フルサイズSUVとして人気のタホは、意外と歴史が短い。というのも、永らくシボレーのフルサイズSUVにはブレイザーの名前が冠されていたからだ。S10ベースのコンパクトブレイザーは83年から登場しており、この時期のブレイザーは、フルサイズとコンパクトサイズが同時に存在していた。もっともコンパクトなS10の方は、どちらかというと輸出を主力にしたモデルという位置づけだったが…。
ここで紹介するブレイザーは、現代でいうタホの祖みたいなもの。タホという名前に移り変わる直前のモデルで、歴史的にみれば過渡期のモデル。だが、実際の車両に乗ってみると、それこそアメリカを代表する、まさしく名車の1台だった。
紹介するブレイザーは89年型。で、コイツを含む91年までのブレイザーは、基本的には69年デビューの初代モデルと言っていい。4×4シャシーを持つフルサイズピックアップのK10をベースに誕生し、K10よりもホイールベースが短い2ドアモデルとして、純然たるオフローダーというイメージのクルマだった。スクエアなボディデザインは今でも人気が高い。
エンジンは5.7リッターV8で、最高出力は210hp。その他に6.2リッター、V8ディーゼルエンジンが用意されていた。サスペンションはもちろんリーフスプリングだ。翌年には姉妹車のGMCジミーがデビュー。さらにC10ベースの2WDも追加されている。その後、フェイスリフトやバリエーションの拡大、エンジンの変更などを受けながら、91年モデルまで生産された。
92年にモデルチェンジされた時、ブレイザーはそのままの名前が残されたが、ジミーの方はS15コンパクトジミーとの混乱を避けるべく、ユーコンというネーミングになっている。もちろん、新しいブレイザー/ユーコンは新型ピックアップのK1500ベースとなった。スタイリングも現在でもシボレーのアイデンティティとなっている上下2分割のグリルとヘッドライト、グラマラスなデザインを持っていた。
エンジンはV8がスタンダード。4WDはインスタトラックが採用された。モデルチェンジし消滅したとはいえ、この91年型までのブレイザーのコンセプトは今もなお生き続けている。いくらスタイリングを変えようとも、95年にタホと名前を変えようとも、ブレイザーの進化版であることに変わりがない。大袈裟に言えば、このブレイザーなくして、現代のタホもサバーバンもエスカレードも語れないのである。
撮影車両は89年型のシルバラード。基本的にはノーマルだが、シートとタイヤ&ホイールが変更されている。驚くべきはその程度の良さである。構造のしっかりしたモデルだけに頑丈であるとは思っていたが、フレームに腐食ひとつ見当たらない。
下回りに関しても、スチームをかけて磨き上げただけで、一部を除いてペイントすら行なってない状態である。それでも新車と同じ光沢を放っている。愛情を持って接することで永遠の愛車にできるアメ車の魅力を実感することができる。
試乗することで感じられた荒々しいまでのV8サウンドと4駆らしい豪快な乗り心地は、アメリカンSUVの本来の姿と言える。4輪リーフサスという伝統的な足回りは、タフで信頼性も高い。本格オフロードも余裕でこなす実力と街乗りでの実用性を上手く両立させたセッティングである。
見た目だけでなく、ステアリングを介して伝わる迫力、豪快感がこのクルマの魅力のひとつでもある。堅牢なラダ−フレームに大排気量エンジン。パワステで軽快なステアリングホイール、恐ろしく低回転でトルクを出すエンジン、じんわり効くブレーキなど、アメリカで日常的に使う利点がてんこ盛り。
リアルなアメリカを味わえる、間違いなく名車の1台だ。
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