現行マスタングのシェルビーはGT350のみとなっているから、いわゆるシェルビーGT500とは先代マスタングの最高峰モデルということになる。
そんなシェルビーGT500は2007年にデビューし、毎年のように進化を続けていた。2009年当時までのGT500のマックスパワーは500hp、2010年型は540hpとなり、2011年型は550hpとなる。さらに2013年では当時最強の662hpとなり、名実ともに最高パフォーマンスを発揮する当代一のマッスルカーとなったのである。
でもなぜ、こうした進化が行われていたのか。それはひとえにライバル車との関係にあった。その当時の511hpのコルベットZ06や647hpの同ZR1、それにデビュー間近だったカマロZL1…。要するに、自分ひとりだけ歩みを止めることは許されない状況だったためにモデルイヤーごとにパワーアップが図られていたのである。
そんなシェルビーGT500のエンジンは基本的には5.4リッターDOHC V8+イートン社製スーパーチャージャーからなる(最後の二年間のみ5.8リッターになったが)。
ツインカムユニットなのはフォード社内のSVT(スペシャル・ビークル・チーム)が深く関わっていたからであり、先々代マスタング・コブラ(マイチェン前)から彼らはそれを続けていた。そして、エンジンを組み上げた責任者のネームプレートをブロックに貼るのも、彼らの流儀である。
組み合わされるギアボックスは6速MTのみ。ゴルフボールのような白い球型シフトボールがノブに刺さっている。もちろん、これは当時のチューニングマシンを再現したものだが、意外とかわいらしくセンスよく見えるから不思議である。
しかもこれが手の中でかなりしっくりくる。お遊びとも思える演出だが、実用性が高いことを付け加えておこう。 そう、シェルビーGT500とはデビューした2007年当時からMTのみのギアボックスでドライバーを制限していたのである。
で、そんなシェルビーGT500の2010年型、2万7000キロの個体を紹介しよう。価格は498万円である。
現行型はレースシーンにおいても非常に美しい完成したスタイルだと思うが、この型のマスタングは過去の産物の復刻版というカタチを重視したために真横からみるとボディの分厚さが目立つ。だが、そこがまたいい。この年代ならではの無骨さこそがアメ車の醍醐味でもあるし。
すでに7年落ちの中古車ではあるのだが、古さは微塵も感じさせず、この状態を維持しつつ5年10年乗っていけば、古さと状態の良さを伴っていい感じにヤレたたロレックスのような輝きを放つに違いない。
現行型のシェルビー350GT-R。低くワイドな流線型ボディが上記の旧型との明白な違い。こちらはまさしくワールドワイドな最新モデル。対して上記の旧型はアメ車らしさ満載の無骨さ。
ついに500万を切った価格帯。V8の音色が最高のエンジン。ヘルキャットは「キーン」とスーパーチャージャーサウンドが盛大だが、シェルビーはV8サウンドが色濃くほえる。音色だけで言ったら最新マッスルのなかではダントツのナンバーワンだ。それだけでも購入の理由になるといっても過言ではない。
また歴代シェルビーGT500は、上記のようにそれぞれの年式によるモデルバリエーションが存在するが、それはあくまでも歴史的な位置づけであって、そのもの自体は正直、どのモデルを手に入れても品質や性能における差はあまりない。いや、正確に言えば最終モデルたる2013年から2014年だけは別格だが、それ以外の年式のGT500を手に入れるのならば、大差はない。
それにシェルビーGT500におけるもう一つの重要要素として、ボディカラー+レーシングストライプの組み合わせが挙げられる。個人的にはこの組み合わせこそが最高に重要だとも思っており、もしお気に入りのカラーリングが見つかったなら、パフォーマンスはどの年式でもお墨付きであるだけに、飛びついてしまっても構わないと本気で思っている。
もちろん、その個体の程度やコンディションが重要になるのは言うまでもないが、BCDのように販売個体に責任をもっているショップでの購入の場合は、価格帯と好みとが一致すればそれほどの心配はいらない。
BCDの車両は、主に直輸入された車両に関しては日本にて第三者機関の鑑定士によって車両の状態をみたびチェックしている。それほど中古車のコンディションに神経を尖らせているという証拠である。
今回試乗したGT500は、2010年当時BCDが新車で日本に入れたもの。ワンオーナーカーの2万7000キロ走行であり、これまでずっとメンテナンス担当をしてきた経緯もあり、整備状況が明白。
しかも試乗時に各部を見たが、どの部分も驚くほどキレイ。それは単純に「掃除しましたよ」というレベルではなく、前オーナーさんが大切にしてきた車体ということが如実に伝わって来る隅々のレベル。
くわえて、中古車として再販するにあたりクラッチを新品に交換しており、ハイパワー車の泣き所ともいえる箇所のリファインがなされているのも嬉しい。
エンジンは、5.4リッターV8スーパーチャージャー。540hpを発生させる。このエンジンはパワーだけでなく、魅せるエンジンであり、聴かせるエンジンでもあり、ドライバーを魅了する至極の名機であると個人的にも思う。
インテリアは、基本的にシンプルな構成だが、各部にレーシーなアイテムが使用され、ドライバーの気分を高揚させる。走るクルマとしては十分な装備と雰囲気だと考える。なお、こちらの車両にはナビが搭載されているのは嬉しい。
レザーとスエードとブルーラインが描かれたデザインされたシート。フォードのシートは昔から定評があり、ホールド性が良好で、しかもボディとコーディネートされたデザインが最高にマッチしている。
実際に走っても、ショートストロークの硬質なシフトがシェルビーらしく、クラッチも重い部類に属するものだがつながりにクセがなく安易にスタートできるのが特徴である。
しかもその際の濃厚なV8エンジンフィールがめちゃくちゃ素晴らしく、「フェラーリを越える」とまでは言わないが、それに伍するくらいの魅力は備えていると個人的には思っている。540hpでも機械的な信頼性がメーカー基準で収まっているのが何とも素晴らしいではないか。それでいて高速道路などでひとたびアクセルを踏み込めば、540hpの旧式モデルとはいえ、異次元のブチ切れた走りを披露してくれるのだから最高だろう。
今回、この先永続的に価値が続くであろう2台をセレクトするにあたり、シェルビーGT500は即決だった。しかもあえての前年式モデル。もちろんパフォーマンスでいえば後期型の2013年以降が爆発的パワーで人気高だが、個人的にはそこまでのパワーはいらない。しかも2013年型からは、ベースとなるマスタングと同一のデザインであるというのも好みではない。
ここで紹介している2010年当時は、ベースとなるマスタングがあり、シェルビーGT500はマスタングとは異なるシェルビー顔をしていたのである。そういう部分もこだわりとして必要かと思う。
それにホワイトボディに鮮やかなライトブルーのレーシングストライプがなんとも美しい。娘の私立進学がなければ筆者が即買したいほど好みに合ったモデルであった!
なお、この個体だけでなく、シェルビーGT500自体を数多く輸入&販売しているBCDによれば、2007年から数多くの歴代モデルが誕生している中で、パワーと性能のバランスが一番整っているのが2010~2011年モデルだという。
ボールタイプのシフトノブが絶品。操作性が良好なだけでなく、カチッとしたフィールが最高の代物。エンジンとシフト操作の感触もシンクロしているからなお楽しい。
クラッチはたしかに重いが、それでもチューニングカーのような重さではなく、若干重いと感じる程度。ペダルの位置も適切であり、スポーティな走りに十分対応できる。何よりクラッチの上げ下げだけで発進可能な操作性の良さと低速トルクの巨大さに驚く。
しかも、2013年から662hpモデルが登場するが、ユーザーの意識がそちらに向かっていることもあり、車両コンディション的にも良好なものが見つかる可能性が高いという。
ただし、シェルビーGT500自体の絶対数が少ないだけに、お気に入りのタマを見つけたら素早く入手すべきとも。
また、機械的な信頼性は全く問題なく、メンテナンスフリーとはまではいかないが、それでも定期的な油脂類の交換チェックやテスターチェック等で十分にまかなえるし、500hpオーバーのマシンだからといって怖気づく必要はなったくない(さすがフォード社製)とも語ってくれた。
今回紹介した2010年型GT500に関して言えば、各部のコンディションが良好のかなりの上玉だったし、ホワイト+ライトブルーのボディカラーがアメ車らしく(旧顔マスタングにとても良く似合っていた)、数多くのGT500を取り扱っているBCDにおいても「状態含めレアな存在です」というのである。
シェルビーであり500hpオーバーのMTという敷居の高さでドライバーを制限する。だが、こんな魅力的なアメ車をモノにするオーナーさんがホント羨ましい。
SVT専用鍛造アルミホイールが装備され、ブレーキはもちろんブレンボ。圧倒的な制動力が魅力。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES