更新日:2015.06.15
文/椙内洋輔 写真/フォード
フォードGT40とは、1964年にフォードが作り上げた2座ミドシップのレーシングマシンである。
その前年にフェラーリ買収を仕掛け、結果的に断念せざるを得なかったフォードが、ル・マン24時間など欧州の有名レースにおいてフェラーリの鼻を明かすために企画されたマシンであった。
そしてGT40は、初参戦の64年こそ熟成不足で勝てなかったのだが、翌65年からは連戦連勝で欧州のレースシーンを席巻することになる。それまで小さな専門ファクトリーがレーシングカーを作って戦うのが当たり前だった当時の欧州では、アメリカの巨大メーカーが全力投入してきたこと自体が晴天の霹靂に近い脅威だったに違いない。
数多くの逸話を残したGT40を作ったフォードは、GT40誕生からちょうど40年が経った2004年に、その再現版たるフォードGTをデビューさせた。
その姿は、一瞬、当時の面影そのままに…、と見間違うほど精巧なものだったのだが。その実、よくよく見ていくと…。
フォードGT40は、打倒フェラーリのために作られたレーシングカーだったが、フォードGTは街中を普通に走るスポーツカーとして企画されたものだった。
そこに純然たるレーシングカーだったGT40当時のプロポーションを再現版にもたらせば、公道を走ることを目的とした商品としてうまく行かないのは自明の理。
そこでGTは、全長、全幅とホイールベースを伸ばし、4輪が描く長方形のタテヨコ比率をオリジナルのGT40とまったく同じにしたのである。つまり、見た目は瓜二つだが、オリジナルよりもまるまるひと回りデカいフォードGTが誕生したというわけである。
余談だが、当時、復刻モデルを数多く世に送り出していたフォードにとって、フォードGTは最高の商品だったに違いない(フォードサンダーバードが復刻し、マスタングが初代デザインをモチーフに改良され、ブロンコや2座オープンのシェルビーコブラまでが検討されていたというから凄い話である)。
フォードGTは、限定モデルとして1500台生産され、2006年に生産終了となったが、それから10年、フォードは再びフォードGTを公道に解き放つ。
しかも、次なるGTは、すでにレーシングカーが製作され、ル・マン24時間レース等のレース活動にも参戦する。すなわち、64年当時のGT40と04年に復活したGTと両車の性格を兼ね備えたマシンが誕生することになる。
今回発表されたレースカーはいまだデモンストレーション版ということなのだろうが、ル・マン24時間レースでは、「LM GTE-PROクラス」に参戦する予定という。
ちなみに、来年1月、フロリダで行われるデイトナ・ロレックス24時間がデビューレースになる模様だ。
なお、新たにデビューするフォードGTには、3.5リッターV6エコブーストエンジンが搭載され、600hp以上のパワーが与えられるというが、ボディは、こうしたレース活動における数々の技術的フィードバックが当然行われることになり、スポーツカーとしての性能向上にもつながるのである。
フォードGTの復活とレース活動参加、加えてル・マン24時間レース参戦のニュースは、今のフォードの好調さを物語っているものだとは思うが、個人的にはル・マン24時間レース「参戦=即優勝」こそが至上命題であると思うし、フォード自身もそれはわかっているはずである。
そういう意味でフォードの「本気」が見ものであり、バイパーやコルベットがル・マン24時間レースを走るというのとは、ちょっと次元の違う話なのである。
ちなみに2016年とは、フォードGT40がル・マン初制覇を達成した1966年からちょうど50年目のアニバーサリーイヤーということになる。
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