HPPの代表、長池氏は、各誌誌面を賑わせているチャレンジャーのオーナーである。自らの愛車に様々なチューンを施し、また走行テストを重ね、それら経験が自社の各種チューニングメニューに生かされている。
で、ある日、定期的に参加しているサーキット走行会に出撃した。もちろん、走るのが好き、ということなのだが、それ以外にもマシンの耐久性や変化等を知るためにも積極的に走り、様々な状況での車両データの洗い出しを行っているのである。
場所は富士スピードウエイ。マシンはハイチューンのダッジチャレンジャー。もちろん気持ちよく走行しチャレンジャーの状態も上々だった。がしかし。走行後に公開された参加車両のラップタイムを見て驚いた。とあるシボレーコルベットC6のノーマル車に約2秒差で遅れをとっていたのである。
もちろん、その差の原因はいろいろあるだろう。ドライバー自体の腕の差かもしれないし(笑)。
で、長池氏が出した理由その差の要因とは、ベースマシン自体の差であるというもの。すなわち、スポーツカーとマッスルカーとの差である。かたや車重1500kg程度の低重心スポーツカー。ハイスピードサーキットの富士なら空力の差も間違いなくある。
一方、車重2トンを超えるスポーティクーペ。パワーを上げ、足を締め上げても物理的な限界が確実にある。もちろん、競わずただ走らせれば、その驚くべきワープ感の気持ちよさに思いっきり浸ることはできるが、チューニングショップとしては、その差に黙ってはいられない?
ということで、自らにコルベットを購入し、コルベットの素の能力とチューニングの可能性を探る作業を始めたのである。
HPPの長池氏が購入したコルベットは2011年型Z06。Z06とは、2005年に登場したC6コルベットのトップモデルだ。
当時のルマンでクラス優勝したC6-R譲りのレーシングテクノロジーが注入されたGM渾身の力作であり、エンジン排気量が6リッターから7リッターへ、さらに1Gを越える旋回、減速時でもオイルが偏らないドライサンプ潤滑システム採用、チタンコンロッド&インテークバルブ使用等、当時のコルベットの中では別格の存在だった。
搭載エンジンLS7は7リッターV8OHVのNAエンジンで505hp、最大トルク470lb-ftを発生。ギアは6速MTのみ。
また、ボディにも手が加わり、コンポジットボディパネル、アルミニウム製フレーム構造、マグネシウム製エンジンクレードル、カーボン製のボディパーツなど、徹底的な軽量化の追求によって1440kgにダイエットしている。その一方で、脱着式だったルーフを固定したクーペボディとすることで剛性アップも抜かりなし。
OHVは、ヘッド周りが小さく納まってくれるから馬鹿デカいDOHC4バルブヘッドばかりを見てきた者には感動的な小ささである。くわえて、ドライサンプ化でオイルパンも極薄になって、搭載位置もまた地面に擦らんばかりにLS7は低いから、パワーは上がり、ボディ剛性も上がり、それでいて軽量化&低重心でコーナリングスピードが上がる。だからそれは走らせれば走らせるほど感動するマシン、と言われているのである。
そんなコルベットを入手し、早速走り比べを行った。すでに様々なシチュエーションで乗っている長池氏いわく、「たしかに軽さがもたらすドライバビリティの良さは別格ですね。ですが…。正直、遅いですよ(笑)」
正確にいうと、チューンナップされた車両や自身のチャレンジャーと比較すれば、エンジンパワーや吹け、フィーリングを含めたエンジンの印象が大人しいというもの。想像していたような爆発的な加速感といった印象はなく「なんか眠いエンジン」。それを一言で「遅い」と表現したわけである。
もちろん、購入したZ06自体が4万キロを超える中古車であるという事実にも、そう感じさせた可能性はあり、早速あれこれと手を入れ始めた。
まずはオイル交換。長池氏が絶賛してやまない 「ROYAL PURPLE (ロイヤルパープル)」のハイグレードオイルを使用し、エンジン、ミッション、デフのオイル交換を行った。
ロイヤルパープルのモーターオイルとは、アメリカ・テキサス州に本社を置くロイヤルパープル社が独自に開発したオイルであり、特殊添加剤・シナーレックを配合した、高い酸化防止性能を持った100%化学合成のオイルである。
このシナーレックが超強力な被膜を形成し、フリクションロスの大幅な低減が期待でき、エンジンやミッション、デフの動きが本来持つ性能に近くなるという。
このオイルを愛用している長池氏は、試乗後即オイル交換を行っており、それだけでも十分に効果が体感できたという。
「激変ですね。『オイルでそんなに変わるか』と思われるでしょうが、本当です。これは体感してもらわないとどうにもなりませんが、弊社で交換されたオーナーさんからも極めて高い評価を頂いています」
さらに、Brisk Racing製のレーシングプラグにプラグ交換を行い、ECUの調整を若干だが暫定で行っている。そしてこれら仕様変更により、エンジンの回転フィーリングが変わり、高回転域まで軽く回るようになった。
ただし、何も変更していない時から気になっていたた高い水温を抑えるため、クーラント交換、ロイヤルパープルのクーラント添加剤の添加、レーシングサーモスタットへの交換を行い、ECUもそれに合わせてデータ編集することで、ノーマルよりも水温を低く抑える変更を加えているのである。
この状態でのパワー数値等は計測していないから不明だが、それでも驚く程の体感上の変化が現れているという。いわゆるライトチューンレベルになるのだろうが、「これぞZ06」といわんばかりの体感フィールを味わわせてくれるようになったのである。
だが、ここからがスタート。この先、吸排気系のパーツを交換し、そういったパーツ装着に伴うECUのセッティング変更は続けていき、理想的なデータの製作を目指すのである。
なお、HPPには今後、ハブ式のシャシダイが導入されるから、その時点でパワー数値の変化をも測定する予定である。
チャレンジャーで一時代を築いたHPP。今度はコルベットを丸裸にし、最良なチューニングプランを製作する!
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