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ミドルサイズにV8+サードシートの先駆者

ダッジ デュランゴ RT (DODGE DURANGO RT)

売れないのがおかしいくらい魅力的なSUV

フォードエクスプローラーがサードシートを採用し、シボレーからトレイルブレイザーが登場したのも、すべてこのクルマの人気ゆえのことだった。一時代を築いたミドルクラスSUVの先駆者・ダッジデュランゴ。もはや歴史的名車として評価されるべき絶対的王者である。そんなデュランゴのノーマル状態の2002年型中古車を発見。10年10万キロ走行車だが、果たしていかに?

更新日:2012.11.27

文/石山英次 写真/田中享

取材協力/ガレージダイバン TEL 0356073344 [ホームページ] [詳細情報]
     GDファクトリー千葉店 TEL 0432153344 [ホームページ] [詳細情報]

中古車は前オーナーの使い方を想像してみる

 いきなりだが、中古車を見て行くコツとしては、基本的に各部のヤレ状態のつじつまが合うか否かが重要だと考える。

 たとえば、ボディ塗装面に結構なキズがあるのに、エンジンルームがピカピカだったり、逆に内装やボディ塗装がめちゃめちゃキレイなのに、エンジンルームやホイール&ブレーキ等が真っ黒だったり…。もしくは、内装がキレイなのに、ABCペダルまでよく見て行くと、かなりつるつるのペダルがついていたり…。

 普通に考えれば、ちゃんと使ってクルマがヤレれば(事故とかない前提で)、全体的にヤレていくものであるから、各部の統一感がなければいけないはずである。だから仮につじつまが合わなそうな箇所が見受けられたら、ちゃんと確認した方がいいに決まっている。

 そしてつじつま合わせが終わったら、いろいろと想像を巡らせ、前オーナーがどんな使い方をしていたかを推測してみる(ノーマルコンディションのクルマになればなるほど、そのための手がかりがたくさんあることになる)。

 まぁそれでも、つじつま合わせはあくまで主観的な判断材料にしかならないんだけど、でも結果的に買うか否かを決断するのは自分なわけで、いろいろ見て自分が納得して購入に及ぶなら、後々後悔はしないはずである(ただ、この方法は60年代や70年代のヒストリックカーとかには通用しない。あくまで10年前後のクルマにだけである)。

 そんな感じでこのデュランゴを見て行くと、10万キロ弱という走行距離と基本、ノーマルな状態のボディや足回りに内装、そしてドライバーズシートのみ多少ヤレている現状をプラスして、さらにセカンドシート以降のシート状態とホールディング機構の動きの適切さを見て行くと、前オーナーがファミーリ系グルマとしてコキ使っていたような惨状を思い浮かべることは困難である。

 分かり難い表現をしたがつまり、距離は走っているけれどその他ヤレ具合は距離ほどのものでは全然ない、ということだ。そして、この「10万キロ」という数値に惑わされずに、個体の状態をちゃんと見極める価値がありそうだ、ということである。

このクルマが売れた理由のひとつが魅力的なフロントマスクだった。ダッジラムピックアップトラックからフィードバックされ、さらにデュランゴ用にアレンジされたフロントマスク。それまでのSUVの泥臭いフロントマスクとは一線を画した精悍な顔つきである。

全長×全幅×全高が4916×1816×1828ミリとなり、現代の基準で考えれば圧倒的に小さい部類に属する(国産SUVでもこれよりデカイものが多数ある)。

このミドルクラスSUVというサイジングにV8エンジンとサードシートを組み込んだことが、当時は超画期的だったのだ。

独身オーナーのプライベートカー?

 このデュランゴの中で一番ヤレている箇所は、たぶんドライバーズシートになる。これは一番使用される箇所だから仕方ない。だが一方で、助手席などのシートはそんなにヤレていないし、セカンドシート以降になるとまったくと言っていいほどヤレていない。距離を考えればほとんど使用されていないと言っても過言ではない。想像するに、独身オーナーがプライベートカーとして使用していたのではないか?

 というのも、セカンドシートやサードシートを畳んだりしてみたが、その際の動きは至極スムーズ。物理的な重さはあれど至って普通に動く。またシート隙間等にゴミやチリの積もりもないし、使用感がほとんどない。だからマジで使ってないんだわ、と確信できる。

 一方で、外装は10年10万キロ走行車と言った感じは少しある。といってもキズがあるとか、凹んでいるとか、塗装がはげているとか、そういったようなものではなく、単なる見た目の印象である(デザイン的な古さを感じる部分もあるだろう)。
 とは言うものの、シルバーボディのデュランゴは比較的珍しいし、何よりほぼノーマル(94%くらい)というコンディションがかなりそそる。
 
 余談だが、各部を見て推測する上でノーマル状態が見れるということは、非常に重要な手がかりを手に入れたのも同然。各部の10年前を想像してみて、現状と比べてみれば良いわけだから。だから仮にシートが張り替えられているからキレイになっていると喜ぶ気持ちも分からないではないが、それは同時に中古車としての状況把握における有力な証拠をなくしてしまったことにもなるわけである(シートを交換しているからといってそれがダメと言っているわけではありませんので誤解しないように)。

搭載されるエンジンは5.9リッターV8OHVエンジン。245hp、最大トルク46.2kg-mを発生させる。今となっては大したパワー数値ではないが、濃密なフィールと過不足ないトルク感が魅力的なエンジンである。

デュランゴは01年にマイナーチェンジを行い、インテリアの意匠が変更されている。この個体は2002年型だから後期型のインテリアとなる。使い込まれた粗雑な印象は皆無である。

この個体の中で一番使い込まれている箇所であるフロントシート。だが、10万キロと聞いて想像する状況とはまったくかけ離れたほど、見た目の印象は良い。座面に使い込まれたシワがある程度である。シートもノーマルであり、このシートはRTだけに装備される2トーンのバケットシートである。

驚くべきことに、クロームのホイールまで純正のままだった。デュランゴを探すのはまだ難しくはないが、正直、ホイールまでノーマルの個体を探すのはかなり難しいと思う。

新車時の走行フィールがいまも残っている

 各部を見ながら、いろいろな推測を行い試乗させてもらった。このデュランゴには、マフラーにフローマスターが装着されているが、それ以外は基本フルノーマルである。

 エンジンは一発で目覚め、野太い快音を放ちながら軽快に走る。この時代のデュランゴに共通しているボディの強固な感じとガッチリしたステアリングのフィール、そしてある程度まではロールを許さない意外に硬められた足回りの印象は、このクルマにもいまだ健在である。
 
 恐らく、距離を考えれば多少なりとも各部のヤレは否めない。ただ、下手にいじられていない分、クルマの素性はいいし、当たり前に消耗品関係(ここではショックとかタイヤとかそういったものを含む)を交換していけばかなり良質なデュランゴに生まれ変わるのではないか? そんな印象を抱かせるほど走りに関するネガティブな要素は見つからない。

 また、ボディ等もまったく距離を感じさせないコンディションであり、恐らく耐久性ある頑丈なSUVをノーマル状態で乗ってきた前オーナーの使い方が要因であろうと推測する。

 もちろん、このままでもある程度は乗れると思うし(実際に筆者も欲しいと思ってしまった)、デュランゴを体感することは可能だが、ここまで素性がいいならあえてもう一歩踏み込んでリフレッシュさせて乗りたいとも思うのである(せっかくいいもの持ってんのにもったいないということ)。

セカンドシート以降は、もともとあるオリジナル状態のシートのシワがまだ残っているような状態である。距離を考えれば、ほとんど使用されていないといっても過言ではない。

サードシートも上記のセカンドシートと同様の印象。意外にも使えそうなサードシートであることがわかった。

サードシートを収納しセカンドシートを折り畳むと広大なスペースが現れる。ただ、フルフラットにはならず、セカンドシートのバックレストが若干浮き上がった状態になる。

見切りは良いし、各部のコンディションも上々だし、かなり運転しやすい個体であった。しかも置き場にあった状態からそのまま試乗させてもらったから、あえてこの取材のためにコンディション調整をしたわけでもない。とういうことでかなり現実に近い状態での試乗だったのである。

リフレッシュするには最適なノーマルコンディション

 フローマスターを装着した排気サウンドは野太く、アクセルを踏み込むと高まるV8サウンドはかなり魅力的。アイドリングも安定しており、踏み込めば即座に反応し、エンジンはしっかりと回る。

 コラムシフト採用するシフトのストロークや操作性は軽く、格段に使いやすい。こんだけ扱いやすいコラムシフトは最近では見当たらないと思ってしまうほど操作が軽く的確である。

 ブレーキに関しては、個体差ではなくデュランゴの特徴として、若干深めの印象。国産感覚のつもりで踏むと最初は冷やっとすることもあるかもしれないが、これは慣れの問題であって、消耗などとは関係ない。

 最近、フルサイズ系のアメ車を扱うことが多かったこともあり、またプライベートでセルシオを運転することもあった経緯からか、デュランゴの車体が非常に小さく感じられてちょっと驚くほど扱いやすかった。

 もともとこの手のミドルサイズSUVが売れた理由は、扱いやすいボディにV8が搭載され、そしてサードシートが装着されているということだった。それにデュランゴの場合は、ダッジらしいイカツいフロントマスクが付いてくる。それこそ人気にならない方がおかしいくらい魅力的なアメ車だったのである。

 そんなクルマが68万円(しかもノーマル&ショップの管理ユーザー車)。現状のままで乗ってもある程度の満足感は得られるだろうが、リフレッシュして、現存する最良のデュランゴを目指すのも面白いだろうと思う。

時間があったので、各部をいろいろ動かしてみたが、ご覧の通り、どこもまったく異常がなく、極めてスムーズに動いたとともに、細部の隙間とかにチリやホコリが一切なかったのには驚いた。

ステアリングに擦れや破れなどもなく、各部のスイッチも的確に作動する。

こういったパワーウインドー系スイッチの動作確認も行ったが問題なし。現状の価格68万円は正直、安いように思うが、それは年式、走行などを加味した適切な価格であり、何か問題があるためではないことを筆者自身が確認したのである。

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