更新日:2014.03.27
文/石山英次 写真/古閑章郎
このクルマがデビューした2011年当時、あまりに変貌した姿カタチに賛否両論あったことを記憶する。筆者も、正直言って慣れるまでに時間がかかったクチである。
だが、しばらくして試乗してみると、「なるほどね…」と思わずにはいられなかった。前モデルのような骨太で、後ろから蹴られるようなダッシュの感覚はなくなったが、それでも品質感に溢れ、手に入れる喜びが格段に増えていたからである。
その後決定的だったのだが、JAIAでの試乗であった。年に一度行われるジャーナリスト向けの外車メーカー合同試乗会のことである。そこでアメ車とは関係ない他国のSUVと乗り比べたことで、改めてアメリカンSUVとしての魅力を知ったのである。
他メーカーのSUVは、どのメーカーもSUVの形はしているものの、スポーティを全面に押し出して、まるで背の高いスポーツカーのような運転感覚をもたらすものばかりであった。たしかにそれはそれで楽しいかもしれない。だがそこに、あえてSUV乗る必要性は感じない…。SUVの本質とは、スポーツ・ユーティリティ・ビークルである。荷室を削り、パワーを上げ、コーナリングスピードのみを強調する必要性はどこにあるのだろうか?
一方エクスプローラーは、他車とはまるで違う印象を与えてくれた。ボディは誰よりも大きく、室内空間も格段に広い。だからこそ、セカンドシート、サードシートの空間設計にも優れており、まるで日本製ミニバンのような空間アレンジの高さに驚いた。
走りに関しても、トルク重視の力強いエンジンをベースに、大きなボディだが剛性感高く、ステアリングの反応も正確かつ骨太。だからといってドイツ車的な硬質な乗り味とはならず、鷹揚とした足回りのセッティングが施されている。長時間高速道路を走るとわかるが、ゆったりとした疲れ知らずの快適さを持ち、全体的に、われわれが知っている「アメ車のリズム感」で満たされている。これはある程度の距離を走ったからこそわかる素顔でもあった。
現行型に進化し、FFベースのモノコックボディへと様変わりした。そしてV8エンジンが消滅し、V6&直4エンジンという構成になった。それをもって旧型のFRベース&フレームボディを惜しむ声として、「SUVというよりは、CUVじゃないか」という声も現実的に聞こえてきたほどである。と同時に、「脱アメリカ的か…」という声さえも。だが、他国のSUVと乗り比べてみて、そんな懸念は払拭された。
それに加えて、メーターパネルの液晶やセンターコンソールには、近代的かつスマホ的な印象を与えるイマドキの意匠が与えられており、そこには、たとえばリンカーンやキャデラックのように高級感を出すための、「これみよがし」的な演出はなく、非常にスマートな印象を与えてくれる。逆にこれからのアメ車の進むべき道を新たに示しているような感じさえ与えてくれたのである。
それを知ってからのエクスプローラーに対する個人的な評価は俄然上がり、逆に他のアメ車たちがなんだか古ぼけているような気さえすることも多々あったのだ。
そんなV6エクスプローラーの認定中古車に試乗した。今回試乗したV6モデルは、LIMITED。走行約1万3000キロ走行車。V6にはこのLIMITEDとXLTの2つのグレードが存在し、新車時の価格差が90万円。その差の内訳は基本的な装備内容によるものだ。たとえば本革シートだったり、サンルーフだったり、ボディカラーだったり。ただし両者に動力性能の違いはない。
実際に乗るとV6モデルは、同直4エコブーストよりもパワー感があり、スムーズかつダイレクト。踏み込んだ際の咆哮もちょっぴりアメ車っぽい。またボディ全体を含めた重厚感が好ましい。直4もかなりキビキビ走るし、パワー不足を感じることはないのだが、対V6比でいえば線の細さは否めない(排気量1500ccの違いは明白)。しかもアクセルのつきは、明らかにV6の方がいい。ちなみにV6モデルはAWDであり、直4モデルはFFである。
●3.5リッターV6:294ps/6,500rpm、
最大トルク35.2kg-m/4,000rpm
●2リッター直4エコブースト:243ps/5,500rpm、
最大トルク37.3kg-m/3,000rpm
ボディの剛性や足回りの確実性、そしてエンジンの加速、ハンドリング、ブレーキなど、個人的には文句の付けようがない。2トンを超えるボディもきっちり止まるし、ATの操作性も良い。6速SST(セレクトシフトオートマチックトランスミッション)の反応はかなり良く、街中でも積極的に使えるのである。
ちなみにこのミッションは、シフトレバーを「M」に入れ、シフトノブサイドの「+/-」のボタン操作をすることで、マニュアル感覚でギア操作できるフォード特有のものなのだが、変速タイミングが優れており、かなりダイレクトなミッションである。 このシフトとブレーキを併用すれば、ストップアンドゴー時に痛痒を感じることはほとんどないと言って良いだろう。
筆者は、エクスプローラーの中古車を取材したのは初めてだったが、何よりもまずボディがガッチリしていることに驚き、走行1.3万キロを感じさせる部分は、レザーシートのちょっとしたシワやタイヤの距離分の磨耗程度ではないだろうか、と思わせるほどすべてにおいてシッカリしていたのである。
聞けば、現行エクスプローラーは、認定中古車としての個体としては、新車発売からまだ3年が経っていないこともあり非常に数が少ないという。新車発売が半年遅かった直4モデルなんかはほとんどないとも。逆にいえば、現行モデルを今認定中古車で買うことは、お得以外の何ものでもないということだ。
すなわち、個体の完成度が格段に上がっている現行型の中古車を、メーカーがバックアップした認定として売られていることと、まだ3年経っていないとうことは、距離をそんなに走っていないものがほとんどであり、それでいて中古車価格となっているわけで。今回取材した白いV6モデルが、そのことを如実に物語っていた。
そんな状況で今、この取材車両以外にも登録済み未使用車が数台入荷しているということで(走行距離数十キロという中古車のこと)、現行エクスプローラーの中古車を探している方々には朗報だろう。手に触れるすべての部分において、まだ新車の味が確実に残っているのだから。
昔のアメ車のように、質素かつ質実剛健的な個性というかアクの強さはそれほどないが、エクスプローラーには、最新のアメリカが詰まっている。そして程よいアメリカンという言葉がよく似合う。それでいて本格的SUVとしての質感がきっちりと備わっているのだから、人と荷物を多数載せて走る家庭事情をお持ちの方々にはうってつけの1台であろう。
大通り沿いに立地された多摩ニュータウン店。ブルーオーバルが目立つ大きな店舗周辺には、アウトレットモールや映画館等が並び、ショッピングや食事のついでとしても気軽に立ち寄れるのが嬉しい。
敷地内には、フォードの新車/中古車がずらりと並び、また指定整備工場を完備していることもあり、販売だけでない安心感と信頼を提供してくれる。それがもとに、管理ユーザーは都内および神奈川県、山梨県と広範囲に及ぶ。
今回、多摩ニュータウン店勤務24年となる田中マネージャーに話を聞いた。
エクスプローラーに関しては、「とにかく品質が上がっていること。それによって新たな新規ユーザーがかなりの数獲得できていること。また品質向上により、中古車としての程度もかなり良いので期待して欲しい」ということだ。その他に先日の関東の大雪で、ユーザーさんたちはAWDのメリットを十分に理解されているとのことだった(特に八王子は雪がすごかったから)。
たしかに筆者的には、「都内に住む筆者のような人間にAWDが必要な時期は限られている。年に10度もないはずである」なんて思っていが、高速走行時の安定性を鑑みても、「あえてV6+AWD」をチョイスする方の気持ちがよく分かるのである。すなわちV6+AWDの需要は高いということだ。
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