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[試乗記]

レーシングモデルとは異なり“公道”を疾走する歓び

2019 フォード マスタング ブリット

圧倒的な個体数の少なさが「他人と絶対に被らない」という極上の優越感をもたらす

「マッハ1」や「シェルビー」といったレーシングスピリットに満ちたモデルがある一方で、スティーブ・マックィーンというキャラクターを投影した大人のライフスタイルを象徴するモデルも存在する。その名もマスタングブリット。その中古車を取材した。

更新日:2026.05.25

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

2019年、2020年の2年間限定モデル

 マスタングの歴史を語る上で、2000年代以降のドラスティックな変革は外せない。1970年代のオイルショック以降、排ガス規制やコンパクト化の波に揉まれ、本来のアイデンティティを見失いかけていたマスタング。その暗黒期を打ち破ったのが、2005年に登場した第5世代だった。

 初代マスタングの丸目2灯や縦型3連テールランプを現代に甦らせた「復刻モデル」は世界中で大ヒットを記録し、ライバルであるカマロやチャレンジャーをも巻き込む「21世紀のマッスルカー戦争」の引き金となった。

 しかし、フォードは単なる過去の復刻に満足しなかった。誕生50周年を迎えた2014年、第6世代へとフルモデルチェンジを果たしたマスタングは、レトロデザインの呪縛から鮮やかに脱却する。北米専用車から欧州やアジアを見据えたグローバルスポーツクーペへと舵を切り、初の右ハンドル仕様の量産化や独立懸架サスペンションの採用など、世界最高峰の走りを手に入れる。

 それは「形を昔に戻す復刻」ではなく、マスタングのDNA(魂)を未来へ引き継ぐための大進化であった。そんな6代目マスタングは積極的に過去の“遺産”をつぎ込み人々を熱狂させる。

▲マスタングブリットは、フォードが持つ歴史的遺産を最新のエンジニアリングで磨き上げた、至高のロードゴーイングカー。

▲ボディカラーは深みのある「ダークハイランドグリーン」で、走行約1.6万キロのBCD認定中古車。

 2018年、デトロイトモーターショーのステージで衝撃の発表が行われた。映画『ブリット』の公開50周年を記念する特別なマスタングの登場である。ベースとなったのは1968年型の劇中車。その名もマスタングブリット。

 それは、単なる懐古趣味の記念車ではく、フォードが持つ歴史的遺産を最新のエンジニアリングで磨き上げた、至高のロードゴーイングカーであった。同時に現代のハイパフォーマンスカーが、巨大なウイングや派手なデカールで誇示するなか、ブリットの佇まいは驚くほどストイックである。

 フロントグリルからお馴染みのポニーバッジすら引き剥がし、リアスポイラーも敢えて装着しない流麗なノッチバックスタイル。ボディを包むのは、深みのある「ダークハイランドグリーン」で、光の当たり方で表情を変えるこの専用色に(ブラックも存在する)、トルクトラストを彷彿とさせる5本スポークの19インチホイールと、鈍く光るブレンボ製の赤キャリパーが絶妙なコントラストを描き出す。

 唯一、このマシンの正体を明かすのは、リア中央に配された丸型の「BULLITT」エンブレムのみ。この徹底したバッジレス仕様こそ、「スリーパー(羊の皮を被った狼)」としての美学なのだろう。

▲搭載される5リッターV8エンジンはベースのGTを凌ぐ480馬力へと引き上げられる。

▲「BULLITT」ロゴの入ったタワーバーがボディ剛性をさらに高める。

▲追加されたサブメーターがブリットの高性能化を物語る。

 一方で、ドアを開けると、モダンなデジタルコックピットとクラシカルなディテールが融合した空間が広がる。黒レザーシートに映えるグリーンのステッチ、そして視線をセンターコンソールへと落とすと劇中車を忠実にオマージュしたホワイトの球体シフトノブが現れる。

 助手席側のダッシュボードには、世界限定車であることを証明するシリアルナンバー入りのプレートが刻まれ、ホールド性に優れたシートに体を預け、この白いノブを握りしめた瞬間、ドライバーの脳裏には劇中内のサンフランシスコの激しい坂道とV8の爆音が鮮烈に蘇る。 

 フロントフードの下に潜む5リッターV8エンジンは、ブリットのために特別なチューニングが施されている。高性能モデル「シェルビーGT350」のインテークマニホールドとオープンエアインダクションシステムを贅沢に流用し、最高出力はベースのGTを凌ぐ480馬力へと引き上げられる。

▲フロントグリルからお馴染みのポニーバッジすら引き剥がし、リアスポイラーも敢えて装着しない流麗なノッチバックスタイル。

▲ボディに貼られるエンブレムはリア中央に配された丸型の「BULLITT」のみ。

▲5本スポークの19インチホイールと鈍く光るブレンボ製の赤キャリパーが絶妙なコントラストを描き出す。

 驚くべきは、トランスミッションに10速ATの選択肢を用意せず、「6速MTのみ」という硬派極まる設定に絞った点。アクティブバルブエキゾーストが奏でる野太いV8サウンドと共にクラッチを繋げば、強烈なGが身体を襲う。

 シフトダウン時には自動で完璧に回転数を合わせるレブマッチング機能が作動し、足回りには電子制御のマグネライドダンパーが路面を正確に捉え続ける・・・。

 「マッハ1」や「シェルビー」がサーキットのラップタイムという“数字”を追い求める硬派なレーシングスピリットの象徴であるとするならば、ブリットはサーキットのラップタイムを削るためではなく、ドライバーが自らの手足で480馬力を手懐け、“公道”を疾走する歓びのために全てのメカニズムが調律されている!

 そして世界的なEVシフトや環境規制の波が押し寄せる今、これほどまでに贅沢で、エモーショナルな大排気量V8のガソリン車をマニュアルシフトで操れる機会は、そう多くはないだろう。

▲モダンなデジタルコックピットとクラシカルなディテールが融合したインテリア空間が広がる。

▲ブリットはデジタル液晶メーターが表じゅん装備。

▲ホワイトの球体シフトノブを使用した6速MT。シフトダウン時には自動で完璧に回転数を合わせるレブマッチング機能が作動する。ちなみにレブマッチング機能はカットすることも可能。自分で回転数を合わせる楽しみも得られる。

 そんなブリットが今、目の前にある。ブリット自体は2019年、2020年の2年間限定車だったために数が非常に少ない。そのため、日本国内における流通量は極めて少なく、中古車市場で見かけること自体が奇跡に近い。だが一方で、この圧倒的な個体数の少なさが、所有者に「他人と絶対に被らない」という極上の優越感をもたらしてくれる。

 そして販売しているのがBUBU横浜である。ブリットが登場した2019年から販売を続けており、あえて「ハイランドグリーン」の個体のみに照準を合わせ仕入れを続けてきている。それでも近年「ほとんど見かけない」と言われているブリットの1.6万キロの個体。しかもBCD認定中古車。

 当然、コンディションに関してもかなりのレベルで、前オーナーによって大切に扱われてきた「奇跡的な個体」と言える。スタッフ曰く「選べるほどの選択肢はもう見込めませんが、この個体は内外装ともに非常に優秀です」

 マスタングの限定車といえば、サーキットを想起させるスポーティなモデルが多い。だが、ブリットは、映画の劇中車の復刻であり、スティーブ・マックィーンというキャラクターの象徴であり、大人のライフスタイルを投影する存在として非常に魅力的である。

▲助手席側のダッシュボードには、世界限定車であることを証明するシリアルナンバー入りのプレートが刻まれる。

▲クラッチの重さも適量、ペダル配置に難はなく、繋ぎに癖もないから、非常に扱いやすい。

▲ホールド性の良いシート。中古車としてのコンディションも非常に良い。また乗降性も良い。

▲ブリットは、日本国内における流通量は極めて少なく、中古車市場で見かけること自体が奇跡に近い。

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