CTS、STS、XLR、SRXといった今に続くアルファベットのネーミングにスイッチしはじめた当時、キャデラックの中で唯一、伝統の名前を名乗っていたのがドゥビルだった。コンコースの後継モデルとして99年に2000年モデルとしてデビューしている、当時のキャデラック・トップエンドのモデルである。
名前の由来は、1949年に世界初のピラーレス2ドアハードトップとして登場した当時のドゥビルからとったものであり、99年がちょうどその50周年という理由から採用されていた。ヘリテージを誇るキャデラックらしい名前の付け方である。
ただそれも、本国では翌年にDTSと名称変更を行い、前述した他のモデルたちに漏れることなく、新世代キャデラックとして新たな仲間入りを果たしたわけである。
ちなみに、DTSはもともとドゥビルのグレード名であり、ハイパワーのDTSとラグジュアリーのDHSに分けられていた。このうち日本仕様はフロント3名乗車のベンチシートを有するDHSが選ばれた。恐らく社用車としてのニーズが多かったからだろう。
それはともかく、ドゥビルはキャデラックのトップエンドのモデルとして開発され、アメリカ国内をメインマーケットとしながらも、日本をはじめ中近東諸国といった海外のマーケットニーズにも応えられるよう、VICS対応ナビゲーションシステムの技術対応をする等していたのである。ちなみにこのドゥビル、2006年にキャデラックDTSとしてモデルチェンジを行っているのである。
で、取材車両は2005年のドゥビルDHS。走行12万キロを超えるヤナセ販売のD車である。
搭載されるエンジンは4.6リッターV8DOHCで、最高出力は279hp、最大トルク41.5kg-mを発生させた。シャシーフレームもサスペンションの取り付け位置や補強面を新たにしているが、基本構造はコンコースを継承する。すなわち他のキャデラックと異なり従来どおりのFFレイアウトを採用するのである(他モデルはすべてFR)。
ドライバーズカーのセビルに対してショーファードリブン的モデルであったキャデラックコンコース。2000年にドゥビルとスイッチするまではキャデラックラインナップのトップエンドに君臨していたモデルである。
全長×全幅×全高が5260×1900×1440ミリ、ホイールベースは2930ミリといったフルサイズボディを誇る。
コンコースの後を継ぎ2000年モデルとして登場したドゥビルは、2005年までその名称を使用し、2006年からはDTSとして新世代キャデラックの一員として2010年まで存在していた。
ライトカシミアと呼ばれるシャンパンゴールドのボディカラーにベージュのインテリアを有するこのドゥビル。走行距離の割には内外装ともに非常にクリーンかつコンディション良好であり、想像するに、距離の長さはいわゆる社用ゆえのものであり、見た目の第一印象は予想以上に良いものであった。
このドゥビルのドアを開けて乗り込んだ瞬間、かなりの驚きが再びやってきた。というのもこのドゥビルは、最近のキャデラックの進化とはまったくの無縁な存在だったからである。
外観は当時のキャデラックに通じるが、中身は先代コンコースの進化版。ということで、現代のキャデラックに通じる雰囲気は何一つない。だが、逆にそこが新鮮でもあった。
シフトは、フロアではなく、コラムシフト。運転席付近の空間は非常に広大であり、かつてのアメリカ車の趣が味わえる。コンコースから考えれば、すべてがモダナイズされるも、簡素化された部分は確実にあるが、それでもキャデラックらしさ溢れる明るいインテリアが俄然似合っている。
搭載されるエンジンは4.6リッターV8DOHC。最高出力は279hp、最大トルク41.5kg-mを発生させ、4速ATと組み合わされた。
DHSとは「ドゥビル・ハイラグジュアリー・セダン」という略だけあって、内装は豪華そのもの。さらに、エンプレムの入ったオリジナルフロアマット、イルミネーテッドステップ、刺繍入りのヘッドレスト、ウッドダッシュパネルなどが追加されており、いわゆる最後の応接間的インテリアを有したモデルでもあった。
大柄なシートは、クッション性も良くこれまたふかふかした旧アメリカ的なシートである。
さすがにコンコースの中古車は程度的な問題が生じるだろうが、ドゥビルならご覧のようにまだまだ商品としての役割が果たせるものが存在する。今乗っても気持ちいいフルサイズセダンである。
シートアレンジもことのほかやりやすく、シート位置がドンピシャで決まり、その際のボディの見切りが、横幅1900ミリにもかかわらず、最近のアメ車と比較してもかなりいい。
走り出してもその印象はまったく変わらない。街中中心の試乗だったので時速100キロ超えはできなかったのだが、それでも70キロ弱に達するまでにも「アメ車」らしさは十分に感じることができた。
乗り味はソフトでありながらコシがある。「スゲェ、いい」。上手く言えないが、これこそがアメ車に求められる理想の「味」ではないか。
2000年以降のアメ車から徐々になくなってしまった味わい。大きなボディと若干ダルなフィールが織りなすハーモニー。緩いけどシッカリしている気持ちいい乗り心地。キャデラック=応接間+現代テクノロジーによる制御。これこそがキャデラックライドだろう。
FFだが、トルクステア等の嫌らしいものは一切感じさせず、ひたすら安定し、繰り返すが気持ちよい独特の乗り味。このクルマに乗ってしまうと、現代のキャデラックが目指している方向性とはまったく真逆の立ち位置にいるクルマであったことが良くわかる。
軽いステアリングを握り肉厚の柔らかいシートに包まれての、軽くて柔らかいドライブは、まさに夢心地だった。果たして、現代のクルマたちにこういった独特の世界観を持ったクルマが存在するのだろうか。
ドゥビルに乗っていると、なぜだか飛ばそうと思わないから不思議である。下手にカスタムやドレスアップをすることなく、この味を生かしたままノーマルで大切に乗りたいと思わせる1台である。
12万キロ走行と聞いていたイメージとはかけ離れたコンディション。想像以上に気持ち良い走行性能。あくまで中古車だからこの状態のままですべてが完調というわけにはいかないのは承知だが、少なくともこの車両は大切に扱われていた(もしくはおとなしく距離を重ねた)ことが伝わって来る。
現代のキャデラックがなくしてしまった味を持つ、20世紀最後のアメリカ製高級車。そろそろ、こういった当時の個性的なアメ車を後世に残すための準備に入った方が良いのではないか、と本気で思う。
中古車個体としては非常に程度がいい。シートに関しては、運転席と後席右側のみ使用感のあるシワが見られる。恐らく社用として同じポジションのみが使われていた証拠だろう。
コンコース時代のデジタル表示のメーターからセルシオ式のオプティトロンメーターに変化している。
フロント3人掛けのベンチシートにコラムシフトは、往年のアメ車的雰囲気。よって運転席付近のスペースは非常に広く、ドライバーも楽チンそのもの。
TEST RIDE
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48,070円
EXTERIOR
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EXTERIOR
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MAINTENANCE
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MAINTENANCE
6DEGREES