実物を見た第一印象は、現行チャージャー等に見る特別限定モデル・モパー11を題材にしてチューンしたデュランゴかと思った。だがよくよく聞いてみると「ACRだよ」との返答が。
そうか、なるほど! ACRとは、あのバイパーにラインナップされた「アメリカン・クラブ・レーサー」の略称で、バイパー後期に登場した公道最強マシンだった。その威光を受け継いだマシンとしてデュランゴ・ベースに製作されたのがコイツである。
ブラックボディにペイントされた青色はモパー・ブルーをベースに調合されたもの。ボンネットフードからルーフ、ミラー、リアウイングへとペイントされ、ホイールも同色に塗られている(ACRと同じペイントパターンだ)。
一方、インテリアもエクステリア同様にブルーを基調としたカスタムが施されており、シートはアルカンターラとレザーのツートーンに張り替えられ、ステッチをオレンジとすることで、旧車ならではの古臭さを消し去っている。
ベースとなっているデュランゴは、前回のエントリーで紹介したマッスルSUV的な存在。2010年からコツコツ仕上げることで、NAエンジン最強のパフォーマンスを示している。
具体的には、5.9リッターV8をベースに、高橋氏にオーバーホールされた手組みエンジンに吸排気系をチューンし、へダースやマフラー等で味付けすることで、メカニカルな生々しいサウンドとキレ味を示す。さらにNOSを装備し、一瞬の速さにもこだわる姿勢を示していた。
と同時に足回りを改善し、ローダウンと減衰力を調整したショックで乗り味とハンドリングのキレを高め、一方でAPレーシングの6ポッドブレーキと大径ディスクで止まることへの抜かりもなく、SUVでありながらもストリートでかなりハードな走りに対応することが可能だった。
「時間をかけてメカニカルな部分の進化がある程度のところまで来たので、次は外装をアレンジしたいとのオーナーさんの希望があり、ブラックにオールペンも考えたのですが、どうせなら特別な存在に仕立てよう、ということでACR版の誕生ですね」
もちろんオリジナル・デュランゴにACRは存在しない。だが、これを見る限り、時代が時代なら、そしてダッジなら、デュランゴベースで誕生させていたかもしれない…。そんな印象を与えてくれる仕上がりだった。
この年代のダッジデュランゴは、いまだに人気があると言う。しかもそれは「古くて安いから」というような単純な理由ではなく、「やっぱりカッコいいから乗りたい」という方が多いという。それが理由に、この年式のデュランゴに100万円以上の費用を用意して「キッチリした状態で乗る」方が後を絶たないとも。
「このデュランゴはいわゆる90年代のアメ車ということで、もう20年以上も前のアメ車になるんですが、クルマとしての奥行きが深いと言いますか、いまだに問い合わせが多いんですよね。あとデュランゴだけでなく、タホやサバーバンでも角張った2世代前のモデルの問い合わせもありますし、C1500なんかも多いですよね。世の中的には、現行モデルのマッスルカーなんかが人気の中心なのかもしれませんが、それと同時に90年代のアメ車に乗るというプチブームがあると思います。いわゆるブーム再燃ではないですが、日本で一番アメ車が流行った時代・アメ車のゴールデンエイジのクルマたちは、新たな魅力を伴って、新しいユーザー層に支持されつつあるのかもしれません」
「それにいじる楽しみがあるのも事実です。たとえば2011年以降のアメ車は、車検法等の関係から、たとえばマフラーを交換するのも面倒くさい。最新のC7コルベットなんかは、マフラー交換するとパワーダウンするとまで言われています。ですが、90年代のアメ車たちは、最新のアメ車が持つ質感や速さこそないですが、それに勝るとも劣らないデザイン的魅力といじる楽しさを持っています。圧倒的に速くはならないですが、いじることで体感できる『変化』が確実にあるんですよね」
筆者のアメ車原体験は、まさにその90年代のアメ車たちだった。それから18年、様々なアメ車を見てきたが、たしかにそれは一理ある。若干の古臭さは伴うものの、動力的には劣るものの、かなり質素な安っぽさ全開ではあるものの…、今見てもとにかく魅力的なアメ車がいっぱいである。
それを単に「古い」といって残骸にしてしまうのではなく、リニューアルやリフレッシュさせてまた新たに命を吹き込む作業も、アメ車業界には必要な作業であると思う。それを実践しているレーストラックに問い合わせが殺到している理由もよくわかるのである。
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