たとえば一昔前のピックアップトラックは、荷台を荷物運搬に使う事が一般的で、だからアメ車の場合、リアにリーフサスをして貨物車的な乗り味を示すのが一般的だった。
SUVとは、そのピックアップの荷台部分にキャノピーを載せた状態を作り、乗員を安楽に移動させることを目的として開発されたが、当初はそのリーフサスが快適性を損ない、後に脱ピックアップを図った乗用車的SUVが一気にブレイクしたのである。
フォードエクスプローラーとは、まさにそうした乗用車的SUVの代表格であり、ラダーフレームは継承するものの、サスペンションは4輪独立懸架、4WDシステムは切り替え不要なオンデマンド式を採用するなど、快適性能や走行性能を一気に高めたのである。
エクスプローラー スポーツトラックとは、そうした乗用車的な洗練性を伴ったエクスプローラーをベースに、リアに荷台を作ったピックアップである。すなわち、逆転の発想から生まれた傑作品と言っても過言ではない。「全米一売れている快適SUVに荷台を付ければ、乗り心地やハンドリングの良いピックアップが出来るじゃないか」と。
だからこその「SPORT TRAC (スポーツトラック)」であり、同じトラックでも綴りに「TRUCK」を使わない事で、並のピックアップでないことを強調しているのである。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=5370×1870×1840ミリ。荷台は、ホイールベースを425ミリ延長して3315ミリとすることで稼ぎだしている。ベース車を踏襲するラダーフレームシャシーを前後に伸ばし、横方向にクロスメンバーを追加して強度を確保。さらにドライブシャフトを2ピース化し、スプリングやスタビライザーを硬めに設定するなど、スポーツトラック独自のチューニングが施されている。
新たに設計されたベッド部分は、1280×1415×555ミリというサイズ。表面には軽量かつ耐腐食性を備えるコダワリのSMC(シート・モールディング・コンパウンド)材を使い、錆びない高強度の荷台を製作。着脱可能なキーロック機能つきハードトノカバーが標準で装備されており、中央のヒンジを軸に前後の個別開閉が可能である。またゲート両サイドやキャビン側底面に収納ボックスや12Vソケットを備えるなど、ユーティリティにも富んでいる。さらに水抜きの穴を備えるという周到ぶりである。
こうしたボディ構造に対し、エンジンは当初、エクスプローラXLTと同じ4リッターV6SOHCのみで、213ps、最大トルク35.1kg-mを発生させたが(5段ATが組み合わされる)、のちに4.6リッターV8SOHCエンジンモデルが追加されているのである。このV8は、296ps、最大トルク41.5kg-mを発生させ、V6モデルにプラス100万円高の価格設定で当時限定販売されていた。
こうした成り立ちのスポーツトラックに試乗した。2010年型のバイセニアルエディションというV8搭載車で1万2000キロ走行車。ワンオーナー車ということで、年間3000キロ程度しか走っていない、いわゆる程度良好の1台である。
スポーツトラックは、基本V6エンジンをメインとして発売されていたために、V8モデルを探すのは至難の業と言われている。それほど中古車としては珍しい存在である(新車で手に入れて手放す方があまりいない)。だからこそ、今回のような低走行のホワイトカラーでV8モデルのような個体は、それこそ奇跡的な出物といっても過言ではないのである(赤いボディカラーなら最高だったのに!)。
乗る前は、「トラックとは言えエクスプローラーベース。先日乗ったエクスプローラーと同じだろう」と高をくくっていたが、さにあらず。乗った瞬間から感じられる高品質感に驚き、走り出して感じる力強さに一瞬にして心奪われたのである。
スポーツトラックは、後席のスペースはSUVと同じだけの容量を確保している。だが、その直後にSUVではないピラーがあり、その分だけ車体の剛性が高まっているように感じるし、実際にハンドリングやブレーキング、また乗り心地等に粗さがまったくなく、それでいて抜群のレジャー感覚の持ち主だけに、実用車というよりはファンカーとしてドライバーの期待を裏切らない。
しかもV8エンジン搭載車ということで、296ps、最大トルク41.5kg-mを発生させ、組み合わされる6速AT等の操作性はSUVと同様の小気味良さを備えているから、動力性能に不満はなく、アクセルを踏み込んだ時に聞こえるV8重低音ととともに満足感はかなり高い。
このクルマ、試乗している途中から、「買ったらどこに行こう? 何をしよう?」そんなことをずっと考えていた。
琵琶湖でバスフィッシングか? それとも千葉にサーフトリップに出かけるか? ヨットやウインドサーフィンもいいかも? それにファミリーキャンプもありだな…。
出不精の筆者だが、このクルマは、乗り手を変身させる力を秘めている。
埼玉県さいたま市に位置するフォード新埼玉・浦和店。常時15台以上の中古在庫を展示しており、今回試乗させていただいたスポーツトラックもその中の一台である。
「前回紹介したMT車のマスタングもそうですが、このスポーツトラックもかなり珍しい個体です。そもそも新車販売時に限定モデルだったこともあり、タマ数が極端に少ないのです。ですが、そういった車両でも認定中古車なら手に入れることも可能なのです」
認定中古車は基本、新車購入された方々からの下取り車がベースとなることがほとんどである。すなわち、ディーラーで整備された素性の知れた個体だけに、安心して購入に踏み切れる。中にはこういった限定モデルを新車で購入して大切に乗り、距離もあまり走らず、といったオーナーさんの次なる買い替えにより、奇跡的な出物が突如として現れることがあるというのである。
「フォードは、正規導入されていないモデルでも限定ですが、発売することが多々あるんです。たとえばあのグリーンメタリックのマスタングがそうですし、MT車で、しかも並行車でも見かけないあのグリーンカラー。新車は即売したモデルです。スポーツトラックに関しては、数回にわけてV8モデルが限定で導入されています。ですが年間3000キロ弱の低走行は魅力です。特に中古車の場合、距離数を気にする方が多くいらっしゃいますので、そういう方をも驚かせる個体ですよね」
認定中古車といえば、アフターフォローの利いた優良中古車という認識があるが、じつはそれだけではなく、並行でも手に入らないような魅力的な限定車の出物に出会える場でもあるのである。
<関連記事>
>> フォード認定中古車検索 を見る
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES