2015年型マスタングGTの50イヤーズエディションに試乗した。この50イヤーズエディションとは、マスタングデビュー50周年を記念した限定モデルであり、見た目の特徴としてフロントグリル内やリアテール回りにメッキパーツが使用され飾られている。
走行9000キロのBCD直輸入車ということで、見た目からしてコンディションの良さが伺える。室内も同様にまだ新車の香りが残っているかのような雰囲気である。
スターターボタンを押し、ギアをDレンジに入れスタートする。以前に比べダッシュボードの位置が低くなり、ボディ四隅の感覚はつかみやすく、サイドミラーが小さくなっているのが少々難儀だが、走り出せば数分もしないうちに慣れるし、あまりにも快適かつ素晴らしい加速感に一瞬にして虜になる。
なかでもATが素晴らしい。旧型マスタングも非常に魅力的な存在だったが、「もし自分で買うなら絶対MTだな」と常々思っていた。その最たる原因がATのもたつきだった。
実際にはもたついているわけでなく、若干反応が鈍いのか、はたまたそういうセッティングなのか、とにかく最初の一歩の出足に常にダルさを感じるのがたまらなく痛痒だった(それが旧車っぽいと良い風に捉えることも可能なのだが…)。
だからこそ「乗るなら絶対MT」と思っていたのだが、この新型のATは非常に良好なセッティングであり、くわえてパドルのフィーリングもかなりの領域で洗練されている。だから乗っていて低速から出足良くV8パワーを存分に使い切れ、かつダイレクトに反応するパドルをもって、初めて「ATがいい」と思えたマスタングであった。
ヘッドライトは全グレードともHIDを採用。7代目マスタングのフロントマスクはシャークノーズと呼ばれるが、確かに鮫っぽい攻撃的なデザイン。
箱型クーペというよりは、スポーティなスペシャリティカーである。
ボディは、マスタングというデザイン枠のなかにおいて、流麗なラインが強調されたアメ車的ダイナミックさを具現化している。
しかもその6速ATのダイレクトな感触はV8エンジンと密接に連携して、これまたしびれるサウンドを響かせる。「ドゥルルルル~」とアクセルを踏み込みながら高まるV8サウンドは他車にはないフォード車特有の野太さ。
パワー数値やトルク感などエンジンスペックには現れない感覚性能としては、現代版マッスル随一の快音を発する5リッターV8エンジンであり、旧モデル同様の密度の濃密さでドライバーを魅了する。
この感触だけは絶対である。たとえばそれはカマロやチャレンジャーからでは味わえないエンジンの息吹であり、このサウンドにこそアメ車の醍醐味が凝縮されていると思わせる。
だからこそ、仮にライバルよりも最高出力が50hp低くとも、濃密なアメリカンV8を体感したいなら「マスタングのV8をチョイスすべき」と本気で思うのである。
ちなみに、直4エコブーストを搭載したモデルも劇的に素晴らしい存在であり積極的に選ぶべきモデルに間違いないから、はなからエコブーストをチョイスしようと検討しているならば、そのまま進んでもまったく問題はない。
だが一方で、もし万が一「エコブーストとV8」とで迷っているならば(ほぼいないと思うが)、「絶対にV8をチョイスすべき」であると答えるだろう。
いわゆる自分に酔える要素としては、やはりV8サウンドこそがデフォルトであり、スピードの速い遅いに関係なく「あえてアメ車に乗る理由」みたいなものを与えてくれるのである。しかも新車なら800枚近い一万円札が必要だが、中古車なら程度の抜群に良いものでも、直4エコブーストの新車を買う値段くらいから入手可能なのである。
5リッターのTi-VCT・V8エンジンは最高出力435hp、最大トルク400lb-ftを発生させる。基本的には先代モデルのキャリーオーバーなのだが、そこが逆に洗練され過ぎずに濃密なV8サウンドを醸し出す要素となっている。
ドライバーズシートからの眺めが変わり圧倒的に運転しやすくなった新型。マスタングらしが得られるのが、他のアメ車にはない個性だ。
シンプルな形状のメーター周り。メーターだけを見れば旧型ほどデザインされたものではないが、全体的に視認性良く、まとめられている。
2015年に新型となりあらゆる部分が進化したマスタングだが、その変がのすべてがアメ車の枠の中で収まっているのがこの7代目の特徴でもある。
ボディデザインは、ロングノーズショートデッキの古典的プロポーションをより強め、全体的に薄型デザインに見えるようしつらえることで目線をぐっと押し下げることに成功し、一層モダンなデザインになった。とはいえ、旧モデルとの互換性もちゃんと感じさせるから旧型派にもあえて拒絶されるような印象はまったくない。
走りは乗り心地のバタバタ感が確実に減ったし、リアグリップの高まりを感じさせつつも、すべてがハード路線に突っ走った現代版ドイツ車のような方向性というよりは、アメ車らしい鷹揚さがシッカリと残っており、街中でのゆったりしたドライブこそが気持ちいい、そういう仕立てになっている。
とはいえ、独立懸架式のリアサスペンションのロードホールディング性能は高く、コーナリング性能が飛躍的にアップしているというから、これまで以上に幅のある乗り味と走りが味わえるに違いない。具体的には街乗りからハード走行まで確実に対応できるアメ車である。
非常に感覚的な物言いだが、最近のモダナイズされたアメ車たちはどれもみなドイツ的な方向性に進んでいるのは明らかだが、マスタングに限って言えば、確実にアメ車の枠内にとどまっている。だからこそマスタングは、常にアメ車好きにオススメなのである。
クルマ好きである以上、速さやスピードに憧れる気持ちはわからないでもない。そして時代が時代だけにワールドワイドな性能が求められ、だから最新のクルマたちがみな【ドイツ車】の方向に進もうとしていることも致し方ないのかもしれない。
だがやはりアメ車である以上、何かしらアメリカ的な味わいを与えてくれなけば、われわれはあえて最新のアメ車を新車で買う必要がなくなってしまう。ドイツ車風アメリカ車しか買えないなら、はなからドイツ車を買うだろうし、もっと安いドイツ車風日本車でもいいわけだし。
ということで(話がちょっと脱線したが)、この型のマスタングは旧型モデル同様に買いの1台である。
シフトレバーやその後ろにあるトグル調のスイッチやエンジンスターターボタンは、どれも操作しやすく、質感も悪くない。
全体的に明るいムードになりアルミパネルを使用している利点が現れる。センターのエアコン3連の吹き出し口はV8の特徴。直4エコブーストモデルは吹き出し口が2連となる。
ちなみに2015年に登場した現行マスタングは、これまでの北米専用車からグローバルカーとして生まれ変わったことにより、世界中の法規や安全基準を満たさなければならなくなった。
くわえて、これまで数千台だった輸出が、新たに110カ国16万台強に激増することによる各部の念入りなチューニングや製作精度の向上により車両のクオリティは段違いに上がっている(この部分が非常に重要である)。
だからこそ、日本からフォードディーラーが撤退してしまった今(この先もフォード車に乗らないというのなら仕方がないが)、もし現行マスタングやその他魅力的なフォード車が欲しいというのなら、今回取材させていただいたBCDのような、長年自社で直輸入したフォード車を積極的に取り扱い(マスタングに限らずF150やエコノライン、さらにはラプター、ナビゲーターetc)、整備や保証を兼ね備えたアフターフォローのしっかりした店舗であれば、正規ディーラーと同様とまでは言わずとも、それに近い状態で今後もマスタング(フォード車)に乗ることは可能である。
同時に、新車に関して言えばボディカラーや細かい仕様、オプション装備等にこだわって注文することも可能だし、何より現車を見て商談が可能であるということ、そして場合によっては直接試乗が可能だったりするわけだから、「並行モデル」という不安をまったく感じることなくフォード車を楽しむことが可能なのである。
マスタングは、すでに2018年にマイナーチェンジが実施され、フロントマスク等に変更が加えられることが発表されている。2018年以降の顔が好みというならもちろんそちらを入手すべきだが、旧型マスタングの雰囲気を残すこの顔がよければ、なるべく早いうちに程度良好モデルを入手すべきというのがわれわれ編集部の意見である。
走りの性能は圧倒的である。ATとのマッチングも良く、現代のスポーツクーペの名に恥じない。あまりの乗りやすさに、最初は「乗用車っぽくなり過ぎか」との心配もあったが、パドルを使いV8サウンドを響かせれば、それこそ唯我独尊のスポーツクーペの魅力を発揮する。
新型モデルに進化するたびに洗練され【味】を無くすクルマが多い中で(もしくは減らすクルマが多い中で)、いまだ旧型の味を感じさせる新型マスタングのV8モデルは、いままさに買いの1台である。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES