1982年から1992年まで生産された通称サードカマロ。最終年式の92年型でさえすでに28年モノとなるだけに、おいそれとオススメする気にはならないものの、旧車といわれる存在と比較的新しいクルマとのちょうど中間に位置する存在として、「ヒストリックカーが欲しいが、ヒストリックカーほどの手間はかけられない」という方には絶好の1台となるのかもしれない。
というのも、手に入れる最初の段階で多少の手間が必要になるが、そこを越えればいたって普通に真夏のド渋滞を余裕で走り切れるし、速くはないが気持ち良いV8サウンドを轟かせ、アメ車濃度の高いドライブが可能となるからである。
この部分に関してが、60~70年代のアメ車との違いであり、サードならコンディションを整えれば、まるでその当時の国産車のように何事もなく走れてしまうのである(あくまでその当時の国産車程度であって、最新の国産車のようにはいかないのは当たり前の話だ)。
とはいえ、最初の段階で必要となる手間であるが、そこを越えるのに、どこのショップでもいいというわけにはいかないのが嘆かわしいところ。何度も言うが、ヒストリックカーに片足を踏み入れたクルマである。
ということで、エイブルにて1992年型のカマロコンバーチブルに試乗した。Z28ということで240hpを発生させる5リッターV8が搭載されている。走行距離は7万8000キロ弱。
この車両は、ステアリング関連のリンケージパーツが交換され、マフラー部分の中間パイプは純正オリジナルで交換済みである。従ってこの状態を見る限り、少なくともこの先数年はまったく下回り関連を気にせず乗ることが可能だろう。
取材当日は、全国的に暑くなってきて気温が30度越え。まだ午前中ということで行きはオープンにして、帰りは幌をかぶせてクローズド状態で試乗した。
すでに25年以上前の車両である。見た目の状態の良さは知りつつも、やはり気は使うものである。しかも久しぶりのサードだけにシートに座った瞬間のサイドミラーの小ささに驚いた(笑)。いざ出発。
いや~、面白い。気持ちいい。オープンボディだからボディの緩さは致し方ないが、オープンにして走ればそんなの全然気にならない。それに乗り心地の当たりが柔らかい。速度感が現代のクルマのように速くないからか、街中での走りが最高に気持ちいいし乗り心地がバタバタしないので、古さをあまり感じさせない。
昔、サードにはいろいろ経験させてもらったが、サーキットまで走る走り系のサードはとにかくショックが硬かった。だがこのサードは純正の車高にタイヤサイズも当時のまま。だから、普通に乗っていて快適である。
それにボディサイズも今となってはちょうど良い。国道246から一本横道に入って住宅街を走っても難なく通過。同時にエンジンやミッションの変速も違和感なく小気味よくなめらかに走る。ブレーキペダルだけはほんのちょっと踏みしろが硬いが、これが90年代のアメ車の特徴であったことを筆者は知っているので、慣れれば全く問題ない。
で、帰路はさすがに幌を閉めて走った。エアコン全開。さすが5リッター以上の排気量。普段国産2リッター以下の車両を運転していると容量の小ささとエンジンの負担の大きさに辟易するが、25年前のサードでもきっちり調整された個体だけに、ビクともせず。しかも容量がデカいからか、二分程度で冷え冷えに。
それに幌の状態も良好だった。この時代は手動だが全く問題なくスムーズに動くし、リアウインド-はアクリルだが、白っちゃけた状態になっていないから十分な視認性が確保出来る。
そのまま国道246を突っ切りショップまで自走したが、このサードは、運転自体に慣れてしまえば現代の交通事情にそのまま適合できるし、なにより100キロ/h以下の速度域での楽しさが半端ではない。
このまま自家用車としても即通用するだろうし、土日祭日だけの自分だけの玩具としても十分に楽しめるだろう。
コンディションの良否を問わず、サードカマロ自体の中古車を見つけるのが非常に困難な時代。注文してもそれこそ一年以上見つからないことだってある。だからこその一期一会。
しかもエイブルの車両。カマロの流行り廃りに関係なく初志貫徹のまま継続は力なりで常にサードにこだわってきたからこその個体。
昨今、ヒストリックカーの人気が高まっている。アメ車においてもしかりで、ヒストリックだけでなく90年代のサードカマロやトランザム、C4コルベットの人気も上がっている。
サードにおいては、本国アメリカにて旧車レストアの対象となり始めているし、セマショーでも多くのカスタマイズカーを展示し始めている=今後日本国内に持ち込まれるサードはほとんどないはずだ。
サードカマロは硬派な雰囲気をもたらすカマロ最後の世代であり、キャブレター時代のようなメカニカル部分に気兼ねさがまったくいらないことが、それでいて濃厚なアメ車風味が味わえることが人気の理由だが、そんな時代の名残が味わえる絶好のタマもあと少し、といったところだろう。
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