更新日:2019.06.18
文/椙内洋輔 写真/小林浩久
久しぶりに見たC7コルベットの印象は、見た目の大きさとして、小ぶりに見える。実際にはC6と比較して全長で60ミリ、全幅で33ミリ、ホイールベースで25ミリ長くなっているにもかかわらず。
シートに座っても、タイトなバケットタイプであり、ステアリングも小径。これらに触れた瞬間から、スポーツカーらしさ溢れる雰囲気に浸らせてくれる。
試乗したC7のMTはトレメック製の7速MTであり、このシフトフィールが絶品だった。まるでマツダロードスターとまでは言わずとも、グニャグニャした感触は一切なく、カチッカチッとしたメリハリのある質感を備えており、これだけでも一回り小さいスポーツカーを操っている感覚になれるほどストロークも短い。
世界中のスポーツカーからMTモデルがなくなっているこのご時世だからこそ、とくに素晴らしい装備だと感心する。
各部のデザイン的なキレ味が鋭く、スポーツカーとして攻撃的な印象を与えることに成功している。車体構成がFRだけにミッドシップのスーパーカーのようなボディの縦横比ではないが、それでも断然アグレッシブかつ躍動感を感じるスタイル。
リアデザインは、造形の奥深さを感じることができ、どのクルマにも似ていない唯一無二のデザインに感心する。
C6から引き継いだパーツは2つしかないという。まさに徹底的に新しくなったコルベット。
ロングノーズ、ショートデッキのプロポーションのため、ドライバーはリアアクスルの上に座っているようなコルベット特有の感覚が常にある。だが思った以上にボディが小さく感じられるから毎日でも乗れるスポーツカー。
またドライバーズシートから見えるフェンダーの峰は相変わらずの景色であり、ここは何年経っても変わらないコルベットらしさのひとつである。
走り出すと驚くのがボディの剛性の高さ。C6から格段に高まっている各部の剛性はひとつの塊感を発し、驚くほどの効果を上げている。車重的には、あらゆる補強をしたにもかかわらず1499キロに抑え、C6よりは若干重くはなっているが、その重さを感じさせない動き出しの軽さ。そしてサスペンションがよく動き驚くべき乗り心地の良さ。
聞くところによれば、サスペンションの動きの良さはサーキットにおいてより発揮され、そのハンドリングは特筆ものであり、バランスがかなり高いと言われている。
ハンドリングをつかさどる各種ハイテク機構とのマッチングも改良され自然な印象になり、ドライバーにダイレクトなフィーリングを与えてくれる。
C6では前後重量配分が51:49と若干フロントよりになっていたものが(フロントを重くして接地感を得るためか)、このC7では50:50と前後のバランスを改良したおかげもあって、C7の旋回性能は群を抜くレベルであり、それは一般のドライバーが公道において体感できるレベルを遥かに越えているというから凄い。
搭載されるエンジンは6.2リッターV8OHV LT1エンジン。ノーマルクーペは460hp、日本仕様のZ51は466hpを発生させる。どの回転域からでも瞬時に加速体制に入れるレスポンスは、8速ATを得て一層俊敏になった。
激変したインテリア。各種パーツの質感や工作精度はかなり高く、グラフィカルなメーター類と相まって、華やかな雰囲気がインテリアにも漂う。各種スイッチ類の操作感にも安っぽさはなく、満足感は高い。
じつはMTでもパドルシフトが装備されているのだが、正直運転中は忘れていたこともあり、試すことは叶わなかった。だがMTをドライブしたら、使う気がまったく起きないというのが正直なところではないだろうか。
この要因の一つに、搭載されるOHVエンジンが効いているのは言うまでもない。馬鹿でかいDOHC4バルブエンジンよりも低重心が可能になり、プラスしてトランスアクスル方式を採用しているから、曲がりが非常に速いのだ。
実際、当時から好敵手として開発されてきたポルシェよりもラップタイムは速く、速さとしてのもはやそのレベルに達しているわけであり、=C7コルベットがFRの完成形と言われる所以である。
搭載されているエンジンは、新設計となる6.2リッターV8LT1エンジンであり、460psを発生させる(Z51だと466ps)。このエンジンは低負荷時には4気筒を休ませる気筒休止システムが用いられているが、MT車だとあまり実感することなく、スムーズな走行が可能である。
この感じだと、ATなら以前に比べてかなりの燃費向上がもたらされるかもしれないが、C7をあえてMTで乗ることも楽しいと思わせてくれるだけに、どちらを選んでも、それなりの楽しさや快適さが味わえるはずである。
C6時代から「打倒ポルシェ」を掲げてきたがコルベットだが、C7になって、ついに対等なレベルで勝負することが可能になったように思う。
乗って、実際に走ってみて感じる満足感というものが、過去のコルベットで感じたものとは明らかに違うからだ。速さと同時に大切な「何か」を得たような気がしたのである。
個人的な印象としては、「アメ車としては、正直良すぎてしまって(笑)」。そういった不安になってしまうほど立派になった。「コルベット=硬派なマシン」という雰囲気は明らかに減ったが、その分、現代の高級スポーツカーたちが向かっている同じ立ち位置に並ぶことができたはずだし、それはそれで明確な進歩であろう。
それでいて抜群に速いわけだし悪いことは何ひとつない(いや、あった。高価になった)。
ステアリングの奥に見えるグラフィカルなメーターは、液晶ディスプレイになっており、ドライブモードセレクターのチョイスに応じて表示が切り替わる仕組みになっている。
スロットル開度やトラクションコントロールの介入具合、サスペンションのダンピング等、12項目をダイヤル操作でコントロールできるドライブモードセレクターは、状況に応じた5つのモードからチョイスできる。
ペダルレイアウトは適切であり、クラッチも普通の重さであるから、誰もがいとも簡単に運転することが可能である。なお、自動ヒールアンドトゥ的なレブマッチ機能を駆使して回転合わせも可能であるから、MTの醍醐味を思う存分に味わえるだろう。
対欧州スポーツカーと、ついにガチで対決することが可能になったのは非常に喜ばしいことであり、ハイパワースポーツの圧倒的な加速感と、ライトウエイトスポーツカーのようなハンドリングレスポンスが同時に感じられるところにFRコルベットとしての執念を感じるし、歴代コルベットから続くFR究極モデルの領域についに達したわけである。だからこそC8ではミッドシップへ移行し、次なる領域での戦いをするのだろう。
ということで、ある種の完成型とも言えるC7FRコルベットを入手し、以後20年所有するというのも当然アリだと思うのである。
で、できれば新車がいいが、新車が無理でもこうした2015年前後の中古車が市場に流れており、さらにはディーラーの認定中古車にもタマが多くなってきているから、C8発表目前に、あえてC7を購入するのもよろしいかと提案したいのである。
コルベットはFRの歴史ではあるが、その開発過程において、幾度となくミッドシップへ移行することが提案されていた。実際にコンセプトモデルも複数製作されている。で、C7でFRの天下を取ってしまったからこそ、次なる領域へと進化する。そんなミッドシップのC8コルベットは2019年7月18日にデビューする。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES