以前HPPで取材をしていた時に見かけたクライスラー300。その時点では「お客さんからのチューニングかサービス依頼かな」と勝手に思っていた。が、しばらくして連絡したら「バイトスタッフがドライブしてドラッグレースに出場したんです」と長池氏は言う。
しかも乗って行った車両はデモカーのコルベットC6Z06かと思いきや「300」ですと。
ドラッグレースというのは今年3月に行われた「もてぎストリートシュートアウト」で、愛車で気軽に参加できるドラッグレースイベントというからコテコテのレーシングマシンで参加したというわけではない。
だが、HPPがチューニングショップである以上全くのフルノーマルではないだろうと思い300の撮影をお願いした。
まずは300SRT8についてだが、初代は2005年に登場。2012年にボディ等のモデルチェンジが行われ、翌2013年に追加されたハイパフォーマンスモデルである。
搭載されるエンジンは6.4リッターV8、ミッションは当時まだ5速ATであった。余談だが、2015年に5速ATは8速ATに進化し、2018年まで正規導入されていた。
で、取材個体は2013年型クライスラー300SRT8のディーラー車。4年ちょっと前に仕入れた中古車ベースの個体で、入手後にエンジン不調が発覚し時間が取れなく手がつけられなかったが、このたび修理が完了したとのこと。
それがご覧の300SRT8。
「もともとは全オイル交換などきっちりメンテナンスを行ったのち、PCMチューニングを施しライトなコンプリートカーとして販売しようと考えていました。しかし入手後にエンジン不調が発覚し約4年間手付かずのままだったのですが、今年になって一名バイトスタッフも入ったことでやっと修理を行いました。もともと自分自身が乗りたいというのもあったのですが、修理が完了して乗ったらやっぱり楽しいクルマでした」
エンジン修理の内容はここでは割愛するが、もちろんノーマルではない。PCM現車セッティングまで施工し、ノーマルとは別物になっている。
その激変ぶりに長池氏はコンプリートカーとしての売却をやめ、お客様へのフィードバックにも活用するデモカーとして残しておくことを決めたという。
「ちょうど今ドラッグ仕様にすべくリアショックやタイヤ、ホイール等を8月3日に行われる『もてぎストリートシュートアウト』で試してみようと思っています」
なるほど。だが、ちょっと解せない部分もある。それはなぜドラッグレース?
というのも、隣に並ぶC6Z06で筑波サーキットや富士スピードウエイを走っていたのを筆者は知っているし、その前のダッジチャレンジャー6.1Lでもサーキットを走っていたから、てっきりエンジンパワーやコーナリング性能等のトータルパフォーマンスアップを狙っているとばっかり・・・。
「もともと高校生の時にストリートゼロヨンを初めて見てチューニングに興味を持ったので、基本ドラッグレース好きなんです」
へえー、そうだったんですか! ということで改めて、なぜ300SRT8なのか。
それは、HPPで取り扱うことの多いダッジチャレンジャーやチャージャーを見ているうちに「右ハンドルのディーラー車でチャレンジャーやチャージャーと同じ性能が手に入る300SRT8をコンプリートカーとして販売しよう」と考えたことに始まる。
何と言っても392エンジン搭載車が安価で手に入る。にもかかわらず基本メカニズムはチャージャーやチャレンジャーと一緒だから、チューニングするにも同じパーツが利用できる。
チャレンジャーやチャージャーとは違いディーラー車だと右ハンドルではあるが、比較的安い。ちなみに現時点で取材車と同レベルのノーマル個体なら200万円台、後期型8速ATモデルでも300万円台から入手可能というから、ダッジチャレンジャーやチャージャーを購入することを考えたら断然お得。
で、実際に自分の愛車としていじってみれば、期待通り楽しい! ということだから、まさしく(想定通りの)お宝車発見ということだろう。
なので、今300SRT8に乗っている方がちょっとした変化を求めたいと思うなら、HPPに相談してみるといいだろう。
ということで取材個体だが、エンジンチューン以外は純正ブレンボブレーキのノーマルパッドを、効きが強いスポーツパッドに交換した程度。これは、「修理中はまだコンプリートカーとして販売することも考えていた」からで、購入した方が好みのチューニングが出来るようにと考えていたため。
だが、完成後にデモカーにすると決めたため、各テストはこれからだが、オリジナルサスペンションキットをベースとしたドラッグレース向けショックも制作メーカーとともに検討中で、今回初めて取り扱うホイールもアメリカから輸入し8月3日にテストを行うという。
リアタイヤは肉厚タイヤでたわませることでグリップを上げるために、ノーマルブレーキでの限界サイズになる17インチを履かせている。
一方パワートレイン系では、エンジン・ATF・デフと全てトライボダインのオイルに替えていて、HPPが得意とする現車セッティングのPCMチューンも行っている。
「もともと販売車両として検討していたので必要最低限で修理したのですが、売らないと決めたので今後さらにチューニングを進めたり、様々なパーツをテストしたいと考えています」
また、300SRT8の運転席のフルバケットシートに使用されているシートレールは、以前のデモカーのチャレンジャーに使用していた時の助手席用のもの。特に使うこともなかったので置いておいたらしいが、なんと右ハンドルの300SRT8にドンピシャで使用可能だった(笑)
「乗ると右ハンドルのチャージャーといった感じですよ。チューニングすれば同じ効果が得られますし、300のどデカイフロントグリルのおかげで、水温がチャレンジャーやチャージャーよりも上がらないという利点があります。右ハンドルを我慢出来るのであれば、チューニングベースとして考えるとかなり楽しめる車両だと思います」
一見するとリアタイヤが変わった普通の300SRT8に見える。が、エンジンを始動をするとドッッドッッド・・・と、まるでハーレーのような振動にタダモノではない感じが詰まっている。その変貌ぶりに、恐るべし300SRT8チューンド by HPP。
次回のドラッグレースでどのくらいのタイムを刻むのか。非常に興味深い。
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