更新日:2011.10.18
文/編集部 写真/編集部
日米英伊クーペ対決、結論から言うと、それぞれのお国柄がそのクルマの個性として如実に現れていて、非常に楽しい作業になった。巷でよく言われるクルマを買うことは、そのクルマの性能と共にその国の文化をも受け入れること、というのは正しい表現であり、今回は身をもってそれを体験できた。
スカイラインGT-Rは、日本の技術の粋を集めた走るためだけに生まれたクルマとして、まるで戦闘機のような迫力と機能美を感じさせ、逆にトヨタスープラは、走り、性能、スタイリング、どちらにも中途半端な印象が否めない日本の象徴のようなクルマであった(確かに速いが)。
ジャガーXKは、内外装が超豪華、品格があり、さらに各操作系がスムーズ極まりない。紳士の乗るクルマとして相応しい存在。マセラティは、美しいスタイリングにシュンシュン回る気持ちよいエンジンが、伊達男を気取るイタリアンにはよく似合う。で、カマロは?
カマロは、ちょっとばかりカッコいいスタイリングに、力強いエンジンを積んだ何もかもが豪快な存在。細かいことなどまったく気にせず、ゴーイングマイウエイを貫くその姿勢は、近年の傲慢な米国を象徴しているようにも感じる。
この企画は、価格を一切無視し、進行しているが、実際に価格を考慮に入れると、カマロの存在感、お買い得感が断然際立ってくるのだ!
●Toyota Supra
確かに走れば速いのだが際立った「何か」がない
基本的な性能数値はGT-Rに匹敵するが(エンジンは直6DOHCツインターボ、280ps、トルク44.0kg-mを発生)、迫力というか、存在感というか、何か物足りないトヨタスープラ。実際、走らせれば速いのだが、そこに気迫が感じられず、スタイリングにおいてもクルマから発するオーラのようなものがまったく感じられない。この企画においては評価がカマロをわずかに下回り最下位となったわけだが、それは突出した個性の不足に起因する。乱暴な言い方ではあるが、スープラにあって、カマロにないのは、トヨタ車の安心感だけ?
●Nissan Skyline GT-R
「走りの性能」一点勝負、レベルの高さは段違い
決してカッコいい存在とは言えないが、それでもその秘めたる性能がスタイリングに反映され、圧倒的な威圧感を放っているスカイラインGT-R。280ps、トルク40.0kg-mを発生させる直6DOHCツインターボは、まるでレーシングカーのような咆哮を発し、1560kgのボディを軽々走らせる。ボディの剛性感は鬼のように高く、ブレーキの安心感もひときわ高い。カマロと比較すると「走りの性能」という点において、圧倒的な差をつけている。ただし、一般走行時の乗り心地は非常に固く、お気楽ドライブにはカマロの方が適している。
●Jaguar XK8
アメ車っぽい雰囲気を感じる英国製高級クーペ
スタイリング、エンジン、内装各種操作系、すべてにおいて洗練され、落ち着いた雰囲気を醸し出しているジャガーXK8。今回登場したライバルの中で、唯一カマロの延長線上にあるクルマとして、どこか似た雰囲気を感じるクルマであった。ジャガーXK8はカマロ同様、大パワーFR車(エンジンはV8DOHC、304ps、トルク42.9kg-mを発生させる)。車体の剛性感は意外と高く、ブレーキにも違和感はない。しかし、路面からのショックをドスンッとボディに伝え、高級車らしからぬ振る舞いを見せることもある。カマロがずーっと高級になり落ち着いた雰囲気になると、このようなクルマになるのではないか?
●Maserati Coupe
同じクーペでもカマロとは対極をなすクルマ
曲面を多用した美しいスタイリングにフェラーリの技術を導入したV8DOHCエンジンを積むマセラティクーペ。このエンジンは390ps、トルク46.0kg-mを発生させ、官能的という表現がまさに似合う音色をとどろかせながら一気呵成に加速していく。ステアリングの反応は適度なクイックさを保ち、ブレーキも踏めばガツンと速度を落とすタイプ。昔のイタリア車のような性能と引き替えにトラブルを覚悟しなければならない、という雰囲気はまったくなく、買うことさえできれば、誰もが気楽に楽しめる。品質からしてカマロとは対極をなすクルマ。
●Chevrolet Camaro
比較しても遜色ない魅力&存在価値を発見
ライバル達と比較したカマロの魅力は、そこそこカッコいいスタイリングと低中速域のトルク感を安価に楽しむ、ということになる。エンジンはV8OHV、288ps、トルク44.6kg-mを発生させる。これでは不満、という読者&オーナーもたくさんいるかとは思うが、個人的にはカマロって意外とスゴかった、と逆に驚きを隠せない。事実アメ車の中には、アメ車というくくりの中だからこそ評価されている、というクルマが少なくない。しかし、カマロは他国のトップ級モデルと比較してもそれなりの魅力があり、存在価値があることが分かった。これは今さらながらの大きな発見であった。
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