるなら、新車かもはや中古車ベースでしか入手不可能ということで、認定中古車で手に入れる価値は非常に高いのである。
「土地柄、マスタングの需要も多く、その中でもV8ユーザーの割合がかなり多い」と兼田マネージャーが語ってくれた。「輸入車としての不安を取り除く意味でも認定中古車の存在意義は高いと思います」とも。
質の高いアフターフォローを実現するサービス工場も併設されている。
フォード成城店
住所:東京都世田谷区成城3-20-6
電話番号:03-3417-6491
営業時間:10時~19時
サービス受付時間:10時~17時
定休日:火曜日
創業30年以上の歴史を誇るフォード成城店。住宅地近辺に位置するディーラーとして長年世田谷区のフォード好きに支持されて続けている。
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