更新日:2026.09.03
文/石山英次 写真/ステランティス
自動車業界が大きな転換期を迎えるなか、ダッジが投資家&メディア向けの非公開イベントで極秘裏にその存在を明かした新型スーパーカー、それが「コッパーヘッド」
一般への大々的なワールドプレミア(世界初公開)はされておらず、公式画像すら存在しない段階だが、実車を目撃した海外メディアの証言からその全貌が少しずつ浮き彫りになってきている。
世界的なEVシフトやSUV人気が叫ばれる今、この時代に、ダッジがあえて純粋なガソリンエンジンの息吹を残す超弩級スポーツカーを水面下で開発している背景には、自動車業界の切実な裏事情と、約30年前に封印された幻のスポーツカーの知られざるリベンジドラマがあるという。
実はコッパーヘッド(アメリカマムシ)という名は、ダッジにとって特別な宿命を持つ名前という。1997年、ダッジは伝説のスポーツカー・バイパー(クサリヘビ)の弟分として、カッパー色の2ドアロードスターのコンセプトカー「コッパーヘッド」を発表(トップ写真)。
当時は、バイパーの凶暴なパワー(V10エンジン&450馬力)は扱いきれないが、もっと手軽に走りを楽しみたいという層に向けたミニバイパー(ライトウェイト路線)として企画されていたという。
そのスペックは、セダン用をベースにした2.7L V型6気筒自然吸気エンジン(220馬力)を縦置きに配置し、車重はマツダロードスターやポルシェボクスターを意識した約1295kgという非常に軽快なものだった。
だが、市販化寸前まで開発が進み、世界中のファンが発売を確信したその時、予期せぬ悲運が襲う。アメリカの伝説的ロックバンド・ZZトップのギタリストが所有するカスタムカーがすでに「コッパーヘッド」の名で商標登録されていたのだ。
この泥沼の商標トラブルに加え、当時の親会社の経営方針転換が重なり、コッパーヘッドは市販化一歩手前で歴史の闇に葬られた幻のスポーツカーとなってしまったのである。
それから約30年。ダッジが今、この封印された名前をあえて復活させたのは、かつての絶対的象徴バイパーのイメージを守るためでもある。バイパーのアイデンティティは、大排気量のV型10気筒エンジンにある。しかし環境規制の厳しい現代、V10の復活は極めて困難である。
ダッジはファンが抱く神聖なバイパーの神話を汚さないよう、あえてその名を使わず、かつて悲運に泣いたもう一つのヘビの名・コッパーヘッドを、次世代のフラッグシップとして大抜擢しようと考えた。

▲手前にバイパー、奥にコッパーヘッド。かつてミニバイパーとして企画されたコッパーヘッドは発売手前まで企画が進んでいた。

▲V10エンジンを搭載したバイパーを現代に復活させることは難しい。よって当時頓挫したコッパーヘッドが、スーパースポーツカーとしてダッジのフラッグシップに上り詰める。
このタイミングでの復活には、現在の自動車市場のリアルな裏事情も直結している。近年の急進的なEVシフトへの反動として、現在、世界的にEVシフトの停滞とガソリン車の見直しが起きている。
ダッジは主力だったガソリン車のチャレンジャーなどを廃止してEV版の新型チャージャーを発表したものの、「牙の抜けたダッジは見たくない」というコアなファンからの猛反発に直面。さらに、最新のEVモデルがバッテリーの影響で約2.2トンという致命的な重さになってしまったこともあり、ブランドの魂である「荒々しさ」と「本当に走れる軽量な性能」を証明するフラッグシップが急務となっていた。
同時に、アメリカのライバルたちによるガソリンスポーツカー最終戦争も勃発している。シボレーが1000馬力超のコルベットZR1を、フォードが公道を走るレーシングカー・マスタングGTDを連発する中、ダッジはかつてのリベンジを果たすべく、超ワイド&ローの専用プラットフォームを用いた新型コッパーヘッドを送り込み、これに対抗しようとしている。
そして、2029〜2030年頃に市販化が予定されているコッパーヘッドのスペックは、30年前の入門車という役割を180度ひっくり返す、ダッジの新たな絶対的頂点(ハイパースポーツ)にふさわしいものへと変貌を遂げている。
パワートレインには、伝統のV8ではなくあえての3.0L直列6気筒ツインターボ(ハリケーンエンジン)に次世代の高性能ハイブリッドシステムを組み合わせるという合理的なパッケージが採用される見込み(ガソリンエンジンのみもあるかも)。
ここに、ダッジの明確な戦略とチャージャーとの決定的なキャラクターの違いがある。新型チャージャーもまたV8を廃止し、直6ターボのSIXPACKへと移行したことで、ファンからは「アメ車のロマンであるV8の重低音や無駄の美学をなくすな」と大論争が巻き起こっている。実際に販売は大不振を極める。
しかし、日常のドライブでワイルドさを楽しむチャージャーとは違い、新型コッパーヘッドに求められているのはポルシェやGT-R、コルベットといった世界の強豪とサーキットで対等に渡り合い、タイムを削る速さ。
そのため、重いV8よりも、フロントを圧倒的に軽くでき、かつ重心を下げられる高性能な直6ターボに、爆発的な加速を生み出す電気モーターのアシストを組み合わせる方が、技術的に圧倒的に有利という。
理屈を超えたロマンを追うチャージャーに対し、コッパーヘッドは究極の速さと効率を求めたからこその「あえての直6+ハイブリッド」という選択という。
この最新の電動ハイブリッドユニットにより、ライバルのコルベットZR1と並ぶ1000馬力オーバーという驚異的なパワーを目標に掲げ、車重も約2.2トンあるEV版チャージャーとは異なり、カーボンやアルミを多用した専用の軽量シャシーによって1600kg〜1800kg前後へと徹底的に絞り込まれ、0-60mph(約96km/h)加速は2.5秒以下という世界最高峰の運動性能が予想されている。
本国メディアによれば、「ステランティスは公式な製品として2030年までにコッパーヘッドを市場へ投入する予定」とコミットしているというから、2028年から2029年にはワールドプレミアされる可能性が高い。
かつて、お蔵入りとなった無念のクルマがハイパースポーツカーとして生まれ変わり歴史を塗り替える。ダッジの執念とプライドによって生まれるコッパーヘッドは、ダッジにまとわりつく悪い流れを一新することができるのだろうか。
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