更新日:2011.12.13
文/田中享(Tanaka Susumu) 写真/古閑章郎(Koga Akio)
取材協力/ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社 TEL [ホームページ]
一般的な試乗インプレッションの場合、当然ながら運転した本人が感想を書きます。リムジンやバスであれば後席インプレッションもありだし、レースカーやラリーカーであれば助手席インプレッションもありでしょう。しかし、市販されている乗用車で同乗インプレッションというのはあまり聞きませんし、もちろん筆者も初体験。したがって何をどういう風に書けばいいのか少し困っていますが、分かる範囲、あるいは感じた範囲の感想を書いてみたいと思います。
今回の同乗試乗では、まずは筆者が先に右後席に着座した後、GMの担当ドライバーが運転席に着座しました。簡単な挨拶の後、ドライバーがシートベルトをセットして起動スイッチを押すと『ブワンっ』という電子音と共にセンターのモニターが起動します。ご存知のようにボルトはEV(Electric Vehicle=電気自動車)ですから、起動スイッチを押したからといってエンジンがかかるわけではありません。スイッチを押すという行為は、ただ単に電源をONにするというだけの意味であり、家電製品のスイッチを押す行為と全く同じです。したがって先に書いた電子音は擬音というか一種のギミック。パソコンの起動音と同じです。ただ、個人的にはこういったケレン味たっぷりのギミックには好感が持てます。いかにもEVに乗っているという気にさせてくれますし、現時点でのボルトは最先端のEVであると同時に一種のプレミアムカーですから、こういった演出は必要でしょう。
フットブレーキに足をかけ、ATセレクトレバーをDレンジに入れてサイドブレーキを解除しスタートするという一連の流れは普通のガソリン車と全く同じです。内燃機関とモーターという動力発生源の違いはあれ、ミッションや足回りの構造自体はガソリンエンジン車も電気自動車も大差ないのが現状ですから、当然ながら運転する技術にも違いはありません。
では、ボルトのようなEVに乗った際に乗員が感じる一番の違いは何かというと、これは間違いなく『音』でしょう。厳密に言えばモーターにも作動音はあると思いますが、その音の大きさはガソリンエンジンとは比較にならないほど小く、乗員はまず聞き取ることは出来ません。また当然ながら排気音もありません。メルセデスやレクサスといった超高級乗用車の中には、エンジン音や排気音を見事なまでに遮断しているモデルも存在しますが、音や振動に関しては、EVに勝るものはありません。今回ボルトが走り始めてすぐに筆者が感じたのもやはり音の部分でした。
もっとも、いくらEVが静かだとは言っても、いわゆるロードノイズはあります。今回の同乗試乗はごく限られたスペースでの低速運転だったので、風切り音については分かりませんでしたが、タイヤと路面の摩擦によって生じる音や振動については通常のガソリンエンジン車と同様に感じました。このロードノイズ部分についてのボルトの遮音レベルは、ほぼ車格なりといった感じですが、なまじエンジン音や排気音がしない分、逆に少し目立ってしまっているかもしれません。
今回は自分でステアリングを握っていたわけではありませんので、アクセルのオンオフに対する加減速の感覚やブレーキの利き方、ステアリングに対する足回りの反応といった通常の試乗インプレッションの重要ポイントを書くことはできません。しかし、後ろからドライバーの所作を見ながら車体の挙動を感じている範囲では「かなりしっかりした操作感覚ではないかな?」という感じを受けました。
ボルトは駆動モーターの他に1.4リッターのガソリンエンジンを搭載していますが、乗っていて感じる安定感というか硬質感は小型車のそれではありません。筆者が乗ったことのあるGMの乗用車で言えば、キャデラックCTSスポーツワゴンに近いくらいの安定感を感じました。今回のドライバーに操作フィールを聞いたところ、「音や振動が小さいところ以外は通常のガソリン車と変わりません。パワー不足は感じないし、ステアリングやブレーキのタッチも良好ですよ」とのことでしたが、おそらく筆者自身が運転してもそんな感じを受けるのではないかと思います。
実は筆者は動いているシボレー・ボルトに乗ったのは今回が初めてですが、ボルトに触れるのは初めてではありません。夏に開催されたシボレー・キャプティバのプレス発表会の際、待機所にボルトが展示されていたのですが、その時にGMジャパンの車輛課の方にお願いして、運転席や助手席に座ったり、ボディの各部をチェックしたりしています。↓
リンク:GMの試乗会はサプライズだらけでした!
この時の体験を元に少し情報を補足すると、ボルトのドライバーズシートは最近のGM車らしく座り心地はやや固めの設定。平均的な日本人体型の筆者が座ってもすぐに適切なドライバーズポジションが設定できました。2+2の4人乗車の車内空間は、特別広くはありませんが、不足も全く感じません。大人4人フル乗車の状態でロングドライブをしても苦にならない程度の空間は十分に確保されています。
今回の同乗試乗を終えて思ったのは「早く日本にも入れてほしいな」ということ。価格次第の部分もありますが、ボルトのルックスは日本が世界に誇るトヨタ・プリウスやホンダ・インサイトなどよりも遥かにカッコいいし、道具としての使い勝手もなかなか良さそうで、非常に魅力的なEVだと思います。現時点ではボルトの日本導入は未定ですが、仮に輸入が開始されれば、その時は改めて自分で運転して試乗インプレッションを書きたいと思います。
>> シボレー・ボルト(同乗試乗)_その2へ
12,810円
PERFORMANCE
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6DEGREES