TEST RIDE

[試乗記]

数限りあるスーパースポーツの極上個体

2017 シボレーコルベット Z06

アメリカンパワーを象徴する歴史に残る1台

FRコルベットをベースにしたスーパースポーツがZ06である。

更新日:2023.08.27

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

出尽くしたアメリカンスーパースポーツに乗るなら

 そろそろ覚悟を決めなくてはいけない。「アメリカンスーパースポーツをいつの日か手に入れたい」と思っているならば、今こそその願いを叶えるべきだ。

 というのも、もろもろの法規制の強化により最新のスーパースポーツを独自輸入することが困難になっているから。くわえて各メーカーのEVモデルへの転換も行われているし、そもそも新規のスーパースポーツはほとんど出ない。

 言い換えれば「(寂しいが)出尽くした」と言っても過言ではない状況である。

 ということで、既存のスーパースポーツといえば、チャレンジャーヘルキャット、マスタングシェルビーGT500、シェルビーGT350、そしてコルベット、ちょっと古くはバイパーなんかが候補車である。

▲2017年型コルベットZ06。走行4000キロ未満のディーラー車。Z07パフォーマンスPKG付き。ボディカラーはセラミックマトリックスグレー。ボディには小傷ひとつない極上個体。

▲Z06とはいえルーフは脱着式。だがそれでもボディ剛性は、屋根を閉じた状態で60%、開けた状態でも20%高まっている。

 ちなみに、そうしたスーパースポーツの賞味期限は、一般的アメ車よりも繊細が故に短い。だから距離がいった車両よりも少ない方がいいに決まっている。個体の数にも限りがあるし。

 だが、今なら走行5000キロ未満の個体を入手することも可能になるから、しかも国内にある個体なら現在の円安為替を気にする必要もないから、検討すべきである。

 で、そんなスーパースポーツの候補車・最右翼の存在と言えるのが、BCDが販売するコルベットZ06である。

 Z06の前にまずC7であるが、「FRのコルベットはC7まで」と開発段階から決められていたらしい。=最後のFRだから最高レベルのFRモデルを作ろうと。

 だからV8OHVエンジンを搭載したFRでトランスアクスルを使用し前後重量配分を適正化させたリーフスプリングを持つC7のパッケージングは、いわゆる歴代コルベットとしての完成形であり、それだけに価値が高い。

 すなわちC7は、FRコルベットの理想形であり、FRモデルにこだわり続けるならばこれ以上ないモデルとなる。

 が、当然そんな思いはアメリカでも強く、人気は維持されており(上昇すらしている)、C7の中古車を新規で輸入することが困難なほどである。

 で、そんなC7のスーパースポーツと言われる存在がZ06である。

▲搭載されるエンジンは、6.2リッターV8 OHVスーパーチャージドエンジン。659ps、最大トルク650lb-ftを発生させる。ピストンは鍛造アルミ製、吸気バルブはチタン製、ヘッドは遠心鋳造法で製造されたアルミ製。

▲ボンネットフードやルーフパネルはカーボン製。フード内部のインシュレーターもご覧の通り非常にクリーンな状態。

▲製造工程における担当者のネームプレートが貼られている。

 Z06は、C7の6.2リッターV8OHVエンジンにスーパーチャージャーを装着し650hp、最大トルク650lb-ftを発生させる。

 ボディは、フロントリアともにワイドフェンダー化し、ノーマルクーペ比でフロントフェンダーが56ミリ、リアが80ミリワイドになり、前後サイドにエアロが装備され、ブレーキはブレンボ、タイヤはミシュラン・パイロットスポーツの専用品が装備される。

 それでいて車重は約1560kgと、異例の軽量ボディである。余談だが、チャレンジャーヘルキャットは車重2トンを超えるから、パワー差を差し引いてもZ06の凄さがわかるはずだ。

 しかもOHVエンジンならではの低重心とドライサンプ採用によるフロントタイヤの反応の俊敏さと回頭性の良さはヘルキャットでは味わえない。

 Z06は、デビュー当時は7速MTのみであったが、一年遅れの2016年から8速ATも選択可能になっている。ちなみにZ06ATモデルの0-60マイル加速はなんと2.95秒。7速MTで3.2秒というから、ATの速さを改めて認識するのである。

▲フロント19、リア20インチホイールにミシュラン専用タイヤを装備する。

▲ブレーキは、ブレンボにカーボンセラミックブレーキローターの組み合わせ。

▲3ピース構造のリアスポイラー。中央部分はボルト固定式で、高さの調整が可能となっている。

 さて、取材個体であるが、2017年型Z06の走行3500キロ、8速ATモデルのディーラー車である。ボディカラーはガンメタ的なセラミックマトリックスグレーで、実車を見ればわかるが恐ろしく状態が良い。

 スエードシートに若干のシワがあるが、それ以外で気になる箇所は皆無であり、ボディも非常にクリーン。

 BCDは、程度良好な個体をアメリカ本国から直輸入することで有名であり、その扱い車両もチャレンジャー、マスタング、コルベット、カマロといったハイパフォーマンスカーを中心とした品揃えをしているから、当然コルベットZ06もその視野には入っている。

 そんな中でのディーラー車ベースの中古車、しかも走行4000キロにも満たないレア個体である。

 ちなみにBCDの関連企業には、多くのGM正規ディーラーが存在しており、だからこその極上モデルとも言えるのである。

▲まさしくコックピットと呼ぶに相応しい質感とタイトさを兼ね備えているインテリア。

▲トランスミッションは8速ATであり、シフトノブの動作感が硬質で質感の高さを感じる。

▲個体はカーボンインテリアになっている。

 ここ15年前後のアメ車史を俯瞰すると、「2010年あたりから2022年まで」と「2023年から」とで大きな変化が見て取れる。

 前者はアメリカンパワーの時代と言え、スポーツカー&マッスルカーにおいて魅力的なモデルが多数生まれ、とにかくハイパワーなモデルの存在が特徴的である。

 一方、後者は新時代へ向けての過渡期的時代であり、EVへの転換が如実に行なわれている。

 で、今回紹介しているコルベットC7Z06は、まさにアメリカンパワーを象徴するモデルであり、確実に歴史に残る1台である。

 そうした貴重なモデルではあるがゆえにメンテナンス等の整備にも多少なりとも気を使わなくてはならないだろうが、BCDではGM車に関しても最新設備を持って対応可能であり、繰り返すが系列会社にGM正規ディーラーがあるだけに、情報共有によるピンポイントな整備が可能である。

 あのシェルビーGT350やチャレンジャーヘルキャットといったスーパースポーツを日本で一番売っている実績もあるだけに、精緻な極みといえるZ06においても当然ながら完璧な状態を維持させてくれるのである。

▲情報量の多いスポーツカーらしさ溢れるメーター類。

▲ノーマル純正仕様では世界最高レベルのシートであり、ホールド性を示す。

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