更新日:2012.11.15
文/石山英次 写真/石山英次
サバーバンがこの世に誕生したのは、1935年。当時シボレーが、ピックアップと同じシャシーを使って人を運ぶことを目的とした「車輌」を検討し始めたところに端を発している。
ラダーフレームをボディパネルで覆い、そこにシートを取り付けた構造は、今日のSUVとまったく同じ発想。そして当時の名称はサバーバン・キャリーオール。サバーバンは「郊外に出かける」といった意味の「SUBURB」が語源となっている。なので、ミニバンなどの「VAN」とはスペルが異なり「BAN」となる。それ以降サバーバンはシボレーのトラックとともに進化してきた。シボレー3100、C10、C1500、そしてシルバラードとともに歩んできたのだ。
ちなみに「タホ」とはどう差別化されているのか?
ご存知のように、タホはブレイザーの進化版である。そしてそのブレイザーもまたピックアップをベースとする。シングルキャブのショートベッドにキャノピーを付け、セカンドシートを取り付けたのがことの始まりだった。
ただ、ブレイザーの場合、発想の原点はピックアップ+アルファというものとなる。なので、4WDが基本となり、後席のシートはあくまで補助的なものに過ぎなかった。
その点サバーバンは、当初から2WD、4WD、それぞれのニーズ分だけ存在し、後席のスペースも確保され、早くからサードシートを用意している。リアドアが付いたのも早く、荷物ではなくあくまで「人」を乗せることを前提にした工夫がなされたのである。
というように、サバーバンとタホは互いがクローンのようにはなっているが、発想の原点はまるで違ったのである。その意味で、サバーバンが豪華に進化するのは当たり前といえる。人を運ぶのだから快適にこしたことはないからである。
こうした背景からも分かるように、サバーバンはじつに実用性が高いユーティリティ・ビークルである。コイツの人気が衰えないのは、そんなことも関係するだろう。存在感があって実用的なら、サバーバンに乗る大きな理由にもなる。さらに、ドレスアップパーツも豊富で、カスタムして遊べるというオマケまで付く(この先々代まではトラックシャシーベースなので、ローダウン&リフトアップ、どちらにも対応できた)。日本での使用ということを考えても、サイズさえ許されるのであれば、こんな楽しいクルマはほかにはないだろう。
ここで紹介するサバーバンは、日本で一番馴染みの深いモデルである。92年から99年まで製造された先々代モデルとなるが、いまなおマニアックな人気を誇っているアメ車である。
走れば2トンを越える車重をものともせず加速していき、その際の息の長い加速感は絶品であり、流行の日欧SUVでは決して味わえない独特のものである。
サバーバンは、速さを気にするクルマではないから、スポーツカーのように「シャープ」なハンドリングとまではいかない。だが、どこぞのクルマのようにまったく応答しないことはないので、ドライブしていてイラつくこはない。スタイリングも、物みな丸くなる中で角張ったこの顔つきは、いまでこそ逆に新鮮かつ迫力十分。だから、性能重視ではなく、デザインや雰囲気を重視する方には、この先々代に乗るのも良いかもしれない。
搭載されるエンジンは、5.7リッターV8。だが92年型、93年型が190hpのパワーであるのに対し、94年型、95年型が210hp、そして96年から最終年式となる99年までが255hpとなっている。
タマ数など、中古車としての程度や性能が気になるところだが、この年代のサバーバンは、日本においてはここ最近で一番盛り上がった時代のGM車だけに、あらゆるパーツやメンテナンスなどの情報が出回っているから、基本的に困ることはほとんどないのである。
サバーバンを語るとき、どうしてもタホの存在なきには語れない。「どうせ同じ顔かたちしているなら、タホでも…」といった意見も多数聞く。タホは、サバーバンのショートホイールベース版。つまり、車体の全長がサバーバンよりも約52cm、ホイールベースが約35cm短いのと車重の違いがあるだけで、それ以外は基本的に同一(クローン)である(サバーバンのみ8.1リリッターエンジンが選択できるが)。
しかし、それは見た目上の判断であって、実際には、SUVという本質、つまり遊びグルマとのしての軽快さや実用性を重視して、タホは開発されている。
一方サバーバンは、砂漠のロールスロイスとも形容される性能と、さらには歴史と伝統を持ち合わせている。アメリカではもっともタフなクルマということで、シークレットサービスが歴代大統領の警護車両としても採用していたくらいだ。
両者を比較すれば、サバーバンの方が明らかに直進安定性が高く、アメ車としての存在感が高い。だからいずれはサバーバンが欲しいとなる。だがしかし、日本の道路事情を加味し再考すれば、「タホの利便性も捨てがたい…。だからとりあえずタホを買って、いずれサバーバンに乗り換えたよう」、なんてことを考えるのもわからないではない。
とはいえ、今現在のタマ数などを考えれば、そして今後も長きに渡って乗り続けていくことを考えれば、歴史と伝統を持ち合わせているサバーバンに乗る方が、アメ車の歴史の一部を実感するという意味においても正しい選択だと思う。
試乗車である99年型GMCサバーバン(後にユーコンと呼ばれるようになる)は、珍しいフルノーマル状態で、走行距離は5万マイル弱、とかなりいい感じに使い込まれた良質車である。これに乗り、早速、試乗へ。この試乗での主なチェックポイントは、高速道路と一般道での走りとなる。
ノーマルサバーバンの着座位置は結構高い。といってもアストロなどのバン程ではないので、乗り降りに気を使うことはまったくない。大きなステアリングを握り、キーを捻る。搭載されている5.7リッターV8エンジンは一気に目覚め、安定したアイドリングを示す。節度感のあるコラムシフトをDレンジへ入れ、いざ発進。
筆者は、今までにタホのフルノーマル車には何度も乗ってきたが、サバーバンのフルノーマル車に乗るのは、今回が初めて。それでもタホとの違いは十分感じ取ることができたし、サバーバンの良さも確実に把握することができた。
巷では、「タホの方が車重が200キロ以上も軽いので、スポーティ」との見方をする人が多く、快適な走りを求める向きにはサバーバンは不向きとの声もある(同パワーで200キロも違えば加速力も鈍るだろう)。がしかし、高速道路でのサバーバンの振る舞いには、不満を感じることはなく、逆にその時の安定感の高さに舌を巻くほどの感動を覚えたのだ。これはタホよりも長いホイールベースと車重の重さが利いているのだろう。
加速に関しては、一瞬の速さでは正直、タホには敵わない。が、それでも一度加速してしまえば、もたつくことはまったくない。
また一般道では、やはり車体の大きさがネックとなり、細い道路でのすれ違いなどには気を使う。しかし、走りは問題はなく、車重のわりに、ストップ&ゴーも気楽にこなし、走行性能に不満&不安を感じることはあり得ない。
3列目シートを駆使すればバンのように大人数を乗せることが可能であり、しかも走行性能&安定感はバンを確実に上回るサバーバン。
アメ車が好きなら、是非一度乗ってみて欲しいと思う。
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