走り出した瞬間から感じる明確な違い。旧車にありがちなドタバタとした衝撃がまったくなく、極めてスムーズに走るサードカマロ。ステアリングを左右に切ると自分で意図した動きがそのままステアリングに伝わり、そして反応が鋭い。それでいて乗り心地はかなり良く、路面からの当たりはきわめて優しい…。まるで夢のようなサードカマロ。
これは前回紹介したカマロ・スペシャルショップのエイブルが、自社のコンセプトに基づいて製作した1台。何か高価な特殊パーツを装着したわけではなく、単純に消耗品を交換してちょっとした補強をしたものだ。
このサードカマロに初めて乗って以来感動のあまり、長期的なリポートを視野に入れた企画を考えたいと思いっていたところ、いきなりのSOLD OUT(そのために前回ちゃんと撮影していなかったのに〜)。けど、「やっぱり分かる人には分かるんだなぁ、あのカマロの魅力が」とも思いつつ、どうせならと購入されたオーナーさんに納車後の話を聞いてみた。
取材したのは国立在住の西野勝浩さん。西野さんは98年型タホでアメ車デビューを果たし、現在は2001年型タホを所有している。また、その他にハーレーを所有するなど、アメリカンなノリや雰囲気が大好きと話す。
「以前、アメフェスに行ったときに、そこで見たカマロのパレードランに影響されてカマロに興味を持ちました。所有していたタホの売却も視野にいれて、それからカマロ探しです。最初はサメカマなど数台が候補(旧車系)に上がりましたが、程度と金額に見合うクルマがなかったために、サードはどうかな? と。ワイルドな雰囲気が残っている最後のカマロですよね」
日本全国のショップを視野にサードを探し始めた西野さん。主にネットで探し、愛媛等でブツを発見するも写真だけでは判断できず、関東圏に絞り再び検索の日々。そこでエイブルを発見し、行けない距離ではないと、とりあえず見に行くことに。
行ってみると「ちょっと乗ってみなよ」とエイブルの社長が気軽に試乗させてくれたことに感動し、例のブラック・カマロを即決購入することになったという。
「すでに20年以上のクルマですが、違和感が全くなかったです。それと意外とキビキビ走るし、迷うことなく即決でした」
西野さんは、98年型タホに乗っている時代に結構な数のトラブルを体験したと言う。といっても路上で立ち往生といった類いではなく、いわゆるマイナートラブルってやつだ。だが彼はそれによってアメ車への愛情が減るどころか、一層増えたということで、「ちょっと手にかかるやつほどかわいいじゃないですか。それと手をかけることで完成させていく楽しみもありますし」という。そんな西野さんだからこそ、すでに20年車というサードカマロの購入に際してもまったく不安がなかった。
「エイブルさんは、車輌自体のコンディションとか状態を的確に説明してくれたし、何より突然行ってその場で試乗させてくれただけに、『よっぽどコンディションがいいんだな』と思いましたね」
納車は8月上旬。当日、西野氏はそのまま河口湖方面までドライブに出かけた。
「実際に乗ってみて、まず思うように動くのに驚きましたね。自分のタホから想像するアメ車像とはまったく異なる動きです。それとV8サウンドも気持ちいいです。タホにもV8搭載されてますけど、まるでV8っぽくないんですよ、あの5.3のV8は。それにくらべサードのV8は生々しいですよ。クルマ自体の反応もいいし、馬力も240hpとのことで圧倒的に速いわけではないですが、なかなかやるな〜って感じで楽しいです。納車から約1ヶ月ですがすでに1000キロちょい乗りましたね」
西野さんに納車されたサードカマロは90年型IROC-Z。 D車で約7万7千キロ走行の1台だった。この車輌はもともとエイブルの実験車輌でもあり、これまでのノウハウがつぎ込まれた1台でもあった(前回取材時掲載)。
購入が決まりその後手が加えられたところは、いわゆる納車前整備(国産オルタネーターに交換とか)とシートカバーが装着されたこと、それと前後異形サイズの状態でタイヤが新品に交換されている程度。つまり、われわれが前回取材した時点から足回りに関する部分で手が加えられたのはタイヤだけだった。
余談だが、今回この前後異形サイズをあえて希望した西野さんによれば、「アメ車のイメージである前傾姿勢が好み」ということだが、これに関しては「走る、止まる、曲がる、を考えると本来は好ましくないけど、まぁかといって絶対にダメでもないし、そうしたいアメ車オーナーの気持ちも理解できます。なので、出来る限りのバランスを保った状態で納車しています」と、エイブルの原代表が説明してくれた。
にもかかわらず、再び試乗した際のあの滑らかな走りはやはりエイブルのコンセプトである「もともとの状態に戻してやる(劣化した部分をもとに戻してやる)」というものが確実に効いているのだろう(ちなみに、前後異形サイズにこだわらなければ、当たり前だがもっと良かったはず)。
サードカマロといえば、すでに20年車。だが劣化した部分を出来る限り元に戻し、本来の状態に近づけてやることでクルマが見事に生き返っている。また、このカマロのような状態を他のサードカマロでも作り出すことはもちろん可能である(母体となるボディの状態にもよるのだが)。サードを手に入れるなら、是非とも「劣化部分のリフレッシュ」から目をそらさないで欲しい。そうすればこんなにも乗って楽しいサードが誕生するのである。
ただし、日本国内はもちろんアメリカ本国においてもサードカマロの中古車が激減しているのは事実であり、いつ手に入れるのか?(実際にエイブルにも数台の客注が入っているがなかなか見つからないという)という他の問題も出てきている。
恐らくあと10、15年もすれば、サードカマロは、現在では考えられない金額を用意しないと入手できないコレクターカーの1台になることは間違いないと筆者は考えている。サードが欲しいなら、ある意味、時間との勝負である。
<関連記事>
>> シボレーカマロ (CHEVROLET CAMARO) vol.1 を見る
>> シボレーカマロ (CHEVROLET CAMARO) vol.2 を見る
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