ご存知の通り、今秋から日本発売が開始される「キャデラックXT5クロスオーバー(CADILLAC XT5 CROSSOVER)」は、キャデラックSRXクロスオーバーの後継モデルとなります。
日本では少し前までキャデラックSRXクロスオーバーが発売されていましたが、SRXは2016年モデルをもって生産を終了。アメリカ本国や韓国では、2017年モデルからはXT5が発売されており、既に各地で高い評価を得ています。
キャデラックは2017年6月までのグローバルセールスで、前年比27.1%増と好調なセールスを記録していますが、その中でもXT5の快進撃は素晴らしく、なんとキャデラック全モデルの約40%をXT5が占めているとのこと。いかに目新しいニューモデルとはいえ、これは凄い数字と言えます。
実は、筆者は今回の取材で新型キャデラックXT5クロスオーバーの現車を目の当たりにするまでは、「SRXクロスオーバーがマイナーチェンジしたくらいのモデルだろう」と予測していました。
アメ車ワールドの編集をしている以上、当然ながらGMジャパンから届くリリースにはきちんと目を通しているし、最新のアメ車や逆輸入車に関する情報は定期的に雑誌やウェブでチェックしています。よって、新型XT5が「GMの新しいクロスオーバー・アーキテクチャーを採用」していることや、「SRXクロスオーバーから約90kgも軽量化」していることは知っていましたし、「3.6リッターV6エンジンはキャデラックCT6と同じユニット」といったことも知識としては持ってました。
ただ、前列後列で5人乗りの高級SUVという基本コンセプトは変わってないし、サイズ的にもほとんど同じ。1ユニットとなるV6エンジンも旧モデルのラインナップにあった排気量だし、広報写真を見てもそう大きく変わった印象もないし、「技術的なバージョンアップや細かい改良はあったにしても、キャラクター的にはSRXと大差ないだろう」くらいに思ってたわけです。
ちなみにSRXとXT5の数値的な違いは以下の通り。
XT5クロスオーバー SRXクロスオーバー
全長(mm) 4,825 4,855
全幅(mm) 1,915 1,910
全高(mm) 1,700 1,690
車重(kg) 1,990 2,080
総排気量(cc) 3,649 2,997
最高出力(ps) 314 269(313)
最大トルク(kg-m) 37.5 30.8(36.6)
※SRXクロスオーバーの()は日本未導入の3.6リッターV6
SRXからの大きな変化を大して期待していなかったXT5ですが、現車を目の当たりにして自分自身で写真撮影をした感想としては、「予想よりも変わってたな」というのが正直なところです。
ニューモデルが世に出た際に、広報写真を見た際に受けた印象と、実際に現物を見た際の印象が違うのはよくあることですが、XT5に関しては、当初思い描いていたイメージと違うというよりも、イメージの作り方が違ったというべきかも?つまり、「SRXのマイナーチェンジ版」ではなく「CT6のSUV版(サイズ的にはだいぶ小さいけど)」というのが正解だったようです。
まずスタイル的にはかなりシャープになった印象を受けました。全長、全幅、全高とも、XT5はSRXとほとんど変わらないはずなんですが、塊としてのボリューム感はSRXの方が大きく感じます。パッと見た感じだと全高が低くてて、初代SRXに近い感じ?。もちろんスクエアでエッジが効いていた初代SRXとXT5では、細部のデザインは全く違うんですが、全体的なシルエットは共通しているというか。実際の数値としてはSRXよりXT5の方が全高は高いし、「天地が薄い」というと少し語弊があるんですが、少なくともボテっとした感じは皆無。SRXクロスオーバーよりはスポーティな雰囲気が強調されているのは間違いないところです。
フロントのデザイン処理はキャデラックのフラッグシップモデルであるCT6に近いですね。セダンであるCT6を上手にSUVとして仕立て直した感じ? スポーティではあっても、ATSほど明確な若作りはしておらず、CT6に通じる落ち着いた雰囲気が演出されています。
余談になりますが、ATSから始まった現代のキャデラックのイメージ戦略はちゃんと機能しているというか、ATS、CTS、CT6、そして今度のXT5と、いずれも一目見てキャデラックと分かるデザイン(フロントマスク)に統一されています。こういうのはいかにも世界戦略車らしいというか、昔のセダン(フルサイズ)中心の時代のキャデラックとは別物というか、時代を感じる部分ではありますね。
デザイン的にはCT6をSUV型にコンパクトにまとめたイメージのXT5ですが、インテリアの仕上げもCT6に近いイメージです。つまりよく出来ています(笑)。
上質なレザー、スウェード、ウッド、カーボン、アルミニウムといった異素材を組み合わせたインテリアは、モダンでありながらもどこかシック。豪華ではあってもやり過ぎ感はありません。
筆者的には初代CTSから「現代のキャデラック」路線が明確になったと思っているのですが、当時のCTSや2代目エスカレードあたりと比べると、現在のキャデラックの内装クオリティは「本当に良くなったなぁ」という感じですね(笑)。
また、インテリア関連で大きなポイントはリアシートに最長14cmのスライド機構が設けられたところ。これにより、リアシートの足元には1メートル近いスペースが確保されています。さらにリアシートには最大12度の角度調節と6つのポジションを選択できるリクライニング機構が装備されているので、後席の居住性&快適性はSRXよりも大幅に向上しています。
今回のXT5とのファーストコンタクトは、キャデラック・シボレー高崎のショールーム内での撮影だったので、走行性能については未検証です。もっとも、先代のSRXクロスオーバーも走りの質感は悪くなかったし、最近のキャデラックの全般的な走りの良さを考えれば、XT5の走りがSRXに劣るということはないでしょう。
前述した通り、2列シート5人乗り高級SUVという基本コンセプトはSRXから変わらないXT5ですが、クルマとしての基本性能や使い勝手の良さ、高級車としての各部のクオリティなど、SRX時代からトータル的にレベルアップしているのは間違いないと思います。
筆者はSRXがSRXクロスオーバーにモデルチェンジした際、FRベースからFFベースになったにも関わらず、3列シートから2列シートに変更されたことには大きな疑問を感じました。クラスが下で排気量もボディサイズも小さなシボレーキャプティバが3列シートの7人乗りなのに、価格が倍近いSRXが2列シート?2列シートにした分、後席は初代SRXと比べて格段に快適になったの?と、思っていたんですよね。当時の筆者のライフスタイルでは3列シートなんて全く必要なかったにも関わらず、です(笑)。でも、今度のXT5の後席の足元や膝先のゆとりや座り心地の良さは凄く良いと思いますし、これなら十分に2列シートの意味があると思います。
キャデラックXT5のメーカー希望小売価格は、ベーシックな「ラグジュアリー」が¥6,685,200。上級モデルである「プラチナム」が¥7,549,200。今回撮影した全国限定20台の「FIRST LIMITED EDITION」が¥7,830,000。これに対して、キャデラックSRXクロスオーバーの価格は、「ラグジュアリー」が¥5,840,000。上級モデルである「プレミアム」が¥6,880,000、モデル末期の限定モデル「スポーツエディション」の価格が¥6,980,000。
両者を比較すると、車両本体価格は気持ち高くなっていますが、金額が高くなった分以上の進化は感じられるし、コストパフォーマンス的にはSRXクロスオーバーと同等以上と言っていいと思います。
330,000円
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