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新型デビューに伴いヒストリーをおさらい

キャデラック エスカレード (CADILLAC ESCALADE)

1997年の初代デビューから2015年の最新四代目モデル登場まで

アメ車のなかでも圧倒的人気と認知を誇るキャデラックエスカレードがデビューして16年。現在で三代目となるエスカレードは、常にラグジュアリーSUVの指標として存在し続けた。

更新日:2013.11.01

文/椙内洋輔 写真/ゼネラルモーターズ

リンカーンに後塵を拝する

 ラグジュアリーSUVの起源はいつだったのか? 日本では一般的に1998年のレクサスRX300(日本名ハリアー)がその第一号と紹介されている。それまでラダーフレームだったSUVをパッセンジャーカーと同じモノコック構造でつくった最初のモデルだからだ。

 だがそれは、定義のひとつでしかなく、ブランドと考えればその前年にリリースされたリンカーンナビゲーターがそれに当たる。これら2台のクルマが誕生したことで、ライバルたちが追随し「ラグジュアリーSUV」はひとつのカテゴリーにまで成長したのである。

 では、ライバルたるキャデラックはリンカーンの動向を見ているだけだったのか?

 じつはキャデラックもすでにその頃SUVの開発を進めていた。しかもおおよそのコンセプトは出来上がっていたものの、そのブームの流れがこれほどまでに早いとは予測できてはいなかった。先にデビューしたナビゲーターは爆発的に売れ、1997年においてはキャデラックの販売台数を上回ったほどである。

 で、慌てたキャデラックが翌年市場導入したのが、1999年型初代エスカレードである。だが、コイツはGMCユーコンデナリの単なるバッジ違いであり、急いだがために作った急造マシンとしてスペシャリティに欠けるものだった。格子のグリルにリース&クレストは付くものの、オンリーワンといえるシロモノではまったくなかったのだ。

 ただ、この初代はあくまでも場つなぎ。正真正銘のエスカレードは2000年に入ってから登場する。

 2001年にリリースされた二代目エスカレードは見るからにキャデラックの一員とわかるスタイリングをしていた。当時のSTSやCTS、XLRがそうであるように、アート&サイエンスのコンセプトから造られた。インテリアもオリジナル性が高く、ふんだんに使われるウォールナットが高級感を漂わせる。

 さらにた一時代を築いた「BVLGARI」のロゴが入ったアナログ時計は嬉しい副産物だった。90年代の豪華さを微妙に残すサジ加減が、この二代目モデルの最大の魅力である。

初代エスカレードは、前年に誕生した「リンカーン・ナビゲーター」の成功を受けて誕生。キャデラック初のフルサイズSUVとして注目を集めた。ベースとなったのは「GMC・ユーコン」で、シャシーや5.7Lエンジンなどはそのまま踏襲。エクステリアも大幅に手が加えられること無く発売された。それが災いしてか、市場では「ユーコンのバッジが変わっただけ」と揶揄。販売も振るわず、わずか1年で生産は終了してしまった。

インテリアも基本的にはユーコンである。だからこそ、売れるわけはない。というか世界的な「物売り屋」としてこんないい加減な商品って許さるのか? 当時はそんなことまで語る評論家さんたちがいたほどであった。

二代目はベース車から大幅な改良を実施。当時のキャデラックに共通のエッジの効いたフロントマスクや、BOSE社製サウンドシステム、ブルガリデザインのアナログ時計等により、キャデラックに相応しいプレミアムSUVに変身。エンジンはタホ等と共通の5.3L V8のほか、専用設計の6L V8 OHVを搭載。またこの代からロングモデルの「ESV」、ベッドを備えた「EXT」がラインナップに追加された。

基本ベースはシルバラード、タホ、サバーバンなのだが、この二代目モデルにはブルガリとコラボしたことで得た特有の雰囲気があった。当時は三井物産が正規モデルとして販売していた。

一気に洗練されて国際感覚を身に付けた

 キャデラックはGM最高級のモデルを扱う部門である。当然それは大型サルーンばかりを扱ってきた(かつては)。

 だがGMは20世紀末にエスカレードを世に送り出した。それは最高級サルーンと同じ地位にトラックが登ったことの証明である。と同時に、アメ車=SUVという時代の到来を意味している。だかこそ、当初のラグジュアリーは二代目エスカレードで事足りていた。

 しかしX5やらカイエンやらの欧州製SUVがアメリカに大挙して押し寄せてきて、事情が変わった。高性能スポーティ車の技術で造られたそれらと対抗するためには、呑気にアメリカントラックのままの中身ではいられない。

 こうして2007年にフルチェンジした三代目エスカレードは、中身を一気に洗練させてきた。

 ボディ骨格から作り直し、サスペンション制御を最適化し(マグネティックライド)、そのコントロールはGMのスポーツカー・コルベットと同様のものを使用する。そしてエンジンまで一新。このボルテック6200と名づけられたL92型エンジンは、スモールブロック系V8シリーズの第4世代となる最新ユニットで、これまたコルベット用LS系エンジンと同じく軽量のアルミブロックを持つ。

 しかしこちらは、LS系とは違って、迫力ではなく洗練をウリにする。回り方も、世間がイメージするようなドロドロという身震いを伴ったものではなく、レンジローバーに積まれたジャガーV8やセルシオV8もかくやの滑らかな感触を持つ。

 また馬力の出方も、低速でドカンとパンチを効かすアメリカ式ではなく、じんわりトルクがにじみ出てきて、それが回すほどにきれいに伸びていく、上品で現代的なタイプ。排気量が6.2Lもあるからトルクは嫌でもあり余る。その余裕を、力感でなく品の良さの演出に使ったのである。

 それだけでなくGMは、OHVでは世界初の可変バルタイを採用して、滑らかなトルク特性をさらに磨いてきた。

 新型エスカレードは、インテリアをも刷新し後席の居住性も国際標準にするなどして、車体のほうも手を打っている。こうして洗練度を磨いたエスカレードは、独自の魅力を引っ提げ欧州勢を迎え撃ったのである。

ベース車となるシボレータホのモデルチェンジに合わせ、エスカレードも三代目にバトンタッチ。T900と呼ばれる最新のトラック用プラットフォーム採用により、プレミアムサルーンに匹敵する快適な乗り心地を獲得。フロントマスクも「STS」や「CTS」を思わせるシャープなデザインに一新された。駆動系の進化も著しく、エンジンには403hpを発揮する6.2L V8 OHVを搭載。ATは4速から一気に6速になった。

この三代目への進化は、初代から二代目への進化とは比べ物にならないレベルのものだった。二代目までは当然ながらいわゆるアメ車の範疇であり、バタ臭さは健在である。ところが、三代目ではそのバタ臭さが消え、一気に近代化され洗練された。その進化は二世代分とも言えるほど。

二代目モデルのEXTはよく見かけるものの、三代目モデルのEXTは超レア車。後々名車として人気および価値が上がるかもしれない。またハイブリッドも導入され、次世代SUVとしての資質も高めている。

期待の四代目モデルデビュー

 こういった流れのなか誕生した四代目エスカレードは、基本的に三代目をベースに正常進化させたモデルである。ボディもサスペンションもミッションも基本的には三代目からのキャリーオーバー。だが、それぞれにおいて確実にパフォーマンスアップしていることは間違いない。

 一方エンジンは、6.2リッターV8のままだが、これまでのボルテックではなくエコテック。このエンジンには、気筒休止システムや可変バルブタイミング、高度な燃焼システム等、最新技術で効率の良さをも求められている。それでも420hp、最大トルク460lb-ftを発生させる。

 インテリアはさらに現代化され、新型CTS等と同じようなデザインテイストを踏襲し、なおかつ一層高級感が増している。さらに他のキャデラック同様に車体の安全装備が充実し、世界最高峰のラグジュアリーSUVとして君臨する。なお、現時点でノーマルボディとESVのみ発表されているが、後にハイブリッドモデルの登場が決まっている。

 実物を見て乗って、どれだけ驚かせてくれるのか? 期待せずにはいられない。

 

実物を見ていないのでまだ確証はつかめないが、写真を見る限りかなり角形のボクシーなデザインになっているように思う。好き嫌いはあるかとは思うが、基本的に誰が見てもエスカレードであり、三代目モデルからの進化版として人気を博すに違いない。

エスカレードたるクオリティと他のキャデラックファミリー同様の意匠をうまくミックスして構築された最上級のインテリア。

全長×全幅×全高は5180×2044×1889ミリとホイールベースは三代目と変わらずも(2946ミリ)ボディ外寸は若干大きくなっている(3〜4センチ程度)。

ピラー全面を覆う縦型のLEDテールライトがリアの造形変化の一番の見所である。

<関連記事>
>> 2015年新型四代目モデル登場 を見る
>> 三代目エスカレードの試乗記の を見る
>> 二代目エスカレードの試乗記の を見る
>> リンカーンナビゲーター を見る

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