TEST RIDE

[試乗記]

717hpを発生させる大排気量V8スーパーチャージャー

2022 ダッジチャレンジャー SRT ヘルキャット ワイドボディ

21世紀に輝く名車候補の筆頭は今なお大人気

今も大人気のヘルキャットを取材した。

更新日:2025.10.26

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

ヘルキャットは規格外の別格な存在

 2023年いっぱいで生産終了し、2025年に入ると販売においては若干落ち着きを見せていた現代版ダッジチャレンジャー。だが、その一方で、「これ以上のクルマは存在しない」と車検取得を繰り返し長期所有の意思を見せている方々も多い。

 その理由は、現在のアメ車の新車発売が頭打ちになっていること。

 2023年に生産終了した後、2025年にダッジチャージャーのみ復活したが、それはEVだった。世界初のEVマッスルカーとの触れ込みであり、もうすでに発売が開始されているが、その販売は堅調とは言い難い。はっきり言えば、惨敗である=マッスルカーユーザー&ファンのEVアレルギーが非常に強いということだ。

 くわえて、EVと同じボディにガソリンエンジン搭載モデルの予約発売も始まっている。今はまだ3リッター直6ツインターボのみだが、来年には5.7リッターV8を筆頭に、各種V8エンジンの復活が噂されている。

▲2022年型ヘルキャットワイドボディ。走行約6800キロのBCD認定中古車。

▲高年式のヘルキャット自体がレアだが、ワイドボディとなるともっとレアになる。ブラックのボディカラーにオレンジのキャリパーがモパーらしい。

 ちなみに、現状では上記V8エンジンはチャレンジャー時代に搭載されていたものと同じということである=チャレンジャーから乗り換える必要性を感じない人がいても不思議ではない。

 余談だが、現代版チャレンジャーは、1970年&1971年の2年間のモデルをデザインベースにして2008年に復刻しているが、現代版が復刻しても旧時代の70年代チャレンジャーを愛する&憧れる人は多い。同様に2025年に新型チャージャーが登場しても、2008年以降の現代版チャレンジャーに憧れる方は多くいるはずである。

 先日、某外車系クルマ屋さんで世間話をしていた時に聞いたのだが、今、業界人(死語?)に人気がある外車は圧倒的にゲレンデらしい。

 そのあとにディフェンダーとチャレンジャーが続くということだが、チャレンジャーに関してはとにかく安価な個体が動いていると。「ブラックカラーで400万円以下ならすぐに売れます」という。何よりもカッコが重要ということだろうか。

▲搭載されるエンジンは6.2LスーパーチャージャーV8。2019年から10hpアップの717hpに進化している。とにかく十分に速い。

▲ワイドボディ専用の305/35ZR20インチタイヤとオレンジのブレンボブレーキの組み合わせ。ヘルキャットレッドアイと同サイズだけにリアの安定性はより高いと言える。

▲デュアルシュノーケルフードが2019年以降の高性能の証となっている。

 その一方で、「ヘルキャットはありますか」という問い合わせが多いという。聞けば、「チャレンジャーにおける『ヘルキャットは別物』という認識」らしい。

 要するに現代版ダッジチャレンジャーにおけるラインナップにおいて、ヘルキャットは全く別の存在であり、アメ車ファンのみならず外車好きにおいても欲しい候補車リストに入っているということだ。

 それはBCDにおいても同じである。ヘルキャットの反響は非常に高いというが、実際に店頭に並ぶ可能性は非常に低いという。

 「ヘルキャット系はほとんど入荷しないんです。もともとの販売数自体が少ないのと、手放す方も非常に少ないのが現状です。ただし、そんな状況下でも店頭に並ぶことがあるとすれば、その個体は走行距離の少ない新車のような状態と言えるかもしれません」

 要するに、手放さない方であれば実際に乗っている可能性が非常に高いから走行距離は当然伸びる。一方で貴重な存在としてたまに乗るような使い方をしていれば距離は少なく、そういう方が何かのきっかけで売りに出せば非常に良い状態の個体が手に入るという理屈である。

▲他のチャレンジャーよりもグリップの太いステアリングを握るだけでも「違い」が明確であり、凄みを感じさせる。エンジン始動時の爆音もヘルキャットならでは。

▲ヘルキャットにもMT車が存在するが、個人的には8速ATの方が似合っていると感じるし、実際に十分速い。「D」レンジに入れた時の強烈なクリープもならでは。

▲メーター内のカラーリングが異なっているが、ヘルキャットの持つハードな印象にマッチしている。

 ちなみに、ヘルキャットの何がそんなにいいのか。それは間違いなくエンジンに起因するだろう。

 世の中的にはすでにダウンサイジングエンジンが当たり前となっており、アメ車にも2リッター直4ターボモデルが多数存在していたが、他メーカーへ目を向ければ、それこそ3気筒1.5リッターターボ等が目立つようにもなり、例えばメルセデスベンツのある程度のモデルでさえも低排気量モデルが一般的となっている今だからこそ、ヘルキャットは規格外の別格な存在として認知されている=世界遺産といってもいい。

 個人的にも、ヘルキャットは21世紀に輝く名車候補の筆頭であり、707hpを日常的に使用可能とした功績は非常に大きいと思っている。本国では5年10万マイルのメーカー保証が付いていたほどだから、メーカー自身も耐久性に相当な自信を持っていたわけである(ヘルキャットは2019年から10hpアップの717hpに進化している)。

 というのも、チャージャー、グランドチェロキー、デュランゴにも707hpを載せ、コンセプトカーではジープラングラーにも搭載。その後ラムトラックにも707hpエンジンを搭載して市販していたから、これこそがヘルキャットエンジンの凄さと耐久性の証明ということだろう。

▲グリップの太いステアリングにサイズの大きくなったパドルシフトがヘルキャットにはよく似合うし、操作感も良い。

▲ラグナレザーのバケットタイプのシートには若干の使用感があるが、まったく気にならないレベル。

▲ワイドボディのヘルキャットは、ナローモデルよりもリアのグリップと安定性が格段に高い。そして個体数が非常に少ないから超貴重な存在。

 余談だが(個人的な嗜好を含む)、V10エンジンを搭載するバイパーとヘルキャット、そしてC7コルベット(最後のFRモデル)に、C8コルベット(初のミッドシップ)にも乗ることができれば、21世紀のアメリカンレジェンドたちを全て網羅した、と言っても過言ではないだろう。

 ということで、2022年型のダッジチャレンジャーヘルキャットワイドボディ。オールブラックボディにオレンジのキャリパーがよく似合う個体。このオレンジカラーはヘルキャットのエンジンブロックと同じカラーリングである。

 その走行7000キロにも満たないBCD車両。BCD認定中古車であるからBCDの管理ユーザー車両=状態の良さが保たれている。

 ということで、2015年時にメーカーが本気で製作した米国製最強のモンスターエンジン搭載車たるヘルキャットは、チャレンジャーファンならずとも一度は体感すべき存在だし、滅多に来ない入手チャンスを決して逃すべきではない。

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