シボレーエルカミーノは1959年に登場したセダンピックアップである。が、この初代はたった二年で終了。そして4年後の1964年に再び復活する。
初代はフルサイズセダン・シボレーインパラをベースにしていたが、二代目はインターミディエイトシャシー・シェベルをベースとし、その後紆余曲折ありながらも、1987年まで存在した息の長いモデルとなった。
で、今回取材した1987年モデルは、エルカミーノの歴史で言えば、五世代目の最終モデル。
この最終世代は1978年から87年まで続くが、ご存知、映画ケビンコスナー主演『ボディガード』の影響もあり、最終年式となる87年型の人気が今でも高い。芸能界では明石家さんま氏も『ボディガード』仕様にしたこの年代のエルカミーノを所有しているのは有名な話。
ちなみに87年型のミントコンディション車両はいまだ500万円以上するというから人気の高さが伺える。というのも、この年代のエルカミーノのみ3速ATではなく4速ATが採用されているから、走りが全然違う。エイブルもだからあえて87年型を積極的に扱っている。
さて、これまで過去何度も取材してきた個人的な経験からすると、エルカミーノの魅力はスタイルだと思っている。
もちろん、走りも魅力的だし、何よりフルサイズピックアップのような鈍重さや過大なロールに悩まされることがないのも魅力だが、エルカミーノでしか味わえないスタイルや雰囲気、さらには乗ることで変化するであろうライフスタイルといった楽しみが、他のアメ車よりも多いと思えるから。
ボクシーなスタイルに湾曲したリアガラスを組み合わせたボディ。取材車は、車高が若干落とされホイールが純正ではないが、それ以外は基本ノーマル状態ということでエルカミーノの魅力を十分に伝えてくれる。
というか『ボディガード』の雰囲気を味わうことができるし、なんなら費用をかけて『ボディガード』仕様に近づけることだって可能だろう。
ちなみに車体はわずかにローダウンされ、カマロIROC用の16インチタイヤが組み合わされるが、これもエルカミーノが現役当時に流行った仕様である。
エルカミーノは、ボディのサビが弱点と言われているが、この車両はしっかり処理されリペイントされているから、見た目における瑕疵はほとんどなく、もちろん完璧な個体ではないし中古車であるからそれなりのヤレはあるのだが、非常に見栄えの良い状態に収まっていると言えるだろう。
しかもペイントされたブルーメタリックがなんともアメリカらしい発色というか雰囲気をもたらし、これはこれでアメリカンな感じが非常に素敵である。
なお、現段階ではペイントのみが終了したということで、それ以外の部分にはまだ手がつけられていないということを最初に断っておく。すなわち、エイブル仕上げ的なものの60%程度しか終わっていない状態。
とはいえ、「まずはシッカリ走ること」を実践するエイブルらしく、走りに関するエンジンや足回り等には手が入り調整されているから、「とりあえず今回はガワは二の次」ということで、現状で試乗させてもらった。
まず足回りはピッチングがよく抑えられており、ゆらゆらふわふわといった感じが一切なく、それでいて硬くて不快ということもない、ちょうどいい感じに驚いた。ロールは若干するが、それは味として捉えられる程度であり、かなりの好感だった。
それ以外では、安定した走りと力強いエンジンパワーに支えたれたコンディションの良さを感じさせる個体であったのだが、途中、しばらくしてからエンジンの燃料噴射システムが変更されていることを思い出した。
そう、この車両はエンジンマネージメントがTBIからGM製TPIインジェクションに変更されている。だから安定感があるのだろうか、ご機嫌なV8サウンドではあったが、この仕様、要するに「サードカマロと同じ」と思えばそれはそれで楽しい。
だからこのエルカミーノは基本的なボディ等のほとんどが当時のエルカミーノのままであるのだが、安定感あるTPIに変更されたことでサードカマロっぽくなっており、そういう意味ではサードを得意としているエイブルならではの得意分野と言っても過言ではないのである。
一方インテリアは、現段階ではほぼ現状のままであり、それでもフロアのカーペットが新品に交換されているから旧車っぽいすえた感じがあまりないのが嬉しい。
とはいえ、現状ダッシュのひび割れ等があるのは事実であり、それらはダッシュカバーにより対策されていくというから、今後の仕上がりに期待である。
ちなみに取材時に使用されていたのはダッシュマット。で、今後ダッシュに手を加える時に使用するのはダッシュカバー。
ダッシュマットはソフトなマットに過ぎないが、ダッシュカバーはハードプラスチックでできており、エイブルではこれまでにもエルカミーノやマリブ等のダッシュリニューアル時に使用し高評価を得ているパーツだけに、違和感のないリフレッシュの仕上がりが期待できるだろう。
また個人的には、ステアリングとオーディオ以外、純正品が残っているというのがいいと思うし、メーターパネルやシートが交換されがちではあるが、そういた純正品を残しつつ、いい塩梅にアレンジしてほしいと思うのである。
個人的にはやっぱり『ボディガード』仕様に近づけるか。それとも荷台にサーフィンを載せたりするサーファー仕様にするか。いずれにせよある程度の純正状態は活かしつつ仕上げたい。
さて試乗である。当時のスペック表で言えば、全長5120ミリ、全幅1826ミリのサイズ感であり、エンジンスペックは5リッターV8で150hpという。が、実際に走ってみれば、大きさは全く感じないし、パワーも非力な感じは全くしない。
逆にトルク感がすごく街中ではかなりキビキビ走るし、とにかくボディ前方の距離感がつかみやすく運転しやすい。近年の自動車全般に触れている身としてはボディの大きさを全く感じないから、日本の道路事情でも難儀することはあまりないだろう。
ただ、個体のせいか、それともエルカミーノ全般かはわからぬが、ウインカーレバーが華奢で、かつレバーを動かした際にウインカーが点灯しているのか否か、音も小さく、それが非常に不安になった。
が、それ以外では街中を走っていて不安になる要素は皆無であり、非常に安心感の高いブレーキの効きもあって、国道246では一気にフルスロットルを試してみたが、何事もなく普通に走り止まっていたから、思わず「この個体当たりだな」とつぶやいてしまった。
もちろん87年型の最終モデルには4速ATが搭載されているから、それも効いての走りやすさだったに違いない。
エイブルの原氏は、「このエルカミーノはまだパリッとした感じではないですが、走りにおいては気持ち良く感じるレベルですし、内外装や機関部分に関してはもちろんこれからも手を加えていく予定です」というから、現状以上の個体になることは間違いない。
とはいえ、古い機械である以上「何かが起こる可能性」は否めないから、所有するにはその部分での覚悟は必要だが、そこに納得できるのであればエルカミーノは「絶版車」ならではの魅力を大いに発すると思うし「人と違うクルマに乗りたい」という欲求を確実に満たしてくれるだろう。
くわえてエイブルは、サードカマロやエルカミーノを昔からずっと扱い続けているだけに、継続は力なりじゃないが整備や故障に関するノウハウも充実しているから、上記のような「エイブル仕上げ」が行われた後であるならば、かなり安心して乗れるはずである。
ちなみに現状でもさすがはエイブル。走りの部分は現段階でも気持ち良くシッカリしているから、試乗することも可能だし魅力の一端を味わうこともできる!
乗れば乗るほど楽しさが伝わってくるエルカミーノ。ベタではあるが、いつの日か『ボディガード』仕様にして乗ってみたい。そんなことを思わせてくれた試乗であった。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES