メーカー保証付きの707hpは鮮烈だった

ヘルキャットエンジンの希少性

世界中のメーカーをパワーウォーズに巻き込んだ名機

日本の法規が変わりハイパフォーマンスな最新車両を日本で登録することが困難になった今、ヘルキャットエンジンの希少性がダントツに上がっている。

662hpも相当にインパクトが強かったが

　アメ車といえばV8パワーと思うかもしれないが、実のところ過去にそこまで凄いモデルがあったわけではない。実際低速トルクは太いけれど、最大パワー自体は250hpとか300hpとかが一般的だった。

　だが、2000年前半にシェルビーが復活してからその様相が徐々にだが変わる。スーパーチャージャー武装で500hp、550hp、580hpと年々パワーアップを図り、ついには600hpオーバー。

　よって2014年まではシェルビーGT500の独壇場だった。662hp。これは2014年モデルが叩き出した数値である。

　だが、2015年に登場したヘルキャットが全てをひっくり返す。なんと707hp。

　それまでの常識を覆した700hpオーバーの量産車という響きは、実際のパフォーマンス以前に強烈なインパクトを放った。

　くわえてこのエンジン、実測でも700hpを超えていたというレポートがアメリカで相次ぎ、「本物」という称号を得たと同時に、そんなハイパーフォーマンスエンジンを5年10万キロのメーカー保証（本国）付きで乗れるというのだから、この衝撃は半端ではなかった（チャレンジャーに関してはマニュアル車もある）。

▲2007年にデビューしたシェルビーGT500も相当のインパクトではあった。

▲2014年最終モデルでは662hp。圧倒的王者の風格が伴っていた。

707hpの衝撃はハンパではなかった

　さらに2018年、輪をかけたスペシャルマシンがデビューする。デーモン。なんと840hp。

　デーモンはドラッグマシンベースの車両ということだったが、それでも日本国内で人気を博し、結構な数が直輸入されていた。が、翌年、我々はさらにもう一度驚くことになる。

　レッドアイの登場である。なんと797hpのチャレンジャー最高峰マシンであり、ベースは前年デビューしたデーモンのディチューン版というのだから、基本デーモンと同様のエンジンが市販化されたということである。

　またまた余談だが、チャレンジャー最終モデルとなる2023年にはSRTデーモン170がデビューしているが、それはなんと1025hpというから、そこまでの可能性を持ったエンジンであったということだ。

▲2015年に登場したヘルキャットは全ての項目でシェルビーGT500を超えていた。そして707hpから797hpに進化し、その間に840hpのデーモンが登場している。

　ここまで来て、通称ヘルキャットエンジンの実力とパフォーマンス、さらには信頼性が確保されたと判断したメーカーは、再び勝負に出る。

　ヘルキャットエンジン搭載モデルのバリエーション化である。

　まずは2018年に登場したグランドチェロキートラックホーク。グランドチェロキーは2022年にフルモデルチェンジしているから旧型モデルにはなってしまうがヘルキャットエンジンを搭載したモデルがデビューしていたのだ。

　ちなみにフルモデルチェンジ後のグランドチェロキーにヘルキャットエンジンを搭載したモデルは存在していない。

　続いてダッジデュランゴSRTヘルキャット。デュランゴヘルキャットは当初2021年のみの限定モデルであった。

　また同年ラムトラックにもTRXと呼ばれるヘルキャットエンジン搭載モデルがデビューしているが、ヘルキャットエンジン生産枠の問題もあり、当初は数が限定されていた。

▲ヘルキャットのエンジンを搭載したグランドチェロキートラックホーク。2018年から2021年まで存在している。

▲デュランゴSRTヘルキャット。当初は2021年のみの限定モデルであったが、2023年に復活し2024年モデルも登場している。

▲ラムトラックにヘルキャットエンジンを搭載したTRXも2021年にデビューし2023年まで生産される。

　が、チャレンジャー＆チャージャーの生産終了が正式に決まると、ラムTRXは2023年いっぱいまで生産され、デュランゴSRTヘルキャットは限定生産が解除され、2024年モデルもすでに発表されている。

　で、こうした稀代の名機を積んだアメ車には是が非でも一度は乗っておきたいと思うかもしれないが、2023年日本にて一つの問題が起こる。

　輸入規制とも言える加速騒音に関する法規の改正である。爆音を奏でるヘルキャットエンジンを搭載したモデルを日本にて登録することが事実上不可能になってしまったのだ。

　もちろん、すでに日本に上陸している中古車を購入することは問題ないからすぐに全く買えなくなるというわけではないが、今後数が増えることがないだけに、ヘルキャットエンジン搭載モデルの希少性は当然爆上がりである。

　そんな中で一番可能性の高い購入可能モデルと言えば、もちろんチャレンジャー＆チャージャーだが、それ以外ではグランドチェロキートラックホークが穴かもしれない。もちろんヘルキャットエンジン搭載だけに高価であることは間違い事実だが。

　デュランゴヘルキャットも超魅力的だし、ラムTRXに関してはまるで重戦車のごとき凄まじいオーラである。道路事情＆家庭環境等が許すなら絶対欲しい。

　くわえて王道で言えば個人的にはチャージャーヘルキャット。しかもワイドボディ一択。これ、実物を数回取材しているが、本当にカッコイイ。ワイドボディがキモなんです！

　チャレンジャー人気に押されて個体数はめちゃくちゃ少ないからお目にかかれないかもしれない。見つけたら相当ラッキーだろう。

　世界中の自動車メーカーに強烈なインパクトを与えたヘルキャットエンジン。21世紀に輝く名機だけに、その時代を生きた者なら是非とも一度は触れておきたい。

▲個人的に超オススメなのがチャージャーヘルキャットワイドボディ。ワイドボディであるからこそのハードな雰囲気がめちゃくちゃカッコイイ。ただし、個体数はかなり少ない。