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[試乗記]

名実ともに世界に誇れる1台

コルベットC6 Z06

CORVETTE C6 Z06

コルベットにおける最強マシンZ06。ZR1という最大パワーの持ち主をも打ち負かすこの究極のコルベットは、「軽さ」という武器を手に入れた、コダワリのマシンなのだ。

更新日:2012.01.11

文/石山英次(ishiyama eiji) 写真/古閑章郎

取材協力/ゼネラルモータースジャパン TEL  [ホームページ]

本当の底力を持つ衝撃の1台

 たとえば移動の足に使うなら、日本の軽自動車で事足りるという時代に、あえて外車、アメ車に乗るというのはいかなる理由からか? 異文化に接したい、衝動的、昔からガイシャ主義…etc、さまざまな理由があるにせよ、アメ車を選ぶ理由の一つに「個性」というキーワードを感じない方はいないだろう。

 アメ車の個性、それは大きく逞しく、力持ち?

 だが実際に、大きくカッコいいアメ車は数あれど、本気で「凄い」と思えるアメ車に遭遇したことはほとんどない。ましてや世界基準とか、ナンバーワンとか唱えるアメ車に出会ったことなど正直あり得ない。過去に出会った300馬力のGTカーはあくまでも直線だけだったし、400馬力近いパワーを発するSUVの車重は3トン近かった…。数字上パワフルなアメ車は過去にたくさん見てきたが、実際に走ればいとも簡単に馬脚をあらわしてしまうのであった。

 だが05〜06年にかけて事態が一変した。それまでの鈍足が嘘のような1台が現れたのだ。それがコルベット最強モデル「Z06」である。コルベットには「ZR1」という強烈な存在があるが、あえて「Z06」こそ最強モデルと豪語したい。

 このGM渾身の「力作」は、まさにコルベットの頂点にふさわしい充実した内容を誇る1台である。そう感じさせるのは、まずは投入された数多くのテクノロジーである。プッシュロッドV8の排気量は、6リッターから7リッターへと、1リッターも拡大している。しかもチタンコンロッド&インテークバルブ、ドライサンプなど、ルマンでクラス優勝した「C6-R」譲りのレーシングテクノロジーが注入されている。

 そして最高出力は404psから511ps、最大トルクは55.6kg‐mから64.9kg‐mにアップ(その当時)。もともと1500kgジャストと軽かった車重は、コンポジットボディパネル、アルミニウム製フレーム構造、マグネシウム製エンジンクレードル、カーボン製のボディパーツなど、徹底的な軽量化の追求によって1440kgにまでダイエットしている。その一方で、脱着式だったルーフを固定とし、剛性アップもぬかりない。

チタン製のコネクティングロッドやインテークバブルなど、まさにレーシングカーならではの技術で、エンジンの高回転化とともに、高い剛性によって耐久性の向上をも実現するLS7エンジン。開発者自らレーシングエンジンと断言するように、市販車のレベルを大きく超えたスペックも持つ。

インテリア自体に特に大きな違いはない。個人的な印象だが、正直このインパネだけが、Z06の弱点のような気がするほど質素。

レーシングカー的なスペックを持ちながらも、日常的な使用にも耐え得るところが、Z06の美点。全幅がノーマルよりも75ミリ大きなっているが(1935ミリ)、さほど気にすることもない。

軽さが生み出す走りの世界は「究極」

 これらが生み出す走りの世界は、まさに究極。回転域を問わず力の漲るエンジンと安定感の高いシャシーという基本を押さえつつ、圧倒的な吹け上がりや、思いのままに向きを変える一体感抜群のハンドリングといった情感に訴える部分がより一層強調されている。特に軽量化がもたらす運動性能の向上は、俊敏さ故に怖さすら感じさせるもの。

 タイヤはノーマルよりかなり太くなっているにもかかわらず、まっすぐ走る。ブレーキは、それだけで感涙にむせびそうなほど効く。Z06だけに装備されるドリルドディスクとフロント6、リア4ポッドのキャリパーのおかげもあるが、それ以上にボディの軽さが影響しているはずだ。

 クロスのギアレシオを持つ6MTは、レーシングカー同様のトランスミッションオイルクーラーを装備し、熱によるタレがまったくない。ストロークの短いシフトフィールも良好であり、MT車による人馬一体感を、アメ車で初めて感じた1台だった。

 これまでのコルベットも確かに「良い」とは言いつつも、ある意味「無機質な速さ」を感じないでもなかった。感情が高ぶるような、ドライバーを熱くするような「何か」に欠けているような…。だが、Z06は、そのマシン感覚に「エモーショナル」という言葉が結びつき、究極の走りを実現している気がするのだ。

 現行コルベットにおいて最強は「ZR1」だという声も聞くが、両者に乗った経験から言わせてもらえれば、ドライバーとしてクルマをコントロールする上で楽しいのは、明らかにZ06である。「軽さ」がもたらす動きのダイレクト感が、明らかに上なのである。

 そろそろ次期新型コルベットの詳細が分かる頃だが、こういった世界に誇れるマシンが一体どのような進化を遂げるのか? 一部には3リッター級のスモールFRになるという噂も聞こえるが、果たして? 
 ただ、間違いなく言えることは、現行Z06ですら、すでに世界に誇れる最強マシンであるということだ。

<コルベット主要諸元>
●ノーマル 車重:1520キロ エンジン(LS3):436ps/トルク58.6kg-m
●Z06 車重:1440キロ エンジン(LS7):511ps/トルク64.9kg-m
●ZR1 車重:1530キロ エンジン(LS9):647ps/トルク83.5kg-m

クロスのギアレシオを持つ6MTは、レーシングカー同様のトランスミッションオイルクーラーを装備し、熱によるタレがまったくない。ストロークの短いシフトフィールも良好であり、まるで一回り以上小さいスポーツカーを操っているような人馬一体感を感じることができる。

大馬力に対応する大容量のクラッチを備えているが、踏力自体は最小限の重さで収まっている。国産軽自動車のようには軽くないが、国産スポーティカーを操れる方なら、誰でも慣れるほどだ。

フロント355ミリ、リア340ミリの大型クロスドリルドローターと、フロント6ピストン、リア4ピストンのキャリパーによってサーキット走行も可能なほどの制動力を実現している。個人的にも非常に頼もしいブレーキと感じた。

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